日本臨床外科学会雑誌
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65 巻, 7 号
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  • 佛坂 正幸, 自見 政一郎, 松本 伸二, 武田 成彰, 岩村 威志, 千々岩 一男
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1745-1749
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    90歳以上の超高齢者の大腸癌手術症例における術後経過について検討し, 75~79歳症例22例と比較した.症例は男性2例,女性3例で,年齢は92歳3例, 90歳2例であった.術前, 3例(60%)に腸閉塞を認め,術前のヘモグロビン値は75~79歳症例に比し有意(p<0.01)に低かった.手術は結腸右半切除1例,横行結腸切除+空腸部分切除1例,ハルトマン手術1例,低位前方切除1例,人工肛門造設+経肛門的切除1例を行った.合併症は3例にみられたが,いずれも保存的治療で治癒した.重症の痴呆を除く4例では平均2.2日目に起立し, 3.9日目に歩行でき, 75~79歳症例と比べて有意差はなかった.水分は平均4.8日目,食事は平均7.0日目に開始した.全例が術前の生活に復帰した.超高齢者の大腸癌でも全身状態が良好であれば,術後も75~79歳の症例と同様の良好な経過が期待できるため,積極的に切除を検討すべきと思われた.
  • 大見 良裕, 稲葉 宏, 星 加奈子, 大見 琢磨, 長谷川 信吾, 城 俊明, 深野 雅彦
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1750-1754
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:根治手術を受けていない痔瘻を追跡調査し,痔瘻が時間の経過とともに進行したか否かを検討した.
    方法:大見クリニックを10年以上前に受診した痔瘻320例のうち,根治手術を受けていない129例を対象とした.初診後も診察を受けた6例を除いた123例には,郵送または電話によるアンケート調査を行い,あわせて来院の上,肛門の診察を受けるよう依頼した.
    結果:アンケート調査で35例から回答を得た. 9例は他の医療機関で手術を受けていた.残りの26例では23例でほとんど症状がみられなかった.肛門の診察を行った13例は全て低位の痔瘻であった. 1例は低位筋間痔瘻から高位筋間痔瘻へ進行していた. 7例は進行していなかった.残りの5例は瘻管が瘢痕化していた.
    結論:痔瘻の一部には10年を経ても進行しないものがあり,なかには瘢痕化するもののあることがわかった.
  • 清水 大喜, 河内 保之, 嶋村 和彦, 西村 淳, 新国 恵也, 清水 武昭, 畠山 勝義
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1755-1761
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    〈目的〉胃癌肝転移症例に対する肝切除術の意義について検討した. 〈対象〉 1991年から2002年の間に新潟県厚生連長岡中央綜合病院で胃癌肝転移症例に対し肝切除術を施行した17例, 19回(再肝切除2例)を対象とした. 〈結果〉 17例中10例が死亡, 7例が生存中で, 5年生存率は22%, 50%生存期間は15.2カ月であった. 5年以上の長期無再発生存を2例認めた.残肝再発を11例に認めた.術後予防的肝動注化学療法を施行した群では,累積生存率は変わらなかったが,残肝再発は減少した.また,死亡10例のうち残肝再発単独は4割であったのに対して,腹膜播種,リンパ節転移などによる再発死を5例認めた. 〈まとめ〉 2例の長期生存を含め, 5年生存率22%の結果を得た.さらに予後向上のためには,術後肝動注化学療法,全身化学療法を併用した集学的治療を行うことが必要であると考えられた.
  • 永野 靖彦, 渡会 伸治, 森岡 大介, 松尾 憲一, 杉田 光隆, 三浦 靖彦, 田中 邦哉, 遠藤 格, 関戸 仁, 嶋田 紘
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1762-1766
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    【目的】転移性肝癌に対する局所凝固療法の有用性について検討した.【対象】当科で局所凝固療法を施行した転移性肝癌は15例21病変であった.施行理由はH3多発肝転移例の切除対側葉13病変,肝切除拒否4病変,呼吸機能不良4病変であった.【結果】マイクロターゼ凝固療法16病変,ラジオ波焼灼療法は5病変であった.腫瘍径は, 1cm未満7例, 1-2 cm 10例, 2-3 cm 2例, 3 cm以上2例で,平均腫瘍径は1.7cmであった.平均観察期間8.3ヵ月で2cm未満の9病変に再発を認めなかったが, 4病変(19%)に局所再発を認めた. H3肝転移7例に対しMCTを併用した肝切除を施行し, 4例は無再発生存中であるが, 3例は多発肺転移と残肝多発再発のため死亡した.【結語】 2 cm未満の病変に対しては局所凝固療法が有効である.切除不能H3多発肝転移に対して,局所凝固療法を併用することで,根治切除の可能性を広げることができると考えられた.
  • 新井田 達雄, 吉川 達也, 太田 岳洋, 高崎 健
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1767-1771
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胆嚢癌において, No.12b, cが乳癌などのsentinel node navigation surgery (SNLS)をめざしたsentinel lymph node (SLN)と同様に位置づけることが可能かを検証した.胆嚢癌HPD治癒切除例46例を対象にリンパ節転移状況を検討した. No.12b, cを跳躍するリンパ節転移は,全体で33%, ss癌で36%, sei癌で30%, binf (-)で33%, binf(+)で33%認めた.跳躍転移部位はNo.8a, 12p1, 2, 13a, 14aであった. No.12b, cは75%と最も,転移率が高かったが,乳癌のSLNと同様に位置づけられないと思われた.実際にPDの適応や郭清範囲を決定するには, No.8a, 12p, 13a, 14aなどのリンパ流路上のリンパ節を郭清しつつ術中迅速組織診断を同時に行うlymph node navigation surgeryが必要となるであろう.
  • 橋本 泰司, 坂下 吉弘, 高村 通生, 上松瀬 新, 清水 亘, 渡谷 祐介
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1772-1776
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    Benign symmetrical lipomatosis (以下, BSLと略記)は,頸部周囲を中心に左右対称性に脂肪腫が多発し,特異的な臨床像を呈する稀な疾患である.今回われわれは,長期にわたる多量の飲酒歴を持ったBSLの1例を経験したので報告する.
    症例は, 67歳男性.頸部腫瘤を主訴に来院,側頸部から後頸部にかけ,軟らかい皮下腫瘤を触知した. CT上,脂肪と同じdensityのびまん性腫瘤を認め,また,血小板減少を伴った肝機能障害を認めた.経過観察中,頸部の圧迫症状が出現したため,腫瘤摘出術を施行した.腫瘤は被膜形成を認めず,びまん性に広がる成熟脂肪細胞からなり悪性所見は認めなかった.術後経過は良好で, 6カ月を経過した現在,再発を認めない.手術については,病理組織学的特徴から腫瘍の完全摘出が困難な場合が多く,機能障害を改善するため最小限の腫瘤切除で十分であると考える.
  • 川島 太一, 宮澤 幸正, 松原 久裕, 坂田 治人, 羽成 直行, 落合 武徳
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1777-1779
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳女性.甲状腺乳頭癌にて根治手術後8年に多発性肺転移および頸部リンパ節再発と診断された.このため残甲状腺全摘およびリンパ節郭清施行した. 123Iシンチグラフィにて遠隔転移巣に異常集積を認めないため経過観察していた. 3年後,頸部疼痛を伴う第1胸椎転移を認め,経口モルヒネ製剤を必要とした.有症状であり他に治療法がないことから131I 100mCiにて内照射施行した.画像上,胸椎転移はPRを得て,経口モルヒネ製剤から離脱した.甲状腺癌遠隔転移の123I取り込み陰性例に対しても131I内照射の適応が拡大される可能性が示唆された.
  • 伊藤 勅子, 原田 道彦, 松下 明正, 熊木 俊成, 青木 孝學, 春日 好雄, 上原 剛, 土屋 眞一
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1780-1783
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺原発内分泌細胞癌は稀な腫瘍であるが,われわれはその1例を経験したので報告する.症例は66歳女性で主訴は右乳腺腫瘤であった.超音波検査所見,マンモグラフィ検査所見では境界明瞭で良性腫瘍が考えられた.穿刺吸引細胞診検査では血性内容液が見られ, class IIあるいはIIIであったため,確定診断の目的で腫瘍摘出術が施行された. HE染色による病理組織学的所見およびクロモグラニンA染色の陽性所見に加えて,戻し電顕検査にてdense core-granuleが確認されたため乳腺原発内分泌細胞癌と診断された.
  • 藤崎 正之, 田中 信孝, 古屋 隆俊, 野村 幸博, 永井 元樹
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1784-1789
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    胃潰瘍穿孔により胃心嚢瘻・心膜膿気腫をきたし心タンポナーデを発症,心嚢ドレナージ・手術により救命しえた症例を報告する.症例は60歳男性.腹痛・背部痛が出現し,救急外来へ搬送した.到着時血圧80mmHg,胸部X線上心拡大,心エコー描出不良にて緊急CTを施行,心嚢内の気体・液体貯留より心タンポナーデと診断し心嚢ドレナージを施行した.ドレナージ後施行した上部消化管内視鏡にて,合併した食道裂孔ヘルニアの滑脱胃と心嚢腔間の瘻孔による心膜膿気腫と診断し,緊急手術を施行した.食道裂孔直上にある胃心嚢間の瘻孔を確認したが,炎症・癒着のため切除が困難で胃潰瘍穿孔部瘻孔へ大網充填を施行した.術後瘻孔治癒が遷延したため,再手術を施行.開胸を加え胃心嚢間の瘻孔を分離し潰瘍穿孔部へ空腸を吻合した.術後心嚢ドレーン液は速やかに消失し治癒した.難治性本疾患に胃穿孔部小腸縫着術は有効な術式と考えられた.
  • 安藤 敬, 幕内 晴朗, 菊地 慶太, 村上 浩, 大野 真
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1790-1795
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は, 14歳の男性.速度超過によるオートバイの事故にて,受傷. CT検査にて胸部大動脈峡部の損傷と外傷性硬膜下血腫を認めた.脳出血があるため,ヘパリンを使った緊急手術は危険と判断.大動脈破裂部の血腫は比較的限局しており,血行動態も安定していたので, 24時間後に脳CTをフォローし,硬膜下血腫の拡大がないことを確認して,胸部大動脈に対する緊急手術を行った.アルガトロバンによる左心バイパス下に,下行大動脈峡部の人工血管置換術を施行した.術中術後とも無輸血にて経過し,第1病日朝に抜管するも,その後急速に酸素化能が悪化したため,再挿管した.ノルアドレナリン0.9μg/kg/min投与下に血圧は120/58mmHgと維持されていたが, C. I.は7.31/min/m2と異常に高く,末梢血管抵抗は100dynes. sec/cm5と高度に低下していた.敗血症に準じた病態と考え, polymyxin B immobilized fiber column (以下PMXと略す)を施行したところ,著効を示した.血液培養は陰性であった.第5病日に抜管し,その後の経過は良好であった.外傷性胸部大動脈破裂の手術で左心バイパスが有用であり,術後の低酸素血症にPMXが著効を示した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 河田 直海, 大森 克介, 今井 良典, 魚本 昌志, 真田 英次, 柚木 茂
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1796-1799
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.総胆管結石に対し内視鏡的乳頭拡張術を行った後,腺筋腫症を伴う胆嚢結石の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.胆嚢の組織学的検索では腺筋症なく,免疫染色でcytokeratinとvimentin陽性, thrombomodulin一部陽性, CEA陰性の腫瘍があり悪性中皮腫の転移と診断された.改めて初診時からの胸部レントゲンとCTを読影したが,右肺のブラと両側副腎腫大以外に異常は指摘できなかった.退院翌々日から左肩と背部痛出現, 7日目の来院時に初めて左胸水を認めた.胸腔穿刺での細胞診は陰性で,胸腔鏡下胸膜生検で悪性胸膜中皮腫と診断された.副腎腫大もその転移と考えられた.本疾患の早期診断の困難さを痛感させられるとともに,本疾患の胆嚢転移の報告は見当たらず貴重な症例と考えられたので報告した.
  • 大澤 久慶, 馬渡 徹, 渡辺 敦, 安倍 十三夫
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1800-1803
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性, 30年前にWegner肉芽腫症による気管狭穿のため永久気管孔の造設術を受けていた.今回,右上肺野に腫瘤影を認め手術となったが,永久気管孔を有するため術中の分離肺換気にはバルーン付きの気管支ブロッカーを使用することとした.手術は胸腔鏡下にまず腫瘍の部分切除を行い術中迅速病理で腺癌の診断を得,ひき続き右上葉切除とリンパ節郭清(ND 2 a)を行った.気管支の切離には自動縫合器を使用した.手術終了後,気管支ブロッカーの抜去を試みるも抜去が不能であった.この時点で気管支切離時にバルーンカテの先端ごと切離したことが判明,再度胸腔鏡下に手術を行った.気管支断端部のステープルを外すと気管支ブロッカーは抜去可能となった.気管支断端は直接縫合し心膜周囲脂肪で被覆した.術後は重篤な合併症も認めず順調に経過した.
  • 野中 健太郎, 尹 亨彦, 福原 謙二郎, 今北 正美, 井上 悦男, 岩瀬 和裕
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1804-1808
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.咳嗽を主訴に近医を受診した.胸部単純X線写真で左下肺野の異常陰影と胸部CTで左胸腔下半分を占拠する巨大な腫瘍を認めた.胸部MRIで腫瘍と横隔膜との境界が消失しており,横隔膜原発の胸腔内腫瘍と診断した.第8肋間側方切開で開胸した.横隔膜より有茎性に発生する腫瘍を認めたので,横隔膜を含めて腫瘍を完全に摘出した.腫瘍は,大きさ17×12×8cm,重量812gで,病理組織検査で紡錘形細胞が錯状,一部車軸状の配列を示し,免疫組織検査ではCD34陽性であった.横隔胸膜原発の孤立性線維性腫瘍と診断された.術後14カ月の現在再発は認めていない.本症例では原発部位同定にMRIが有効であった.
  • 山本 敏雄, 宇奈手 一司, 遠藤 財範
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1809-1812
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    きわめて稀な食道glomus腫瘍を経験したので報告する.症例は45歳の男性で約10年前より他院で血液透析中であった.嚥下に際して食道に物がつかえる感じがすると訴え,透析中の医院より紹介され来院した.内視鏡検査で食道下部に粘膜下腫瘍がみられたが通過障害はなく経過観察としていた.約1年後の検査で腫瘍がやや増大しており,また患者の希望もあり2001年10月23日手術を施行した.
    左開胸下に手術を施行したが,腫瘍は限局性で食道外側よりの核出術が可能であった.病理組織学的および免疫組織学的にglomus腫瘍と診断したが,悪性所見はなかった. Glomus腫瘍は消化管では稀であり,その報告のほとんどが胃症例である.食道症例は本邦では報告がなく外国文献でも1967年のRueffらの症例以後に5例だけしか報告されておらず,きわめて稀な疾患である.
  • 牧野 知紀, 平尾 素宏, 藤谷 和正, 辻仲 利政, 高田 賀章, 真能 正幸
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1813-1817
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    35歳,男性.胃のつかえ感を主訴とし,精査にて胃体上部小彎に径4 cmの粘膜下腫瘤を認めた.生検による病理検査にて,紡錘型細胞の増殖・核のpalisadingを認め,免疫染色においてS-100蛋白およびNSEが陽性であり胃神経鞘腫と診断され,噴門側胃切除術(D1,神経温存)を施行した.
    胃神経鞘腫の本邦報告287例をまとめた.平均年齢は59.0歳,男女比は2:3であり,症状は腹痛,腹部腫瘤触知,吐下血の順に多かった.占拠部位は胃体小彎後壁側にやや多く,腫瘍径の平均は6.0cmであった.手術術式は腫瘍摘出術から胃全摘術まで様々であったが,胃神経鞘腫の悪性の割合(4.8~10.0%)や悪性例のうちリンパ節転移をきたす割合(10.0%)を考慮すると,必ずしも広範囲胃切除術は必要ないと考える.腫瘍の種類・性質をより正確に把握し,適格な外科的治療を選択することが重要である.
  • 水本 一生, 安井 弥, 峠 哲哉
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1818-1822
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    83歳,女性で,胃癌から単独に脳転移をきたした症例を報告した. 3型胃癌の診断にて,幽門側胃切除術が施行された.開腹時診断はsT3sP0sH0sN3 (stage IV)で,組織学的診断はpoorly differentiated adeno carcinoma, Se, ly3, v2, n3: pT3pP0pH0pN3 (stage IV)であった.免疫組織化学的検査ではp53の異常蓄積, cycline E, integrinlinked kinase (ILK), VEGF-Cの発現増強とhMLH1, p27, E-cadherineの発現減弱が認められた.術後2カ月目に痙攣,意識混濁を認めたため,頭部CT検査を施行した結果,胃癌からの脳転移が疑われた.症例は術後4カ月目に永眠された.
  • 那須 元美, 前川 博, 佐藤 浩一, 矢吹 清隆, 前川 武男
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1823-1827
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術前,血清granulocyte-colony stimulating factor (以下G-CSF)が高値を示した胃癌の2例を経験した.症例1は67歳,男性.吐血を主訴に入院した.内視鏡検査で胃体上部に2型胃癌が発見された.術前の白血球数は27.5×103/μl, G-CSF値は62pg/mlと異常高値を示したが,幽門側胃切除後それぞれ3.9×103/μl, 14pg/mlと低下した.症例2は62歳,男性.食欲低下で来院した.上部消化管精査で胃体中部に巨大な2型胃癌がみられた.生検結果は腺扁平上皮癌であった.術前の白血球数は14.1×103/μl, G-CSF値は64pg/mlと異常高値を示したが,胃全摘後それぞれ4.9×103/μl, 10pg/ml以下と低下した.症例1の切除標本のG-CSF免疫染色では癌腫に陽性細胞が検出されG-CSF産生腫瘍と証明されたが症例2では陽性細胞は検出されなかった.
  • 近藤 哲矢, 松尾 浩, 山内 一
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1828-1831
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    内臓悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Joseph's noduleとして知られている.今回,原発の胃癌の診断に先行し発見された臍転移の1例を経験したので報告する.症例は, 65歳女性.主訴は,臍部の腫脹および疼痛.幼少時から,臍ヘルニアを指摘されていた. 6カ月前から,臍部の腫脹,疼痛を自覚し近医を受診,当科紹介となった.臍部に30×30mmの疼痛を伴う硬い結節を触知した.臍部の病変の他に嘔気,食欲不振も自覚していたため,上部消化管造影検査および内視鏡検査を施行した.体中部小彎から幽門部にかけ3型胃癌が疑われ,生検で腺癌と診断された.幽門側胃切除術および,臍ヘルニア切除術を施行した.腫瘍は,胃壁から露出し,周囲のリンパ節腫大,腹膜播種を認め,白色の結節を伴う大網が臍ヘルニア内容となっていた.病理組織検査でsignet ring cell carcinomaと診断された.
  • 鈴木 和志, 小林 陽一郎, 宮田 完志, 米山 文彦
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1832-1835
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    右胃大網動脈(RGEA)をグラフトに使用した心臓冠状動脈バイパス手術(CABG)後に発見された進行胃癌に対し, RGEAグラフトを温存しつつ幽門側胃切除術を施行し,経過良好な症例を経験したので報告する.症例は58歳,男性.平成9年9月19日, RGEAをグラフトとして使用したCABG 3枝を当院にて施行. CABG術後外来フォロー中,進行する貧血を認め,精査にて胃前底部小彎後壁の3型進行胃癌と診断した.術前血管造影検査でRGEAグラフトは開存しており,これを温存する形で血管周囲の郭清を行い, D2郭清の幽門側胃切除術を施行した.術後3年以上再発兆候を認めていない.
    RGEAグラフト使用CABG後の胃癌手術症例においては,術前の詳細な検討によりグラフト温存の可否を決定する必要がある.
  • 大山 孝雄, 吉川 高志, 赤堀 宇広, 田仲 徹行, 榎本 浩士
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1836-1840
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.人間ドックで胃癌の診断を受け,手術目的で来院した.胃X線・内視鏡検査で胃幽門部小彎後壁のIIc型早期胃癌と診断した. AFP値は正常範囲で,腹部エコー, CT検査では異常を認めなかった.腹腔鏡補助下幽門側胃切除を施行した11カ月後に肝外側区域に巨大な転移を認めたため,再手術を施行した.摘出した肝転移巣,リンパ節の免疫組織学的検索で, AFP染色が強陽性であった.また血清AFP値は226,000U/mlと異常高値を示した. TS-1による全身化学療法と,残存肝転移巣にラジオ波焼灼術および肝動注を用いた集学的治療がQOLの改善に貢献した. AFP産生胃癌は進行癌に多いが早期胃癌でも稀に認められ,予後は悪い.術前および術後のAFP測定は転移・再発の早期発見に寄与するものと思われた.
  • 齋藤 慶太, 星川 剛, 亀嶋 秀和, 黒滝 武洋, 孫 誠一, 平田 公一
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1841-1845
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    患者: 70歳,男性.平成11年11月16日他院にて結腸右半切除, D1郭清が施行された.十二指腸への浸潤を伴っており十二指腸部分合併切除とともに,胃空腸吻合術を加えたが,病理組織所見でew(+)とのことであった.追加再手術の必要性についてはICされなかったとのことであるが詳細は不明である.平成13年3月黄疸を生じたため,肝機能障害の精査を目的として当院へ受診した.十二指腸第2部に存在する約8cm大の腫瘤による閉塞性黄疸と診断された.大腸癌十二指腸浸潤の遺残癌増大・周囲進展と診断し,平成13年5月膵頭十二指腸切除,回腸部分切除,右腎摘出術を施行した.患者は術後約2年8カ月経過した現在明らかな再発を認めることなく生存中である.大腸癌局所進展に対し,積極的に他臓器合併切除を行うことで予後の改善がえられることを示唆した症例と考える.
  • 石井 博道, 森村 玲, 崔 聡仁, 海老原 良昌, 増山 守, 渡辺 信介
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1846-1849
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は21歳,男性.下血,上腹部痛が徐々に悪化するために当院を受診した. CT検査で上腸間膜静脈(以下SMV)が上腸間膜動脈(以下SMA)の左側に存在するSMV rotation signと,軟部組織がSMAを取り囲むwhirl-like patternを認めたため,腸回転異常による中腸軸捻転症と診断し緊急手術となった.手術所見は,小腸は右腹腔内に,結腸は左腹腔内に存在し, nonrotation型腸回転異常であった. Treitz靱帯は形成せず,空腸起始部が時計方向に180度捻転しており,この捻転を解除し,予防的虫垂切除を行った.
    特徴的なCT所見にて術前診断し,早期手術を行い得た腸回転異常による中腸軸捻転症を経験したので報告する.
  • 江口 武彦, 加藤 剛, 本田 一郎
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1850-1854
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,男性.下腹部痛にて受診し急性虫垂炎として緊急手術を施行,術後に腹部ドレーンより腸液が流出し再手術となった.腹腔内の検索にてTreitz靱帯から約170cm肛門側の空腸に嚢状巨大憩室を認め,病理組織検査で空腸真性憩室と診断された.小腸憩室は稀な憩室であり50歳代の男性に多い.空腸憩室はこの中で多数を占め,近位側で腸間膜付着側に発生する仮性憩室が多く単発性で比較的大きい.無症状で経過する場合が多いが約10%が合併症を発生する.術前診断は困難であり診断・治療の遅れから重篤となることがある.本症例は遠位側の腸間膜反対側で単発性巨大憩室という比較的珍しい憩室であった.経過から,憩室の軸捻転による血行障害に伴う憩室炎を虫垂炎と誤診し虫垂切除施行後憩室穿孔をきたしたと考えられる.急性腹症では虫垂炎と診断しても肉眼的に虫垂の炎症が軽度の場合には,小腸憩室の存在を念頭に入れ精査を行うことが重要と考えられた.
  • 青柳 信嘉, 飯塚 一郎
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1855-1859
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    腸閉塞で発症した回腸子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は38歳の女性.平成15年9月上旬,腹痛,嘔吐にて発症,腸閉塞の診断にて保存的治療を受け,軽快退院した. 10月上旬,月経が始まった後再び腹痛,嘔吐をきたし単純性腸閉塞の診断で再入院した.繰り返す腸閉塞のため開腹手術を行った.開腹所見では,回腸は末端部から約20cmにわたり捻れるように癒着,短縮し,回腸末端部は固く腫瘤状に触知した.子宮付属器は肉眼的に異常を認めず,回盲部切除とした.術後の病理組織診断にて回腸子宮内膜症と診断された.本疾患は腸閉塞で発症することが多く術前に診断を確定させることは困難であるが,月経に伴う消化器症状の消長により疑うことは可能である.また,近年の報告例が増えつつあり,性成熟期の女性の腸閉塞の鑑別診断として念頭に置く必要があると考えられた.
  • 吉田 信, 石後岡 正弘, 樫山 基矢, 高梨 節二, 塚本 尚文, 河島 秀昭
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1860-1863
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    穿孔性腹膜炎で発症した原発性小腸癌の1例を経験したので報告する.症例は48歳,男性. 1カ月前より腹痛,嘔吐あり近医受診.便潜血反応陽性のため上部消化管内視鏡,大腸内視鏡検査行うも異常なく対症療法で経過観察していたが,突然腹痛が出現し再受診.腹部単純X線上free airを認め,消化管穿孔の診断で同日当院紹介入院.腹部CTで上部空腸の壁肥厚認め上部消化管穿孔の診断で同日緊急手術. Treitz靱帯から約15cmの空腸に5cm大の硬い腫瘤を触知し,その中心部で穿孔していた.さらに腹膜播種多数認めたため根治手術は困難と判断し小腸部分切除術施行.摘出標本では5.5×3.5cmの限局潰瘍型腫瘍で深い潰瘍底に穿孔部を認め,病理組織所見では高分化型腺癌と診断.上部下部消化管に異常なく消化器症状が持続する場合,小腸腫瘍を念頭に置き精査を進めるべきである.
  • 諸橋 聡子, 笠島 浩行, 吉崎 孝明, 大石 晋, 舘岡 博, 猪野 満, 田中 隆夫
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1864-1867
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.主訴は右下腹部痛で右鼠径部に発赤,圧痛を伴う腫瘤を認めた.腹部単純写真では右鼠径部に糞石と思われる石灰化を認め,骨盤CTでは同部にhigh density像を有する管腔構造と周囲にniveau形成もみられることから,虫垂が嵌頓した外鼠径ヘルニアと診断.術式は炎症反応が高度のため腹腔内への炎症波及を考慮し,開腹を先行.腹腔内の炎症がないことを確認後,鼠径部からの虫垂切除とヘルニア嚢を切除し,高位結紮術を施行.
    外鼠径ヘルニア内に虫垂が嵌頓することは非常に稀で, Amyand's herniaと呼ばれている.
    われわれが検索した限りでは,自験例を含め本邦では11例の報告をみるに過ぎない.本症の術前診断は困難であるが,ヘルニア嚢内をより鮮明に写し出すCTが有用であると考えられた.また術式として本症例のように炎症反応の高度例では鼠径部,腹部の両側アプローチが必要と考えられた.
  • 徳山 泰治, 平井 孝, 加藤 知行, 金光 幸秀, 宮井 博隆
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1868-1872
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    術後5年間無再発生存中の虫垂粘液嚢胞腺癌による腹膜偽粘液腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.症例は61歳女性,下腹部膨満を主訴に近医を受診.大腸内視鏡およびCT所見から盲腸癌,両側卵巣転移と診断され,当院へ紹介された.手術所見では右卵巣,盲腸,虫垂が一塊となっていた.また,腹腔内には粘液が貯留し,さらに粘液結節が大網,脾臓周囲,ダグラス窩に存在した.子宮両付属器,大網,右半結腸,脾臓とともに粘液結節を極力摘出し腹腔内を5%ブドウ糖溶液にて洗浄し術後にシスプラチン腹腔内投与を繰り返した.病理組織学的には虫垂粘液嚢胞腺癌による腹膜偽粘液腫で粘液性腹水には癌細胞を認めないtypeであった.
  • 水沼 和之, 森 雅弘, 辰川 自光
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1873-1876
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳女性.慢性腎不全に対し血液透析が施行されていたが,突然の下腹部痛が出現し当院受診した.下腹部を中心とした圧痛および筋性防御があり,腹部CTにて腹腔内遊離ガス像を認めたため,緊急手術を行った.直腸Rs前壁に径5 cm大の穿孔があり,穿孔部縫合閉鎖,ドレーン留置および人工肛門造設術を行った.術後,軽度の縫合不全を生じたが保存的治療にて軽快した.予後不良とされる透析患者の大腸穿孔による糞便性腹膜炎に対しては早急な診断と手術による対応および術後の厳重な全身管理が必要と考えられた.
  • 細田 桂, 大木 暁, 増子 佳弘, 長渕 英介, 栗林 弘, 澤 洋文
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1877-1881
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.腹痛を主訴に救急車で来院した.腹部は膨隆し左下腹部に圧痛を認めた. CT所見では大腸に大量の便塊があり下行結腸周囲に腹水を認めたため,大腸癌による腸閉塞を疑い入院となった. CEAは365.3ng/mlと高値であった. 2日後腹痛が増強したため,手術を施行した.開腹すると横行結腸左側からS状結腸まで壊死していたが腫瘤を認めず,左半結腸切除,人工肛門造設術を施行した.病理組織学的には腸管上皮の壊死,炎症性細胞浸潤を認めたが,悪性所見を認めなかった.免疫組織化学染色ではCEAに強く染まる拡張したmicrocryptを認めた.以上より壊死型虚血性大腸炎と診断し, CEA高値はmicrocryptic dilatationが関与していると推測した. 27病日にCEAは1.7ng/mlと正常化し, 33病日退院した.動脈硬化,甲状腺機能低下による偽性腸閉塞が発症に関与したことが推測された.
  • 五代 天偉, 赤池 信, 山本 直人, 塩澤 学, 杉政 征夫, 武宮 省治
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1882-1886
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は60歳男性.腹痛を主訴に来院.腹部単純X線写真にてfree airを認めたが,腹部所見は弱く,経過観察していた.翌日になっても症状は改善せず, free airの増加を認めたため,消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した.開腹時穿孔を認める所見はなく,下行結腸に8cm大の風船様の腫瘤を認めた.同部に対し結腸部分切除を行った.病理組織学的検査にて巨大憩室症と診断された.本邦では,大腸巨大憩室症の報告は本症例を含め14例である.欧米の報告と比較して考察した.
  • 蓮田 慶太郎, 蓮田 晶一
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1887-1890
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    S状結腸憩室症は近年増加しているが瘻孔形成例の多くはS状結腸膀胱瘻であり子宮瘻は本邦で9例の報告しかなく腟瘻は報告がない.今回われわれはS状結腸憩室炎に起因したS状結腸腟瘻を経験したので報告する.症例は73歳女性で1年半続く着色帯下を主訴に来院した.腟鏡診にて腟壁に瘻孔と少量の便を認め消化管との交通を疑った.大腸内視鏡にてS状結腸に多数の憩室を認めたが瘻孔は不明であった.注腸造影でS状結腸に多発憩室および子宮方向への穿通像を認めた.また経腟的瘻孔造影で穿通像に一致した瘻管像を認めた.以上の所見よりS状結腸憩室腟瘻と診断し腹腔鏡補助下に瘻管切離, S状結腸側の瘻孔閉鎖を行った.腟側の瘻孔は特に処置しなかったが自然に閉鎖し瘻孔による症状も消失した.
  • 川口 雅彦, 藪野 太一, 宮永 太門, 渡邊 透, 山脇 優, 佐藤 博文
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1891-1894
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    結腸癌の消化管結腸瘻は比較的稀であるが,小腸結腸瘻を合併した症例はさらに少ない.症例は78歳,女性.平成12年12月頃から少量の下血を認め,次第に軟便硬便を繰り返すようになった.平成13年9月下旬に腹痛を伴ったため近医を受診し,貧血を指摘され10月3日当院紹介入院となった.体重は1年で15kg減少し55kgであった.入院時検査では,著明な小球性低色素性貧血と腫瘍マーカ高値を認めた.大腸内視鏡検査では2型進行癌を認めたが瘻孔は確認できなかった.注腸造影検査にて瘻孔を介しての小腸造影所見を認めた.他の画像検査では明らかな転移性腫瘍は認めなかった. S状結腸癌による小腸結腸瘻と診断し, 10月24日S状結腸切除,小腸合併切除術を行った.腫大した小腸間膜リンパ節には転移を認め同時に切除した.術後28カ月無再発にて経過観察中である.消化管結腸瘻を形成した結腸癌症例は,比較的限局しており合併切除により良好な予後を期待できる.
  • 高橋 玄, 前川 勝治郎, 大久保 剛, 佐藤 雅彦, 根上 直樹, 野中 英臣
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1895-1898
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.検診で便潜血陽性を指摘され来院.血液検査にて貧血(Hb 9.4g/dl)が認められたが経口摂取可能であった.注腸造影検査にて上行結腸に閉塞像が認められたが腹部レントゲン検査ではイレウス像は認められなかった.大腸内視鏡検査では上行結腸に全周性の陥凹性病変が認められ生検にてGroup4, suspicious of adenocarcinomaであった.腹部CT検査では肝S5にlow density areaが認められ,上行結腸癌・肝転移と診断し手術施行した.開腹すると上行結腸は回腸を巻き込み一塊となり回腸への浸潤・交通が疑われ,回腸合併切除の結腸右半切除術,肝転移巣に対してラジオ波焼灼術を施行.肉眼的には癌巣は回腸への浸潤・瘻孔形成を認め,組織学的には高分化型腺癌, si, ly1, v2, n (-)であった.結腸癌による小腸結腸瘻形成例は比較的稀で,われわれが検索しえた本邦報告例は現在まで自験例を含めて36例であり,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 長田 俊一, 山口 茂樹, 森田 浩文, 石井 正之, 坂東 悦郎, 高橋 滋
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1899-1903
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    【症例】76歳,女性.主訴は腹部腫瘤.平成14年11月主訴出現.当院内科精査で膿瘍形成を伴い胃への瘻孔を伴う横行結腸癌の診断で2月4日拡大右半結腸切除, 3群郭清,胃部分切除施行.術中所見は横行結腸癌のSi (胃および小腸間膜)が疑われた.病理所見は高分化腺癌, ss, ly2, v2, n0であった.合併切除した胃壁および小腸間膜には膿瘍,肉芽組織の形成が著明であるも癌の浸潤は認めなかった.横行結腸癌周囲の膿瘍が,胃へ穿通瘻孔形成し,二次性に小腸間膜と非癌部結腸が瘻孔形成したと考えられた.胃壁への浸潤所見がなく,胃および小腸間膜の2方向に癌周囲の膿瘍が穿通した大腸癌は稀であると考えられ,文献的考察を含め報告する.
  • 和田 義人, 宮崎 亮, 和田 純治, 金子 朋代, 鳥巣 要道
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1904-1908
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    78歳,男性. Dubin Johnson症候群,慢性腎不全にて透析中であった. 2002年7月,下腹部痛の精査加療目的で入院した.貧血,腹水を伴い,大腸内視鏡にて盲腸に2型進行癌を認めたため開腹手術を施行した.肝臓は黒色を呈し,癌は後腹膜へ浸潤していた.回盲部切除術を施行した.術直後より白血球, CRP,総ビリルビンが上昇し,手術侵襲に伴う一過性の炎症と判断したが,その後急性胆嚢炎を併発し保存的療法を施行したものの炎症所見,黄疸は改善せず,術後15日目に死亡した. Dubin Johnson症候群は良性疾患と考えられているが,術後肝不全との鑑別が難しい.遷延する高ビリルビン血症や肝不全が疑われたら積極的にビリルビン吸着療法や血漿交換を検討すべきと考えた.
  • 児島 亨, 仁熊 健文, 三村 哲重, 大原 利憲, 吉田 龍一, 筒井 信正
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1909-1913
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    慢性肝炎の加療中,無症状ながら発見された肝血管平滑筋脂肪腫(以下AML)の3例を経験したので報告する.症例1では穿刺吸引生検にて,症例2と3では肝切除術後AMLとの診断に到った.肝炎ウイルスマーカーが陽性であるAMLは,臨床上肝細胞癌(以下HCC)との鑑別が非常に困難であり,確定診断をつけることは難しい. HCCを否定するため確定診断をつけることが必要であり,また確定診断をつけるために穿刺吸引生検,ないし外科的切除を考慮する必要があると考えられた.
  • 甲斐 恭平, 佐藤 四三, 中島 明, 中島 晃, 霧生 孝夫
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1914-1917
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.慢性C型肝炎で通院加療中に腹部CTで肝腫瘤が疑われた.腹部造影CTで,肝S7に造影効果を認める腫瘍を認めた.肝細胞癌の診断で肝部分切除術を行ったが,病理組織学的には,同腫瘍は副腎組織より成っており, adrenal rest tumor of the liverと診断された.異所性の副腎組織を肝に認めることは少なく,本症例は非常にまれな病態と思われたので,若干の検討を加え報告する.
  • 真田 博明, 末田 泰二郎, 中井 志郎, 藤本 三喜夫, 山東 敬弘, 宮本 勝也, 嶋本 文雄
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1918-1923
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,女性.職員検診にて偶然,肝腫瘤を指摘され,当院に精査加療目的にて入院となった.腹部CT検査, MRI検査にて肝S5領域に最大径約5 cmの腫瘤を認め,開腹にて肝腫瘍指出術を施行した.病理診断は肝細胞腺腫を発生母地とした肝細胞癌であった.術前血液検査では肝炎ウイルスマーカー陰性, α-fetoprotein, PIVKA-II, CA19-9などの腫瘍マーカーは全て陰性であった.患者は術後2年7カ月を経過した現在も再発なく健在であるが,背景に危険因子を伴わない若年の肝細胞癌発症は稀であるが存在し,若年の肝腫瘤の診断においても常に悪性腫瘍を念頭におく必要がある.また本症例は肝細胞腺腫を発生母地とした肝細胞癌の発症という極めて珍しい形態をとっており,本邦での報告例もなく文献的考察を加えた.
  • 田中 千恵, 野崎 英樹, 小林 裕幸, 清水 稔, 秀村 和彦, 佐々 実穂
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1924-1928
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で上腹部痛のため入院した.精査にて総胆管結石症の診断であったが,この時のCT検査で後腹膜腔に8.0cm大の多房性腫瘤を指摘された. MRI上腫瘍はT1強調画像で等~高信号を示し, T2強調画像では高信号を示した.また,血清CA19-9の上昇を認めた.後腹膜腫瘍,副腎腫瘍,膵由来の悪性腫瘍を考え,手術を施行した.切除標本では,膵体部より背側に突出する柔らかい多房性腫瘤を認め,術後病理組織検査上嚢胞内壁は皮脂腺を含む重層扁平上皮で覆われ,リンパ組織の形成を多数認めた.さらに免疫染色を施行したところ重層扁平上皮部はCA19-9で陽性に染まり,膵リンパ上皮嚢胞と診断した.術後は経過良好で,血清CA19-9値は正常化した.
  • 亀田 久仁郎, 盛田 知幸, 野村 直人, 久保 章, 竹川 義則
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1929-1932
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性. 1998年8月1日に直腸癌の診断で低位前方切除術を施した(Ra, 2型, se, ly2, v1, n1 (+), stage IIIa).その後肺転移に対して2回の切除術を施行した.外来にて補助化学療法を続けていたがCEA値が97.3ng/mlまで漸増し, 2003年10月の腹部CTにて膵体部に3 cm大の腫瘤を認めた.原発性膵癌または転移性膵腫瘍の診断で12月2日に膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的検査の結果中分化型腺癌であったが,通常型膵管癌と違い膵管上皮が癌細胞に置換されている像が認められず,直腸癌原発巣の組織像と類似している点から直腸癌の膵転移と診断された.術後経過は良好でCEAは2.4ng/mlまで低下した.大腸癌の膵転移は稀であり,切除例の本邦報告例は検索しえた限りで自験例を含めて11例にすぎない.文献的考察を加えてこれを報告する.
  • 五十嵐 章, 小里 俊幸, 斉藤 孝晶, 伊藤 孝
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1933-1936
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    急性膵炎を契機に発見された早期乳頭部癌の1例を経験した.
    症例は67歳,女性.腹痛を主訴に来院,高アミラーゼ血症が認められ膵炎と診断した.腹部CT検査では主膵管の拡張があり, ERCP検査で十二指腸乳頭部に凹凸不整の腫瘤が認められた(生検では腺腫).造影所見では総胆管下部に狭窄があり,膵管内には陰影欠損と主膵管の拡張を認めた.手術は膵頭十二指腸切除術を行った.腫瘤は乳頭から下部総胆管に存在する1.5×0.8cm大の隆起性病変であり,粘膜に限局する早期乳頭部癌であった.
  • 青竹 利治, 田中 文恵, 藤井 秀則, 廣瀬 由紀, 山本 広幸, 松下 利雄, 小西 二三男
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1937-1941
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.糖尿病のコントロール不良にて前医に入院した.血液検査にてCA19-9が255.6U/ml,エラスターゼIが218ng/mlと上昇していた.腹部CT検査にて膵頭部の石灰化を伴うエンハンスされる腫瘍と主膵管の拡張を認めた.更に腹部超音波ならびにMRI検査の結果,膵頭部の神経内分泌腫瘍と膵体尾部癌が疑われた.当科に紹介入院更に精査を施行した.血中の膵,消化管ホルモンは正常値であり,腹部血管造影では膵頭部に腫瘍濃染を認め, ERCPで膵頭部で主膵管の圧排偏位を認めた.非機能性膵頭部内分泌腫瘍と膵体尾部癌の診断にて膵頭十二指腸切除術を施行した.膵頭部に約3 cmの境界明瞭な弾性硬の腫瘤と膵体尾部に約2 cmの浸潤性の腫瘤を認めた.病理診断は稀な膵頭部のendocrine tumorと膵体尾部のinvasive papilo-tubular adenocar-cinomaの併存例であった.
  • 松村 祥幸, 鈴木 康弘, 高橋 基夫, 狭間 一明, 蔵前 太郎, 加藤 紘之
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1942-1946
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,早期胃癌に併存した脾門部孤立性悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は69歳女性,健診の胃バリウム検査にて体中部に隆起性病変を指摘され,平成14年12月17日,当院消化器内科紹介受診となった.上部消化管内視鏡検査にて胃体部後壁にO-I型の腫瘍を認め,生検にて高分化型腺癌の診断であった.一方,造影CTにて脾門部に造影効果を認めない約2 cmの腫瘤を認めた.以上より平成15年1月22日,幽門側胃切除術D2,脾門部腫瘤摘出術を施行した.胃は病理組織診断では乳頭腺癌, sm2, n1, stage IB,脾門部腫瘤はnon-Hodgkin, diffuse large, B-cell typeとされた.術後施行したガリウムシンチグラフィーにて異常集積を認めず,脾門部孤立性節性悪性リンパ腫と診断され,内科にて化学療法を施行し現在再発無く経過中である.
  • 島 一郎, 濱津 隆之, 井上 博道, 磯 恭典, 磯本 浩晴, 白水 和雄
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1947-1951
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性で,腹痛,腹部腫瘤を主訴として受診, CT検査にて下行結腸より直腸に及ぶ腸管壁の肥厚と腸間膜の浮腫, CT値の上昇を伴う索状影と,注腸造影では同部に一致して鋸歯状腸管狭窄を認めた.画像診断より腸間膜脂肪織炎を疑い腹腔鏡下に観察,ゴム様弾性の腸間膜と結腸垂の黄色変性を認め,同部より採取した組織より腸間膜脂肪織炎と診断された.ステロイドとコルヒチン投与により2週間後には臨床症状と炎症反応の改善が認められたがその後再燃をきたし, 9カ月後には直腸よりS状結腸に縦走潰瘍を認め, 1年4カ月後に左半結腸切除を施行した.切除標本では虚血性腸炎併発による器質性狭窄と診断された.腸間膜脂肪織炎は予後良好なself-limitingな疾患とされているが,本症例のように保存的治療後に虚血性腸炎を併発し,腸管狭窄,手術を余儀なくされることもあり,慎重な経過観察が必要である.
  • 本島 柳司, 山本 義一, 高石 聡, 舟波 裕, 所 義治, 関 幸雄
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1952-1956
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    左下腹部違和感を主訴に来院した54歳女性に対し,腹部超音波・CTで観察された骨盤内の直径10cmの嚢胞性病変を卵巣腫瘍と診断の上,手術を施行した.術中所見では同病変は回腸腸間膜の嚢胞性疾患であり,切除標本からリンパ管腫との病理診断を得た.画像診断が比較的安定したと考えられる1985年以降で文献を検索すると,成人の腸間膜嚢胞は本邦では277例と比較的稀であり,このうち術前に同疾患を正診されていたのは48.4%に過ぎなかった.術前診断の正誤からみると,術前誤診例では腸間膜嚢胞に起因する合併症を51.1%に認め,さらに50.0%で緊急手術を必要とした.一方,正診例では合併症の発生は33.0%,緊急手術を必要とした症例も25.4%に過ぎなかった.腸間膜嚢胞は成人では比較的稀で,症状・病態が多彩である.また合併症には緊急性の高いものが多く,十分な検査を施行する時間的猶予が少ない事が術前診断をより困難にしていると思われる.
  • 安友 紀幸, 行部 洋, 森川 満
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1957-1960
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.高血圧症にて通院中,腹部CTにて左腎上部に径10cmの腫瘤を認めた.血液生化学的検査では尿中ノルアドレナリン,ドーパミンが軽度上昇しているほかは異常を認めなかった.画像では乏血性で石灰化を有する充実部分と嚢胞性部分の混在する腫瘤を認めた.副腎腫瘍との鑑別が困難で悪性も否定できないために手術を施行した.開腹すると被膜に包まれた暗赤色の腫瘤を認め左副腎と強固に癒着していた.左副腎を合併切除し摘出できた.摘出標本は10.5×8.5×7.5cmの褐色混濁液と血栓を有する被膜に包まれた腫瘍であった.病理組織所見は静脈性血管腫で若干の考察を加えて報告した.
  • 稲垣 伸洋, 石川 雅健, 曽我 幸弘, 須賀 弘泰, 中川 隆雄, 鈴木 忠
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1961-1965
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    65歳,女性.既往歴に高血圧,高脂血症.家族歴に特記事項なし. 10月初めごろから両下肢のむくみを自覚.内科にて精査中であった. 11月5日に当科紹介,入院となった.身長151cm,体重45kg,血圧144/76mmHg,脈拍74/min,体温37.0℃,腹部は緊満を認めるも疼痛は認めなかった.入院時血液検査では異常は認めなかった.腹部CT写真にて腹腔内に内部に一部不整な組織を伴う直径30cm大の巨大腫瘤を認めた.高分化型脂肪肉腫の診断にて11月7日開腹手術となった.腫瘍は胃,脾,左腎を圧排する形で左の横隔膜下から骨盤腔にまで達しており, S状結腸は右側に圧排されていたが,周囲との剥離は容易であった.標本は重量が8000g,病理組織学的にも高分化型脂肪肉腫と診断された.本症例は分化度が高分化であり,化学療法,放射線療法などの補助療法は行わず, 1年6カ月経過した現在も再発を認めず,経過良好である.
  • 平塚 孝宏, 西崎 隆, 山村 晋史, 小島 康知, 坂口 善久, 松坂 俊光
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1966-1969
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳女性.背部痛と左下腹部の膨隆を主訴に当院入院. CT, MRIにて左腎門部,大動脈間に境界明瞭な充実性の腫瘤を認めた.腫瘤は左腎動脈,左尿管を圧排し,左水腎症をきたしていた.後腹膜肉腫の診断にて摘出術施行.後腹膜下に直径16×17cm, 2300gの主腫瘍を認め,小腸間膜内, S状結腸間膜内に2つずつ衛星腫瘍を認めた.病理組織学的診断では主腫瘍および衛星腫瘍の大部分が硬化型の高分化型脂肪肉腫であった.小腸間膜内の衛星腫瘍に脱分化領域を認め,それに接して異所性の骨形成を認めた.
    術後9カ月現在,無再発生存中である.
  • 橋本 希, 萩池 昌信, 大谷 剛, 唐澤 幸彦, 臼杵 尚志, 前田 肇
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1970-1973
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳女性.平成3年右後腹膜腫瘍に対して腫瘍切除術を行い,骨外性骨肉腫と診断され同部に術後放射線療法(60Gy)を行った.平成7年2月・12月に肺転移に対し術前化学療法後,左肺上葉切除術と右肺中葉部分切除をそれぞれ施行された.平成14年1月,腹部CTで右骨盤内に長径6 cmの表面不整な腫瘤を認め手術目的で当科に入院した.腹部CT, MRI,血管造影で卵巣由来の腹腔内腫瘍が疑われたが,超音波検査では後腹膜または腸管由来の腫瘍と考えられ,婦人科腫瘍または消化管間葉系腫瘍を疑い手術を施行した.腫瘍は手拳大で硬く,右腸骨窩から発生しており,小腸・膀胱への浸潤が見られたためそれらを合併切除した.病理組織学的所見では平滑筋肉腫であり一次病変の骨肉腫とは異なっていた.放射線照射野に生じ数年以上の潜伏期を有する肉腫というCahnらの診断基準を満たし,放射線照射後肉腫と診断した.
  • 大平 真裕, 佐々木 翠, 先本 秀人, 小出 圭, 江藤 高陽, 高橋 信
    2004 年 65 巻 7 号 p. 1974-1979
    発行日: 2004/07/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    成人臍ヘルニアは適切な治療を行わないと重大な合併症を引き起こす危険性が高い.嵌頓をきたした臍ヘルニアの3症例を若干の文献的考察とともに報告する.症例1は63歳,女性.高度肥満で腸閉塞のため脱水もあり術翌日に肺梗塞にて死亡.症例2は46歳,女性.腸壊死のため腸切除を要した.症例3は61歳,女性.肝硬変・コントロール不能な腹水のため術後再発をきたした.本邦24例と当院9例の33症例で検討を行ったところ,高度肥満が12例(36.4%)で肝硬変・腹水が10例(30.3%)であった.術式は29例(87.9%)が単純閉鎖, 4例(12.1%)がメッシュを使用,腸切除は11例(33.3%)であった.成人臍ヘルニアの成因は腹水貯留や多産,高度肥満などによる腹圧上昇で考えられる.高度肥満群では腸切除率や術後合併症率が高く,術中術後管理に十分な注意が必要であると考えられる.
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