日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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62 巻, 7 号
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  • 吉田 徹, 馬場 祐康, 下沖 収, 石川 徹, 阿部 正, 寺島 雅典, 斎藤 和好, 菅井 有, 中村 眞一
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1607-1612
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌75例を対象に術中腹腔洗浄液中のCEAおよびCA19-9(以下p-CEA, p-CA19-9)を測定し,その臨床的意義について検討した.腹腔洗浄細胞診(以下cy)は感度69.2%, 特異度90.3%であった. p-CEA, p-CA19-9はともにcy陽性症例で高値となる傾向はなかったが,両マーカーともに漿膜浸潤陽性症例で有意に陽性率が高かった.腹膜播種症例,リンパ節転移陽性症例でp-CEA上昇例が有意に多く, p-CA19-9上昇例は腹膜播種症例で有意に多かった. p-CEA,および術前血清CEAおよびCA19-9高値群は低値群に比べ,有意に生存率が高かった.
    p-CEAの測定は術中に簡便かつ短時間に行うことができ,再現性が高く,cyとともに再発の予測に有用な情報である.
  • 山口 由美, 蘆田 啓吾, 柴田 俊輔, 石黒 稔, 万木 英一, 西土井 英昭, 工藤 浩史, 村上 敏
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1613-1618
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    治癒切除不能のStage IV胃癌に対して,胃切除術を行った70症例を対象に,予後,術後在院期間からみた手術の妥当性について検討した.試験開腹,あるいはバイパス手術に終わった12症例と生存率を比較したところ,そのMSTは252日と119日で,胃切除例で有意に延長していた(p<0.01).非治癒切除因子が1因子の症例(n=51)のMSTは367日であり,2因子の症例 (n=19) の141日と比較して有意に長かった(P<0.01).1因子のみで予後を比較すると, P因子のMSTがN因子, H因子に比較して短かったが,いずれも非切除より生存期間の延長を認めた.非治癒切除因子が2因子ある場合は,胃切除による生存期間の延長を認めなかった(p=0.53).非治癒切除因子が2因子ある場合,在院死亡率は47.4%, 在院率は73.6%と高く,殊にP因子を含む症例で高かった.従って,非治癒切除因子が2因子ある場合は原則的に胃切除の適応はないものと考えられた.
  • 弥政 晋輔, 森岡 淳, 水野 敬輔, 岩瀬 祐司, 千田 嘉毅, 家城 真理, 木村 賢哉, 山口 淳平, 松田 眞佐男
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1619-1623
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下総胆管切開切石術の利点,欠点を明らかにし,今後の標準術式となり得るかを検討した.(方法) 1995年1月から2000年3月までに当科で手術治療を受けた総胆管結石症例97例のうち開腹症例43例と,腹腔鏡症例54例から開腹移行例,経胆嚢管切石例を除く44例の間で比較検討を行った.(結果)手術時間は腹腔鏡症例で有意に長かった(196分vs. 259分, P<0.005).経口摂取までの時間は腹腔鏡症例で有意に短かった(63時間vs. 30時間, P<0.001).術後鎮痛剤使用回数は腹腔鏡症例で有意に少なく,術後入院日数も短かった(21.2日vs. 12.4日, P<0.001).合併症発生率は腹腔鏡症例で有意に高かった(2.3% vs. 25%, P<0.Ol).(結語)腹腔鏡手術は総胆管結石症に対する標準術式となり得るが,今後の課題は技術向上に伴う手術時間の短縮と,合併症発生率の低下である.
  • 井上 雅文, 小野田 尚佳, 石川 哲郎, 小川 佳成, 池田 克実, 澤田 鉄二, 平川 弘聖
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1624-1628
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    バセドウ病と甲状腺癌の合併は,数%程度とされ比較的稀であるが,病因,病態に関する考察は少ない.われわれは両親に被曝歴があり,バセドウ病と口唇裂の家族集積を認めた甲状腺乳頭癌合併バセドウ病の興味深い1例を経験したので報告する.症例は34歳,女性.両親が被曝し,父がバセドウ病, 3人の妹にバセドウ病,胆道閉鎖症,口唇裂を認めた.他医にてバセドウ病と診断,内服加療中に乳頭癌を認め当科に紹介された.甲状腺亜全摘術を施行,組織学的には硬化型乳頭癌を合併したバセドウ病であった.バセドウ病に合併した甲状腺癌は,性比は一般の甲状腺癌と差はなく,やや若年者に多く,経過観察中に発見される硬化型の微小癌が多いことが特徴的で,遺伝,家族歴,内服や照射と,発癌との関連は明らかでないと報告されており,本例は,その発癌機構を考える上でも興味深いと思われ報告した.
  • 亀水 忠, 笠原 善郎, 三井 毅, 浅田 康行, 飯田 善郎, 三浦 将司
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1629-1633
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,急速増大発育を示した乳腺間質肉腫の1例を経験したので報告する.症例は46歳,女性. 2000年10月17日,左乳房腫瘤を認め,当科を受診した.左乳房C領域に4×4cmの表面平滑,境界明瞭で可動性良好な固い腫瘤を触知した.触診,超音波,マンモグラフィー検査より悪性葉状嚢胞肉腫を疑い,手術を予定した. 11月8日の入院時には腫瘍は6×6cmに増大していた.手術はquadrantectomyを施行した.病理組織学的に,間質肉腫と診断した.術後経過は良好で,患者は,第9病日に退院した.現在補助療法は行わず,外来にて厳重に経過観察中であるが,術後4カ月たった現在再発は認めていない.
    乳腺間質肉腫は非常に稀な疾患であり,本症の診断,治療に関して若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 平井 伸司, 濱中 喜晴, 三井 法真, 熊谷 元, 小林 平
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1634-1637
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性.検診で胸部X線写真で異常陰影を指摘され当院受診した.胸部CT検査, MRI検査で巨大な心膜嚢腫を疑われた.胸腔鏡下に嚢胞内貯留液を吸引することで容易に巨大嚢腫を切除できた.嚢腫は心膜と連結していたが交通はなく,病理組織学的診断は心膜嚢腫であった.心膜嚢腫は比較的稀な疾患であるが,本症例の如く嚢胞液中の腫瘍マーカー (CA19-9, CA125) が異常高値を示した巨大な心膜嚢腫を胸腔鏡下に切除した症例の報告はない.心膜嚢腫は悪性化の報告もあり,積極的な外科的切除が望ましいと考えているが,胸腔鏡下手術は術中の病理学的検査で確定診断が得られ,嚢腫内容液の吸引することで容易に心膜から剥離切除でき理想的な治療法と考える.
  • 牧原 重喜, 小谷 一敏, 梅森 君樹
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1638-1641
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    慢性膿胸に合併した扁平上皮癌の1例を経験したので報告する.
    症例は61歳男性.主訴は右前側胸壁の瘻孔.平成元年,右結核性膿胸に対し胸郭成形術と大胸筋充填術をうけたが平成6年3月右前側胸壁に瘻孔形成を認め他院より紹介となった.胸腔内掻爬術および肋間筋充填術を施行したが胸水が再貯留.その後右胸腔内に腫瘍性病変が出現,急速に増大し生検にて扁平上皮癌が証明された.
    慢性膿胸の診療に際しては,悪性腫瘍の合併を念頭におき早期発見により予後の改善に努めるべきと考える.
  • 金子 唯, 角 泰廣, 伊藤 英夫, 澤田 傑, 吉田 直優, 松山 隆生, 深澤 麻希, 鈴木 実, 板倉 由佳, 松嶋 麻子, 尾関 豊
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1642-1647
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor (以下GIST)としては稀な幽門輪に発生し,部位診断に苦慮した症例を経験したので報告する.症例は71歳,女性.貧血の精査で腹部腫瘤を指摘された.超音波, CT, MRIでは可動性を有する6cm大の胃内病変が疑われた.しかし,上部消化管内視鏡およびX線検査では十二指腸球部の粘膜下病変が考えられた.幽門近傍の粘膜下腫瘍と診断し手術を施行した.幽門輪を中心に鵞卵大の腫瘍を認め,胃前底部および十二指腸球部切除術を施行した.切除標本の検索で幽門輪に一致して7.5×5.5cm大の充実性腫瘍を認め,幽門括約筋から発生したものと考えられた.病理組織学的にCD34とc-kitが陽性, actin-SMとS-100が陰性の紡錘形細胞からなり,狭義のGISTと診断した.術後経過は良好で第24病日に軽快退院した.幽門輪発生のGISTは,文献検索上,他に報告例を認めず,稀な症例と考えられた.
  • 中村 育夫, 村林 紘二, 赤坂 義和, 楠田 司, 高橋 幸二, 小川 朋子, 臼井 正信, 堀 智英, 橋本 康志
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1648-1653
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    多発潰瘍を認め診断に難渋した好酸球性胃腸炎の1例を経験したので報告する.症例は72歳男性.主訴は嚥下困難.胃透視で幽門輪近傍は狭窄し,胃内視鏡で前庭部小蛮側が短縮し前庭部から胃角部にかけて2型胃癌様病変を認めた.生検の結果,悪性所見は認めなかった. CTでは胃角部から胃前庭部にかけて造影される比較的平滑な壁肥厚を認めた.なお,患者は, 1カ月に5kgの体重減少を認めた.以上より,幽門狭窄を伴う悪性リンパ腫を疑い幽門側胃切除を施行した.摘出標本では胃角部と前庭部小弯に潰瘍を認め,病理組織検査では粘膜型の好酸球性胃腸炎と診断された.
  • 岸川 博隆, 川村 弘之, 葛島 達也, 小西 滋, 高嶋 伸宏
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1654-1660
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸球部粘膜下腫瘤は,症例が稀なこと,病変が多彩なこと,粘膜下に位置するため診断が困難なことなどの理由によりその病態は今だ充分解明されておらず,適切な手術術式に関しても統一した見解は得られていない.われわれは同部の粘膜下腫瘤を5例経験した.その内訳はブルンネル腺腫2例,平滑筋腫1例,異所性胃粘膜1例,過誤腫1例であったが,平滑筋腫を除けば全て非腫瘍性病変であり,球部粘膜下腫瘤の大半は非腫瘍性病変であると言う諸家の報告と一致した.非腫瘍性病変の特徴は,そのほとんどが粘膜下層に局在していることであり,腫瘤を切除する場合には,核出術に類した切除術で充分目的は達成し得ると考えられる.以上の理由から,腹部小切開にて開腹し,十二指腸前壁に小切開を加え,腫瘤底部(頸部)に自動吻合器をかけることにより腫瘤を切除すると言う低侵襲手術を提案した.
  • 田中 玲人, 千木良 晴ひこ, 加藤 岳人, 柴田 佳久, 尾上 重巳
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1661-1664
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は39歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に来院.腹部立位X線検査にてニボーを認めたため腸閉塞の診断で入院となった.腹部CTにて腸管が重なる層状構造を認め小腸腸重積を疑い緊急手術を施行した.トライツ靱帯より約150cmの空腸が重積しており小腸を約1m切除した.切除標本では空腸に33×22mm大の隆起性病変を認めた出血を伴いほとんど壊死状となっていた.組織所見は腺管絨毛腺腫であった.術後経過は良好であり,術後2週間後に無事退院した.成人腸重積は比較的稀な疾患であるが先進部に器質的疾患を有するものが多く,迅速な検査および処置を必要とされると思われる.
  • 河本 和幸, 吉澤 淳, 牧野 智和, 河野 幸裕, 小笠原 敬三
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1665-1667
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性.急激な腹痛を主訴に近医を受診し,急性腹症の診断にて本院紹介となった.診察時腹部は板状硬で筋性防御を認めた.腹部CT検査では腹水,腹腔内遊離ガスとともに右上腹部に7cm大の腫瘤像を認めたため,横行結腸癌による穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術を施行した.術中所見よりトライツ靱帯から30cm肛門側の空腸腫瘍穿孔と判明した.腫瘍近傍の腸間膜に3cm大のリンパ節転移を認め,リンパ節を含めた空腸部分切除術を行った. 7×6cmのいわゆる3型の腫瘍であり,病理組織学的には腺管構造を有する中分化型腺癌であった.小腸原発の腺癌は稀な疾患であり,その解剖学的特徴から早期の発見,診断は困難である.今回われわれは穿孔性腹膜炎で緊急手術を施行した原発性空腸癌の1例を経験したので報告する.
  • 濱中 一敏, 袖山 治嗣, 高橋 耕平, 西尾 秋人, 中田 伸司, 小沼 博
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1668-1671
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸重積の診断で手術を行った回盲部アニサキス症の1例を経験したので報告する.患者は47歳男性. 1999年12月10日,生の鮭,いくらなどを摂食し, 12月17日腹部の激痛にて当科に入院した.理学所見で腹部に著明な筋性防御を認めた.腹部CT, 注腸造影で腸重積症が疑われ,高圧注腸整復にて改善しなかったため, 12月17日緊急手術を施行した.開腹すると,回盲部に腫瘤を触知したため回盲部腫瘤による腸重積症と診断し,回盲部切除術を施行した.肉眼的所見では回盲弁が肥厚し, 2cm大の粘膜下腫瘍を認め,盲腸壁の硬化を認めた.病理組織学的検索では粘膜下にアニサキス虫体を認め,好酸球を中心に有する小異物肉芽腫を認めた.回盲部にアニサキスが迷入して好酸球性肉芽腫を形成し,この部が先進部となり腸重積症を引き起こしたものと考えられた.
  • 蛭川 浩史, 遠藤 和彦, 渡辺 直純, 堀川 直樹, 畠山 勝義
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1672-1676
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は13歳男性.糞石を有する穿孔性虫垂炎にて虫垂切除術を施行したが切除虫垂内に糞石を認めず,腹腔内を検索したが発見できなかった.第7病日に膀胱の頭側に腹腔内膿瘍を認めたため,経皮的に穿刺しドレーンを留置した.膿瘍は保存的に軽快し第24病日に退院した.しかし4日後に膀胱上部の膿瘍が再発したため切開排膿しドレーンを留置した.外来での連日の洗浄により膿瘍は瘻孔化し,第99病日瘻孔切除術を施行した.瘻孔先端部は小腸に強固に癒着しており小腸部分切除を要した.瘻孔内に糞石を認めた.再手術後第10病日に軽快退院し現在まで再発を認めていない.遺残糞石による腹腔内膿瘍症例の報告は,欧米の文献とあわせても,自験例を含め13例と稀である.糞石が落下した場合は,腹腔内を徹底的に検索すべきであるが,腹腔内膿瘍を発症した場合は糞石を取り除くことが重要と考えられた.
  • 伊澤 光, 藤本 高義, 福地 成晃, 吉田 哲也, 戎井 力, 先田 功
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1677-1681
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性虫垂癌は,大腸癌の0.46~0.6%と比較的稀な疾患であり,その卵巣転移例の報告は本邦ではほとんどみられない.今回,卵巣転移を契機に発見した虫垂癌の1例を経験したので報告する.症例は46歳の女性,下腹部腫瘤を主訴として婦人科を受診した.腹部超音波検査および腹部MRI検査より卵巣腫瘍と診断し,開腹術を施行した.術中,左卵巣腫瘍の他,虫垂腫瘤を認め,大網,腹膜に多数の結節性病変を認めた.迅速病理検査にて虫垂癌からの卵巣転移と診断した. D2郭清を伴う結腸右半切除術,広汎子宮全摘術,両側付属器切除術,大網切除術を施行し腹膜結節も可及的に切除した.術後の病理学的検索では,左卵巣転移,腹膜播種を伴う虫垂原発の粘液癌と診断された.
    卵巣転移の原発巣として非常に稀ではあるが虫垂癌を想定した診断加療が必要である.
  • 川尻 成美, 前田 清, 西口 幸雄, 和田 光二, 若狭 研一, 平川 弘聖
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1682-1685
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは上行結腸放線菌症の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え,報告する.
    症例は61歳,男性.平成10年右下腹痛あり,近医受診.精査にて大腸ポリープが認められ,内視鏡下polypectomyを施行された.平成11年11月の大腸内視鏡にて上行結腸の腫瘤性病変を指摘され,手術目的にて当科紹介された.注腸造影,大腸内視鏡検査にて上行結腸に腫瘍径約4cmの腫瘤性病変が認められ,腹腔鏡補助下右結腸切除術を施行された.切除標本の病理組織学的検索にて炎症性細胞浸潤および膿瘍形成あり,放線菌菌塊が認められたため,大腸放線菌症と診断された.術後経過は良好で,術後9カ月を経過した現在,再発の兆候なく,外来通院にて経過観察している.
  • 尾身 葉子, 上 奈津子, 上野 貴史, 川端 英孝, 北 嘉昭, 田中 弦, 平田 勝, 田中 潔
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1686-1690
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸憩室炎による皮膚瘻は,大部分が大腸手術後に出現する.われわれは,大腸手術の既往のない憩室炎によるS状結腸皮膚瘻を経験したので報告する.症例は67歳女性.左鼠径部の発赤腫脹を主訴に来院した.膿瘍の所見があったので,同部位を切開したところ,便の排出が認められ,大腸皮膚瘻と診断し,入院となった.瘻孔造影,腹部CTより,皮膚開口部とS状結腸との交通が認められ, S状結腸皮膚瘻と診断した.手術の既往はなかった. S状結腸部分切除,瘻孔切除を施行した.切除標本では, S状結腸に複数の憩室が認められ,病理組織学的検査からも憩室炎にもとつくS状結腸皮膚瘻と診断された.術後10カ月が経過した現在,瘻孔は治癒し,再発は認められていない.
  • 打波 大, 森岡 浩一, 佐々木 正人, 堀内 哲也, 千葉 幸夫, 田中 國義
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1691-1695
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    壊死型虚血性大腸炎は稀な疾患であり予後不良であることが多い.今回われわれは肺癌手術翌日に発症した壊死型虚血性大腸炎の1例を経験した.このような症例は極めて稀と思われるためここに報告する.
    症例は70歳男性.肺癌 (stage I A) のため左上葉切除術を施行された.翌日より腹痛が出現し次第に増強した.緊急大腸内視鏡検査にて虚血性大腸炎と診断したが,腹膜刺激症状を認めなかったため保存的治療を開始した.しかし,次第に腹膜刺激症状が出現したため発症12時間後に緊急手術を行った.腹腔鏡下に回盲部付近からS状結腸まで広範囲な色調変化が見られ,特に肝彎曲部に全層性のの壊死,白苔の付着が観察された.開腹下に大腸亜全摘術を施行し,回腸人工肛門を造設した.術後は厳重な呼吸循環管理を必要としたが120病日に退院する事ができた.動脈硬化,術前の浣腸,周術期のストレス等が発症に関与した事が推察された.
  • 小川 匡市, 池内 健二, 武山 浩, 三澤 健之, 佐藤 修二, 黒沢 弘二, 穴沢 貞夫, 山崎 洋次
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1696-1700
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    子宮頸癌術後放射線治療の後17年を経過し発症したgranulocyte colony-stimulatingfactor (G-CSF)産生性直腸平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.症例は59歳女性で, 42歳時に子宮頸癌に対する子宮全摘,付属器全摘術+術後放射線治療を施行された. 51歳時より腸閉塞症状出現し,以後8年にわたり腸閉塞頻発し,保存的療法が施行された. 59歳時,直腸膀胱瘻にて入院,画像検査にて骨盤内腫瘍と診断され,横行結腸人工肛門造設術施行後,小腸部分切除+骨盤内腫瘍部分切除,ドレナージ術を施行された.術後,一時的に経口摂取可能となるも多発肝転移,敗血症のため死亡した(術後3カ月).剖検にて腫瘍の原発は直腸と診断された.本症例は放射線治療後10数年を経て発症した極めて稀かつ予後不良な腫瘍であり,放射線治療後の厳重なフォローアップとQOLに即した適切な手術治療が必要であろう.
  • 森脇 義弘, 伊達 康一郎, 長谷川 聡, 内田 敬二, 山本 俊郎, 杉山 貢
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1701-1705
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    キックスケート(車輪付きデッキ,シャフト,ハンドルバーから構成される遊戯具)による肝損傷で病院前心肺停止状態(CPA-OA)となり救命しえなかった症例を経験した.症例は, 9歳,男児,同遊戯具で走行中転倒しハンドルバーで右側胸部を強打.救急隊現場到着時,不穏状態で呼名に反応せず,血圧測定不能,搬送途中呼吸状態,意識レベル悪化,受傷後約30分で当センター到着, CPA-OAであった.腹部は軽度膨隆,右肋弓に6mmの圧挫痕を認めた.急速輸液,開胸心臓マッサージにより蘇生に成功した.肝破裂と腹腔内出血の増加,血液凝固異常,著しいアシドーシスを認めた.胸部下行大動脈遮断し,救急通報後78分,搬送後46分で緊急手術を施行した.肝右葉の深在性の複雑な破裂損傷に対しperihepatic packing,右肝動脈,門脈右枝結紮術を施行,集中治療室へ入室したが受傷後約15時間で死亡した.
  • 江藤 高陽, 石崎 康代, 高橋 信, 住元 了, 先本 秀人, 吉満 政義, 沖山 二郎, 倉吉 学, 山木 実
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1706-1710
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    III b型肝損傷を主とする多発交通外傷の5歳男児の1例を経験した.われわれはこれまでIII b型肝損傷に対し肝切除術を主に行い, 7例中6例を救命した.本例は5歳の小児であり,損傷肝部の形態もIII b型にしては比較的保たれていたため,肝の温存と手術時間短縮を目的に肝縫合術を選択した.しかし,術後損傷部の肝仮性動脈瘤から腹腔内へ出血をきたし, transcatheter arterial embolization (TAE)にて止血し救命できた.肝縫合術は損傷肝の温存や手術時間の短縮になるが,遺残膿瘍や後出血を起こすことがあり慎重な手術操作が必要である.小児肝外傷部からの出血に対するTAEの報告は,本例のような術後の肝仮性大動脈瘤破裂からの出血も含めて極めて稀である.しかし本例に示す如く,循環動態が比較的安定していれば,小児の肝仮性動脈瘤破裂に対してTAEは極めて有効な止血手段と考えられる.
  • 小林 弘信, 山崎 圭介, 吉本 勝博, 江嵐 充治, 松木 伸夫
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1711-1716
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.上腹部不快感を主訴に当科受診し精査となった.腹部US, CT, MRI, ERCPおよび血管造影検査にて十二指腸乳頭部に10mm大の腫瘤潰瘍型癌腫と肝S5領域に約2cmの境界明瞭なmassを認めた. Massに関しては転移も否定しえず,膵頭十二指腸切除術兼肝S5部分切除術を施行した.病理組織学的検査では乳頭部癌および肝inflammatory pseudotumorと診断された.
  • 石塚 直樹, 高柳 泰宏, 小松 永二, 高崎 健, 松本 俊治
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1717-1720
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腎癌は転移しやすい癌であり,しかも10年以上の年月を経て転移巣が出現するなど,長期経過観察を要する疾患である.肝転移をきたした場合,ほとんどが多発で外科的切除は不能であるが,腎摘後11年を経て単発の肝転移をきたした症例に対し,肝切除術を施行し,術後4年間無再発生存をえた.病理組織学上も原発巣と同じ乳頭状腎細胞癌と診断された.乳頭状腎細胞癌は非乳頭状腎細胞癌に比べ予後良好な疾患であり,肝転移巣に対しても積極的な切除が有効と考えられた.
  • 坂本 快郎, 稲吉 厚, 西田 英史, 村本 一浩, 中村 匡彦, 沖野 哲也, 有田 哲正, 八木 泰志, 蔵野 良一
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1721-1725
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は, 61歳男性.全身倦怠感,発熱,体重減少を主訴に紹介医を受診.腹部CTにて肝左外側区域を中心に腫瘤像を認めたため,平成10年10月26日精査加療目的に当センター入院となった.腹部CTおよび腹部超音波検査にて肝左外側区域に長径約10cmの肝外に突出する腫瘍を認めた.また, 1番, 8番リンパ節の腫脹も認めた.腹部血管造影検査において,肝左外側区域の腫瘍は濃染像や肝動脈の狭窄は認めなかったが,門脈左枝の閉塞を認めた.以上の所見より胆管細胞癌を疑い,平成10年11月4日,肝左葉切除術を施行した.術後,病理診断にて肉腫様変化を伴った低分化肝細胞癌と診断された.
    肉腫様変化を伴った肝細胞癌切除例は比較的稀であり貴重な症例であるので,若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 葦沢 龍人, 青木 達哉, 中村 龍治, 室橋 隆, 山本 啓一郎, 小柳 〓久
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1726-1729
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術約5年後に,遺残胆嚢管結腸瘻をきたした症例を経験したので報告する.症例は76歳女性,主訴は下痢.平成6年10月胆石症にて腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行された.平成11年5月頃より頻回の下痢症状が出現し,同年8月精査目的にて当院内科に入院となった.注腸検査にて横行結腸肝彎曲部より瘻孔を経て胆道系が造影され,一方ERCにて遺残胆嚢管より瘻孔を経て横行結腸が描出された. ESTにより総胆管結石を摘出後,開腹下に遺残胆嚢管結腸瘻を切除し術後下痢症状は全く消失した.術前の下痢症状は,本来回腸末端までに大部分が吸収される胆汁酸が,瘻孔を経由して横行結腸に流入したため呈したものと考えられる.本症例の成因は,胆摘後遺残胆嚢管断端が横行結腸と癒着をきたし,その後数年にわたり胆道感染および総胆管結石の形成などに伴い,遺残胆嚢管および癒着結腸組織の壊死・穿孔によるものと思われる.
  • 大野 敬祐, 向谷 充宏, 矢嶋 知己, 本間 敏男, 平田 公一
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1730-1734
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術後胆管良性狭窄による閉塞性黄疸に対しexpandable metallic stent (EMS) 留置術を施行した1例を経験したので報告する.
    症例は53歳,女性.胆石症の診断にて他院にて腹腔鏡下胆嚢摘出術施行.高度の胆嚢炎による癒着を背景としていたとのことで術中総胆管を損傷し,開腹へ移行し胆嚢摘出,総胆管の端々吻合を行った.術後23病日に退院したが,黄疸を生じたため退院後9日目に加療目的に当院へ転科入院となった.
    経皮経肝的胆道ドレナージ (PTCD) 術を行い,その後5回にわたるバルーン拡張術を施行した.なお胆管造影にて乳頭括約筋の機能に異常はないと判断した.バルーンによる胆管拡張術のみでは狭窄部位の開存程度が不十分と判断されたためEMS留置を施行した.留置後CT内視鏡にてステントに,再狭窄など異常所見のないことを確認し退院となった.
    現在,症状なく外来にて経過観察中である.
  • 藤原 俊哉, 大野 靖彦, 佐々木 章公, 須崎 紀一, 松尾 嘉禮
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1735-1740
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは術後胆管狭窄により敗血症をきたした症例にexpandablemetallicstent(EMS)を留置し有効であったと考えられたので報告する.症例は70歳男性.胆管内発育型胆管細胞癌にて Hr2(M, L),右肝管空腸吻合施行.外来通院中, 38°C台の波状熱を繰り返し,胆管炎として,入院,抗生剤の点滴で緩解することが数回あった.術後1年目,発熱,腹水,黄疸を認め,再度入院.腹部超音波, CT検査にて肝内胆管拡張を認めた.肝生検ではspotnecrosisを認め,胆汁うっ滞性肝炎と診断した.肝炎治療を続けていたが,急激な血圧低下,尿量減少, DIC徴候を呈し,肝不全状態に陥った. GI療法,抗DIC療法などで改善をみたが,肝内胆管拡張,ビリルビン高値は持続するため,右肝管空腸吻合狭窄の診断でPTBD施行.黄疸は著明に改善され, 2度のバルーン拡張術の後, EMSを挿入した.狭窄は解除され,現在肝炎治療を継続している.術後胆管狭窄は放置すれば,胆汁性肝硬変や敗血症などの重篤な合併症をおこすことがあり,適切な治療が必要である.
  • 清水 健, 稲葉 征四郎, 小山 拡史, 荻野 敦弘, 中田 雅支, 上田 泰章
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1741-1744
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    主膵管の断裂を伴うIIIa型膵損傷に対しLetton&Wilson法による膵温存再建術を経験した.
    症例は30歳女性.乗用車運転中の交通事故でハンドルにより腹部打撲,48時間後に当科転院となった.来院時腹部CTで膵実質の断裂をみとめ緊急手術となった.開腹時,膵は門脈左縁で主膵管を含め完全に断裂しており(膵損傷IIIa型),膵頭側は主膵管結紮後縫合,膵体尾部側は主膵管を同定できなかったので膵空腸吻合(Letton&Wilson法)を施行した.術後,膵空腸吻合部に嚢胞形成をみとめ経皮的ドレナージを必要としたが,退院前の検査で膵内外分泌機能とも異常をみとめなかった.
    膵損傷に対しては種々の術式があるが,術後膵機能の維持という観点から状況が許されるなら可及的に膵温存を図るべきである.
  • 石田 誠, 片山 寛次, 廣瀬 和郎, 山口 明夫, 今村 好章, 嶋田 貞博
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1745-1749
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは超音波ドプラー法にて膵内分泌腫瘍と診断しえた膵ソマトスタチノーマの1例を経験したので報告する.症例は69歳女性で,上腹部不快感を主訴に来院した.超音波検査にて膵体部に境界明瞭な低エコー像を認め,ドプラー法にて腫瘤内にびまん性に豊富な血流シグナルと,その波形分析にて拍動性の血流を認めた.造影CTおよび血管造影検査にても血流増加を裏付ける同様な所見が得られ,膵内分泌腫瘍と診断した.空腹時血中ソマトスタチンが460pg/mlと異常高値を示した.切除標本では薄い被膜を有する4.5cm大の赤茶色の充実性腫瘍で,組織学的には好酸性の腫瘍細胞が胞巣状に増殖し,免疫染色にてソマトスタチン抗体陽性細胞を散在性に認め,膵ソマトスタチノーマと診断した.超音波ドプラー法は非侵襲的に繰り返し施行可能であり,膵腫瘍の鑑別診断に極めて有用な検査法と考えられた.
  • 田島 秀浩, 佐々木 省三, 野手 雅幸, 澤崎 邦廣, 藤田 秀春
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1750-1754
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.上腹部不快感と腹部膨満感を主訴に前医を受診し, CT上,膵頭部に手拳大の腫瘤を認め当科紹介となった.腫瘍は内部に石灰化を伴い,上方は肝門部に及び,右側は十二指腸を外側に圧排し,左側は腹腔動脈および上腸間膜動脈に接しており,腎前面から膵頭部を前方に圧排するように分葉傾向を持って発育していた.また,大動脈の左側にはリンパ節転移と思われる3cm大の腫瘤を認めた.血管造影所見上,腫瘍はhypervascularで,門脈は完全閉塞し腫瘍の周囲にcavermous transformationを認めた.開腹生検を行ったが確定診断が得られないまま肝不全にて死亡し,剖検の結果,膵ソマトスタチノーマと大動脈周囲リンパ節転移を伴う胆嚢癌と診断された.本疾患は本邦報告例が17例と比較的希な疾患であり文献的考察を加えて報告した.
  • 村上 慶洋, 岩井 和浩, 高田 実, 橋田 秀明, 水戸 康文, 高橋 透, 加藤 紘之
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1755-1758
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾動脈瘤の嚢胞内への穿破に続いて腹腔内出血をきたした膵仮性嚢胞の1例を経験した.症例は42歳男性.慢性膵炎にて入院中,腹痛が増強し,意識消失が出現した.腹部は全域に圧痛,筋性防御を認めた. CT検査にて膵尾部後面の嚢胞内,およびその周囲に出血を疑わせる液体貯留を認め,腹腔穿刺にて血性腹水が確認された.以上より脾動脈瘤破裂による腹腔内出血の診断にて,緊急手術を施行した.手術所見では,脾上極動脈が嚢胞内へ穿破しているものと考えられたので,膵尾部・脾切除術を施行した.慢性膵炎の合併症の一つである動脈瘤破裂・出血の報告例のうち,腹腔内出血をきたした症例には,開腹手術による積極的治療が救命につながると考えられた.
  • 富沢 直樹, 棚橋 美文, 池谷 俊郎, 小川 哲史, 大和田 進, 森下 靖雄
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1759-1763
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性で, 1992年4月に胆嚢癌で肝床切除R2, 郭清術を施行された.病理組織は中分化型腺癌, ss, n1(No. 12b)であった. 1996年7月,肝十二指腸間膜内に再発腫瘤を認め手術を施行した.腫瘍は門脈に浸潤しており,門脈合併膵頭十二指腸切除を施行した.門脈-臍静脈バイパスを用いたが,腸管鬱血のため卵巣静脈より再挿管し,門脈-体循環バイパスに変え肝局所冷却を併用した.門脈遮断時間は90分に達したが,耐術しえた.腫瘍主座は中下部胆管傍の肝十二指腸間膜内結合織内に存在し,胆嚢癌再発であった.胆道癌局所再発は有効な治療法が少ないが,症例によっては外科的治療の対象になりうる.その際,適切な血行補助手段は血管浸潤例に有効である.
  • 的野 敬子, 緒方 裕, 荒木 靖三, 笹富 輝男, 犬塚 清久, 白水 和雄
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1764-1768
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,非常に稀な骨盤内遊走脾の1例を経験したので報告する.症例は,27歳女性.未婚,妊娠歴なし.生直後,臍ヘルニアに伴う腸管破裂による腹膜炎を発症し,開腹術の既往を有していた.月経不順を主訴に近医の産婦人科を受診し,骨盤内の腫瘤を指摘されたため,当科に紹介入院となった.血液,生化学検査, CT, MRI, Doppler US, 血管造影等の精査の結果,骨盤内の腫瘤は脾機能亢進と長径約15cmの脾腫を合併する遊走脾と診断された.よって,茎捻転による脾臓の血行障害の改善および妊娠による脾臓破裂の回避などの目的にて,外科的治療を行った.本症例は開腹の既往があり,高度な腹部の血管分岐異常を認めたことと,上腹部が極めて狭いことより,脾摘出術を施行した.術後,脾機能亢進による血小板の低下も正常化し, 2年経過した現在も特に,合併症等なく順調である.
  • 佐藤 加奈子, 高橋 正純, 佐藤 芳樹, 池 秀之, 嶋田 紘
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1769-1773
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.主訴はタール便.中下部領域の進行胃癌と近医で診断され,平成9年9月24日当科に入院した.既往に57歳から慢性C型肝炎がある.汎血球減少(WBC2,100/mm3, RBC241×104/mm3, Plt4.4×104/mm3)があり,腹部超音波検査,CT検査で肝左葉腫大,脾腫および脾静脈の拡張を認めたことから, C型慢性肝炎による肝硬変と,肝硬変による門脈圧亢進症に伴う脾機能亢進による汎血球減少の併存があると診断した.汎血球減少に対して術前に部分脾動脈塞栓術(PSE)を施行した. WBCは6,000/mm3, Pltは9×104/mm3に改善し, PSE後20日目に幽門側胃切除術を施行した.術中,術後とも経過良好で第50病日に退院した.
    脾機能亢進による汎血球減少を合併した中下部領域胃癌に対して脾摘に伴う胃全摘を回避する上で術前PSEは有用と思われた.
  • 上原 圭介, 長谷川 洋, 小木曽 清二, 伊神 剛, 太平 周作, 森 俊治
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1774-1778
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年,未破裂脾動脈瘤の治療法として, transcatheter arterial embolization(TAE)が選択される場合が増加している.しかし,破裂性脾動脈瘤に対しては手術療法を行うのが一般的とされている.今回われわれはTAEが奏効した破裂性脾動脈瘤の1例を経験したので報告する.
    症例は53歳,男性.上腹部痛と意識消失発作のため,近医に搬送後,腹痛の増強とUSにて腹水を認めたため当院転院となった.腹部CTでは腹水を認め,脾門部に斑に造影される約4×3cmの腫瘤を認めた.腹水穿刺は血性であったため,脾動脈瘤破裂を疑い,直ちに腹部血管造影を施行したところ,脾動脈本幹遠位1/3に嚢状の脾動脈瘤を認めた.造影剤の血管外漏出は認めなかったが,脾動脈に対しTAEを施行した.術後経過は順調で,患者は合併症を認めることなく, 2週間後に退院した.破裂性脾動脈瘤に対するTAEの報告は本邦で7例目であり,有用な治療法と考えられた.
  • 西森 武雄, 柳川 憲一, 天野 良亮, 韓 憲男
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1779-1783
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    陰茎の転移性腫瘍は陰茎への比較的豊富な血流供給や,膀胱・前立腺・直腸といった近接臓器が高い悪性新生物発生率を示すにもかかわらず稀である.われわれはS状結腸癌からの陰茎転移の1例を経験した.
    症例は55歳,男性. 54歳時にS状結腸癌にてS状結腸切除術(H0, P0, N4(+), D2, ss, n0(+), ly3, V1)を受けた. CT検査では大動脈,両側腸骨動脈周辺のリンパ節の著明な腫大を認めた.術後15カ月に陰茎亀頭部に腫瘤を認め,生検の結果, S状結腸癌からの転移と診断された.陰茎への転移経路については逆行性リンパ性,逆行性静脈性が考えられた.患者は陰茎転移と診断されてから7カ月後に死亡した.大腸癌からの陰茎転移症例の本邦報告例は9例であった.
  • 竹林 徹郎, 森田 高行, 藤田 美芳, 樋田 泰浩, 北城 秀司, 宮坂 祐司, 加藤 紘之
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1784-1787
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌破裂後の腹膜播種と考えられる孤立性大網転移の1手術例を経験した.症例は37歳男性. 1994年8月12日突然の腹部激痛にて札幌医大救急部へ搬送され,腹部CTにて肝細胞癌破裂による腹腔内出血と診断され肝動脈塞栓術 (TAE) にて止血された.破裂後第12病日,肝S6亜区域切除施行を施行された.術後北海道消化器科病院(以下当院)外来にて経過観察していたが1995年7月29日(破裂後第352病日)下腹部痛が出現したため腹部CTを施行したところ下大静脈右腹側に腫瘤を認め,その後腹部CTによる経過観察で急速に増大したため転移性大網腫瘍の診断にて破裂後第406病日,大網および横行結腸部分切除を施行した.術後病理では中分化型肝細胞癌の大網への転移と診断された.患者は破裂後第649病日腹膜播種再発のため死亡したが,外科的切除による延命効果があったと考えられた.
  • 横山 雄一郎, 岡野 圭一, 唐澤 幸彦, 臼杵 尚志, 前場 隆志, 前田 肇, 小倉 真治
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1788-1791
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアは高齢者の女性に好発する比較的稀な疾患で,穿孔例の報告は少ない.今回,閉鎖孔に嵌頓した象徴が穿孔し,大腿部に巨大な膿瘍をきたした1例を経験したので報告する.症例は82歳女性で,腹痛,嘔吐,左大腿部痛のため,近医を受診.同医でイレウスと診断され保存的治療が行われるも改善せず,左大腿部の腫脹が出現した.画像上,大腿部にガス像を認めたことよりガス壊疸の疑いで当科に紹介された. CTでは,左大腿部に膿瘍を認め,その上方は左閉鎖孔に近接していた.また前医で挿入されたイレウス管の先端は左閉鎖孔付近で停止していた.膿瘍穿刺液にenterococcusが検出されたことより,閉鎖孔ヘルニア嵌頓による小腸穿孔と診断した.術中所見では回盲部より75cm口側の小腸が左閉鎖孔に嵌頓・穿孔し,大腿側に穿破していた.小腸部分切除とヘルニア門の修復を行い軽快退院した
  • 中村 将人, 中口 和則, 古川 順康, 岡島 志郎, 陶 文暁
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1792-1795
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の女性,嘔吐を主訴に来院した.上腹部に巨大な腫瘤と,右鼠径部に腫瘤を認めた. CT検査にて腹壁正中より,胃前庭部,横行結腸の脱出を認め,鼠径部は小腸の脱出を認めた.白線ヘルニア,大腿ヘルニアによる腸閉塞の診断にて手術を施行した.便汁様内容物の嘔吐と両ヘルニアの手術所見より大腿ヘルニアの嵌頓による腸閉塞症と診断した.
    稀な疾患であるが,白線ヘルニアを診察するときは他のヘルニアの合併についても注意する必要があると考えられた.
  • 笹本 彰紀, 池澤 輝男, 浅野 昌彦, 岩塚 靖, 木村 充志, 水谷 孝明
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1796-1799
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.虚血性心疾患の精査のため心臓カテーテル検査が右大腿動脈より施行された.次第に両足趾のチアノーゼ,疼痛をきたし当院に入院となった.入院時両下肢の動脈拍動は良好に触知し, APIは右1.03,左1.04であった.腹部CTで腹部大動脈に粥状硬化と壁在血栓を認め,血管造影で腎動脈以下から左右総腸骨動脈にかけて動脈壁の不整を認め,ここを塞栓源とするblue toe症候群と診断した.入院後PGE 1の点滴を行ったが効果がないため,両側腰部交感神経切除術を施行した.しかし壊死は進行し,両足趾切断術を数回にわたり施行した.次第に切断端の壊死が進行したため微細塞栓が継続していると考え,Yグラフト置換術を施行した.術後より両側下腿のチアノーゼ・壊死をきたし,膝下にて両下肢切断術を施行した.
  • 塩野 則次, 小山 信彌, 渡邉 善則, 吉原 克則, 川崎 宗泰, 横室 浩樹, 小澤 司, 濱田 聡, 益原 大志
    2001 年 62 巻 7 号 p. 1800-1802
    発行日: 2001/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    牛コラーゲンコーティングまたは,ゼラチンコーティング人工血管は,炎症反応の遷延する症例や微熱の持続する症例がある.腹部大動脈瘤手術において,自己フィブリン糊を作製し,人工血管のpre-clottingを3例で試みた.吻合後の人工血管からの血液漏出は認められず,同種血輸血は全例回避できた.既存のコーティンググラフトに使用される異種蛋白の安全性が確立されていないため,自己フィブリン糊によるpre-clottingは有用な方法であると思われた.
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