日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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67 巻, 11 号
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  • 平井 勝也
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2517-2527
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 田代 英哉, 増野 浩二郎, 藤井 及三, 坂田 久信
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2528-2532
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    進行乳癌患者に対するdocetaxel (DOC)の効果と安全性を検討した.対象は1999年10月から2004年4月の間に,初回治療としてDOC治療を受けた局所進行乳癌患者7例ならびに遠隔転移を有した進行乳癌患者12例であった. DOCは60mg/m2を3週毎に投与した. 19例中3例は完全効果, 14例は部分効果が得られ,奏効率は89%であった.腫瘍が50%以上減少するまでに要したDOCの投与回数(中央値)は1回であった. Grade3の有害事象は白血球数減少(21%)のみであった.進行乳癌初回治療としてのDOCの有効性が示唆された.
  • 近藤 竜一, 兵庫谷 章, 齋藤 学, 濱中 一敏, 砥石 政幸, 橋都 正洋, 牛山 俊樹, 椎名 隆之, 牧内 明子, 藏井 誠, 吉田 ...
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2533-2538
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    目的:最近10年間に当院で手術を施行した転移性肺腫瘍症例について検討した.方法: 1995年1月から2004年12月までに当院で手術を行った転移性肺腫瘍179例を対象とし,原発病巣別の特徴,予後不良因子について検討した.結果: Disease free intervalは悪性黒色腫,甲状腺癌,腎癌で長く,骨・軟部腫瘍,精巣腫瘍では短い傾向にあった.肺転移巣は片肺140例,両肺39例で,精巣腫瘍,甲状腺癌,軟部腫瘍では両肺転移症例が多かった.肺切除回数は骨・軟部腫瘍では複数回の肺切除症例が多かった.全体の5年生存率は肺切除後から47%であった.全体の解析では,転移巣10個以上,腫瘍径3cm以上,他臓器転移合併,非完全切除,術後補助療法を必要としたものが予後不良因子となり,骨腫瘍では,女性, DFI 12カ月未満,上・中葉の転移巣,他臓器転移合併が予後不良因子となった.軟部腫瘍では腫瘍径3cm以上が予後不良因子となった.結語:転移性肺腫瘍切除例は原発病巣により臨床的特徴があり,予後因子も原発病巣により異なることが判明した.
  • 塩澤 俊一, 土屋 玲, 金 達浩, 碓井 健文, 猪瀬 悟史, 会澤 雅樹, 増田 俊夫, 窪田 公一, 吉松 和彦, 勝部 隆男, 成高 ...
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2539-2543
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    切除不能の膵・胆道癌患者に対する病状説明のinformed consent(IC)に際し,家族の関与を積極的に認めるICの有用性を評価し,今後の問題点も検討した.過去7年間に筆者(S.S)が病状説明を行った切除不能の膵・胆道癌89例を対象に,まず家族に対し患者本人に病状を正しく告知することの重要性と支援体制の確立を求めた.この結果,最終的に73人(82%)の患者に病状説明, 41人(46%)に予後の説明を行った.説明後のうつ状態からの回復は比較的早かったが,家族の支援が消極的であったり,キーパーソンが不在である場合は回復が遅れる傾向にあった.我が国では,未だ患者の自己決定権の意識が希薄で,患者自身が意志決定する際にも家族の支援が必要である.今後は,患者の意志を尊重するという考えを個人情報保護法とともに社会一般に啓蒙し,周知させていく努力が必要と考えられる.
  • 田畑 智丈, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 広松 孝, 河合 清貴, 夏目 誠治, 青葉 太郎, 土屋 智敬, 松本 直基
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2544-2548
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    鼠径ヘルニア術後の創感染例に関しての検討を行った.当院では鼠径ヘルニアに対し局所麻酔でのMesh Plug法(以下MP) を第一選択の術式としており現在までに1,310例に施行した.この1,310例を対象とし検討を行ったところ, 6例 (0.46%) に術後感染を認め, 2例でprosthesis除去を要した.感染の頻度は両側同時手術例で有意に多かった (P<0.001). prosthesis除去を要した2例はいずれも遅発感染例で, prosthesis除去にいたるまでに非常に長期間の保存的治療が行われていた.一方prosthesis除去を要しなかった4例は比較的術後早期に感染を発症しており,感染発症から創の改善が認められるまでの期間は30日以内であった.以上より保存的治療にて30日以内に改善傾向のない例や遅発感染例ではprosthesis除去を要すると考えられた.また両側同時手術例では感染予防が重要な問題であると考えられた.
  • 清水 忠博, 清水 忠治, 清水 晶子, 中澤 功
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2549-2553
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺腫瘤を形成する肉芽腫性乳腺炎(granulomatous mastitis)は稀な疾患で,癌との鑑別が問題となることがある.今回われわれは画像診断上乳癌が疑われ,治療経過中結節性紅斑を併発し副腎皮質ホルモン療法が著効した肉芽腫性乳腺炎の1例を経験したので報告する.症例: 41歳,女性.既往歴:十二指腸潰瘍.鬱病.現病歴: 2002年8月20日より右乳房に張り感,圧痛を伴う腫瘤を自覚し8月22日当院受診.現症:右C領域に大きさ38×26mmの軽度圧痛を伴う弾性硬な腫瘤を認めた.超音波検査:右乳腺CE領域に一部境界不明瞭,不整形,内部エコー低な腫瘤を認めた. MMG:局所的非対称陰影(カテゴリー3)と診断. CT:右乳房CEに36×26mmの大きさで早期より造影効果を示し,辺縁に棘状構造を伴う悪性を否定できない腫瘤を認めた.経過:初診時乳腺穿刺吸引細胞診はClass III, 7日後圧痛増悪時はClass IIであった.画像診断上癌も否定できないため,確定診断の目的で生検施行.病理組織診断は肉芽腫性乳腺炎であった.また同組織を用いて行った細菌検査では,一般細菌,抗酸菌ともに陰性であった.抗生剤(CFDN),消炎剤の投与を行うも生検創および腫瘤の改善はみられなかった. 1カ月後両下肢に熱感,紅斑を伴う皮下結節が多発し結節性紅斑と診断.プレドニゾロン10mg/日より開始した.結節性紅斑は速やかに消失し,肉芽腫性乳腺炎も徐々に縮小した.
  • 松井 芳文, 浦島 哲郎, 太田 拓実, 谷口 徹志
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2554-2557
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    浸潤性篩状癌は, 1983年Pageらが最初に報告した稀な乳癌で予後は良好とされている.今回われわれはslow growingでかつ術前診断に難渋した浸潤性篩状癌の1例を経験したので報告する.症例は48歳,女性.平成10年頃より右乳房に3センチ大の腫瘤に気づくも放置.平成15年6月下旬,急激に増大したため当院受診し,右乳房C領域にDimplingを伴う5センチ大の弾性硬な腫瘤を認めた.超音波,マンモグラフィ, CT, MRIにて乳癌を疑い, Core needle biopsy (CNB)を2回施行するも確定診断には至らなかった.乳癌の疑いにて,平成15年8月,胸筋温存乳房切除術を施行.摘出標本において浸潤性篩状癌(混合型)と診断された.術後36カ月現在無再発生存中である.浸潤性篩状型乳癌はslow growingでかつ予後が良好であり,またCNB術前診断に難渋する可能性がある乳癌と考えられた.
  • 山本 俊介, 大野 喜代志, 山崎 芳郎, 弓場 健義, 籾山 卓哉, 大瀬 尚子
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2558-2562
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    降下性縦隔炎の2症例を報告する.症例1は58歳,女性.下咽頭膿瘍による炎症が頸部を介し縦隔へと波及した. CTで,ガス像を伴う低吸収域が,頸部から気管分岐部より4cm尾側の縦隔まで連続していて,壊死性縦隔炎と診断した.頸部切開と縦隔鏡で排膿し,治癒した.症例2は78歳,男性.頸胸部MRIで,頸部から縦隔にかけてT2強調画像で高信号域を認めたため,壊死性縦隔炎と診断した.引き続き頸部切開と縦隔鏡を施行したところ,頸部膿瘍は存在したが,縦隔には炎症だけで膿瘍は存在しなかった.頸部膿瘍のドレナージで治癒した.
    壊死性縦隔炎を, MRIにおける信号の高低性だけで診断するのは難しく,画像上のガス形成像や鏡面像の存在が診断の一助となる可能性が高い.また,頸部経路の縦隔鏡下ドレナージは,気管分岐部より尾側に存在する膿瘍に対しても有効である.
  • 山口 敏之, 井原 頌, 荻原 裕明, 高田 学, 小松 信男, 橋本 晋一
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2563-2566
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.間歇性跛行のため近医受診し, MRIで腹部大動脈瘤が認められ当院に紹介された.腹部CTでは腎動脈下から両側腸骨動脈に及ぶ最大径5.5cmの腹部大動脈瘤を認め,右総腸骨動脈および内外腸骨動脈は閉塞し,左外腸骨動脈にも狭窄を認めた.腹部CT検査約1カ月後の冠動脈造影検査時の大動脈造影で腎動脈分岐以下の腹部大動脈は完全閉塞し,側副血行路により両側総大腿動脈が造影された.以上の検査により血栓閉塞を伴う腹部大動脈瘤と診断しY型人工血管置換手術を行った.術後経過は概ね良好で術後16日目で退院した.
  • 舟木 成樹, 阿部 裕之, 鈴木 敬麿
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2567-2569
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Small aorta syndrome(SAS)による腹部大動脈閉塞の1例を経験した.症例は57歳の女性で,間歇性跛行を主訴に来院した.腹部CTでは,腹部大動脈の外径は下腸間膜動脈分岐直下で12mmと細く,動脈硬化を思わせる石灰化などは認めなかった.大動脈・腰椎比率は24%であった. MRA (magnetic resonance angiography)では,腹部大動脈は下腸間膜動脈分岐部末梢より両側総腸骨動脈まで完全閉塞しており,側副血行路を介して末梢側が造影されていた. SASによる腹部大動脈閉塞と診断し, 14×7mmのknitted Dacron Y型人工血管にて血行再建術を行った.術後1年を経過した現在,バイパスの開存は良好であるが, SASはバイパスの開存率が低いとされており,長期にわたる厳密な経過観察が必要である.
  • 原田 昌和, 岡 和則, 池田 宜孝, 坂野 尚, 河野 和明, 加藤 智栄
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2570-2573
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.左鼠径ヘルニアの診断で他科より紹介となる.この際,腹部拍動性腫瘤を指摘され, CTにて腹部大動脈瘤(最大径98mm)および右総腸骨動脈瘤を認め手術目的で当科入院となった. CTでは右腎はなく,当初は右腎萎縮による代償性左腎肥大と診断された.しかし3D-CTでも右腎動脈は描出されず,またDIPでは左側に腎孟を上下に認め,下位腎孟からの尿管は対側に交叉していたため,交叉性異所性融合腎と診断された.手術所見として右腎動脈は下腸間膜動脈直上の大動脈前面より認められたが,その他の奇形腎動脈は認められなかった.また右尿管は総腸骨動脈前面を交叉していた.このため下腸間膜動脈下にて大動脈を遮断し,人工血管置換術を行った.術後,血尿はなく血液生化学検査でも特に異常を認めなかった.また造影CTでも明らかな腎梗塞は認められず,術後15日目に軽快退院した.
  • 森藤 雅彦, 中井 志郎, 藤本 三喜夫, 宮本 勝也, 横山 雄二郎, 中村 浩之
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2574-2578
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の女性.平成17年1月,左乳癌にて乳房部分切除術およびsentinel node biopsy (SNB)とsamplingを受けた.術後は化学療法と放射線治療を施行し,ひきつづきホルモン療法を行っていた.放射線照射後5カ月経過後から発熱や咳漱を認め,胸部単純X線写真にて左中肺野に浸潤影を認めた.抗生剤投与にても改善せず,炎症所見は認めるものの,感染所見がみられないためBronchiolitis Obliterans Organizing Pneumonia (BOOP) を疑った.ステロイド投与を施行したところ,著明な改善を認め,外来治療となったが,ステロイド経口摂取治療漸減中に,右肺野に浸潤影を認め,再度ステロイドを増量し改善が得られ治癒した.乳癌術後放射線治療後にはBOOPを呈することがあり,外科医としても注意して認識すべき合併症と思われた.
  • 酒井 章次, 青木 輝浩, 久 晃生, 橋本 光正, 細田 洋一郎, 清水 健
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2579-2583
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.右気胸にて開胸手術後7年目に,右肺癌を切除した.切除後4日目から呼吸困難の訴えあり, CXP, CT上,間質性浸潤影が出現,術後14日目からステロイドパルス療法を施行した.呼吸困難は軽減したが,術後33日目に対側肺の気胸が発生,直ちに胸腔ドレーンを挿入し,術後53日目に空気漏れはなくなった.術後90日目に退院し,現在,肺癌切除から約1年を経過し,在宅酸素療法を施行しながら,気胸,肺癌とも再発なく存命中である.
  • 十倉 正朗, 川崎 繁
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2584-2588
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    p-Stage IV a進行胸腺癌(squamous cell carcinoma)の予後は悪いが,われわれは手術と化学療法にて6年余りの長期生存をしている症例を経験しているので報告する.腫瘍は上前縦隔に存在し,静脈浸潤,左胸膜播種,縦隔リンパ節転移,肺直接浸潤を伴っていた.確認できる腫瘤の摘出,縦隔リンパ節郭清と術後残存腫瘍に対し化学療法を行った.画像上腫瘤は消失していたが,術後3年余後に左胸腔内,左腋窩リンパ節を中心に再増殖した.化学療法を開始し治療が奏効した.腋窩リンパ節は消失,胸腔内腫瘍も著明に縮小した.以後外来化学療法を続行,腫瘍は全体として増加傾向はあるものの左胸腔内に限局した状態である.発見以来6年余りの現在,担癌状態で生存している.一方, FDG-PETは同胸腺癌では胸部CT検査と遜色ない画像が得られ,腫瘍かどうかの判断,遠隔転移の有無,病期等の診断に役立つと考えられた.
  • 椎名 隆之, 細田 裕
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2589-2594
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性. 2005年4月末期腎不全にて持続腹膜透析(CAPD)導入開始となった.翌日より呼吸困難を訴え,胸部X線にて右大量胸水を認めた.胸腔穿刺にて1.5Lの排液を認め,胸水の糖濃度が血糖よりも高値であることから透析液の胸腔内流入,横隔膜交通症と診断された.胸腔鏡下(video assisted thoracoscopic surgery: VATS)横隔膜修復術を施行した.右胸腔より横隔膜を確認中にインジコカルミンを混入した透析液を腹腔に注入すると,腱中心やや外側に透析液の噴水上に流出する痩孔部を確認,小開胸を追加して瘻孔部を直接縫合閉鎖し,縫合部をネオペール®とフィブリン糊で補強した.術後7日目よりCAPDを再開するが,右胸水貯留は認めず.現在,在宅でCAPDを施行し,術後15カ月が経過するが再発を認めていない.
  • 和田 幸之, 入江 秀明, 弘中 克治
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2595-2598
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,発症経過が非常に稀な鋭的外傷性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は68歳,女性.草刈器による左胸腹部裂傷,腸管脱出にて当院に搬送された.左側胸腹部は鋭的に受傷しており,左肋間から胃管が脱出していたにも拘わらず気胸を認めなかった.胸腹壁損傷,胃管脱出を伴う外傷性横隔膜ヘルニアの診断にて緊急手術施行した.胃管は横隔膜を貫通し経胸腔的に肋間より10cm大も脱出していたが,肺損傷,気胸とも認められなかった.術後,特に合併症認めず軽快した.肋間より胃管が脱出した開放性胸壁損傷を伴った外傷性横隔膜ヘルニアであったにも拘わらず気胸を合併していなかった,非常に稀な症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 南 一仁, 吉田 和弘, 津谷 康大, 鈴木 崇久, 宮原 栄治, 亀田 彰
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2599-2603
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    A型胃炎を伴う多発性胃カルチノイド症例を経験した.胃底腺領域に5~10mm径の多発する腫瘍を認めた. Total biopsy目的で内視鏡的粘膜切除術が施行され,病理組織学的に胃カルチノイドと診断された.抗胃壁細胞抗体陽性,胃底腺領域の萎縮,無酸症,および2次性と考えられる高ガストリン血症を認めた.以上の所見より, A型胃炎に伴う多発性胃カルチノイドと診断した.治療は血中ガストリン値を制御する目的で幽門側胃切除を施行した.血中ガストリン値は,術後12時間以内に正常化し,その後は正常範囲内にて推移した.残胃内に遺残した腫瘍は, 6カ月後には消退し, 3年経過した現在も再燃の徴候なく経過している.これまでは同症例に対して,生物学的悪性度を考慮することなく,胃全摘術が適応されることが多かった.しかし,幽門側胃切除術で十分な治療効果が得られることが示唆された.
  • 徳永 正則, 大山 繁和, 比企 直樹, 福永 哲, 瀬戸 泰之, 山口 俊晴
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2604-2608
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な, Adachi VI型の血管走行破格を伴う胃癌手術を5例経験したので報告する. Adachi分類は腹腔動脈の分岐様式の分類で, VI型28群に分類される. Adachi VI型は膵上縁,門脈前面に総肝動脈がみられない型で,頻度は約2%とされる. Adachi VI型に対する胃癌手術では, No.8aリンパ節郭清の際に総肝動脈を認識することができず,しばしば問題となる.われわれは,進行胃癌症例においては,術前にMDCT, 3D-amgio-graphyを積極的に行い,詳細な血管走行の把握に努めている.その結果,過去20カ月間で経験したAdachi VI型の症例全てで術前診断が可能であり, D2郭清を伴う胃癌手術を安全に遂行可能であった. Adachi VI型をはじめとする血管走行の破格は少なからず存在し,術前に診断することで,術中合併症を回避できる可能性がある.また,術前に詳細な血管走行を理解する上で, MDCT, 3D-angiographyは極めて有用であると考えられた.
  • 塩盛 建二, 林田 和之, 落合 隆志
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2609-2612
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.右季肋部痛,発熱あり,近医で黄疸を指摘され精査加療目的で当院紹介入院となった.入院時悪寒戦慄を伴った39°Cの発熱あり,眼球結膜に高度の黄染を認めた.入院時検査でT-Bil 6.2mg/dlと黄疸を認め, ALP, γ-GTP, AST, ALT, LDH, WBC, CRPの値も上昇していた.食事摂取に伴って惹起される傍乳頭憩室による胆汁の排泄障害が本症例の病態の原因と考え, Lemmel症候群と診断した.外科手術の適応と判断し, 6月13日手術を施行した. Kocherの授動術を行い,胆嚢摘出術・乳頭形成術を行った.幽門輪を温存し球部で十二指腸を切離し, Treitz靱帯より20cm肛門側の空腸で, Roux-en-Y再建を行い,幽門形成術を施行した.術後,吻合部潰瘍を併発したが,保存的に改善し退院となった. Lemmel症候群は悪性ではないため,術後のQOLを考慮した手術を選択する必要があると考えられる.
  • 玉森 豊, 西野 裕二, 西口 幸雄, 山田 靖哉, 李 龍彦, 平川 弘聖
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2613-2616
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵胆管分離開口に合併したVater乳頭部癌の1手術例を経験したので報告する.患者は67歳,女性.心窩部痛および悪心にて受診.血液検査にて白血球増多,血清膵アミラーゼ値の上昇があり,腹部超音波, CTにて膵のびまん性腫大を認めたため,急性膵炎の診断で入院となった.十二指腸内視鏡およびERCPにて,膵胆管分離開口,乳頭部粘膜の腫瘍性増殖を認めた.生検の結果papillary adenocarcinomaであったため,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍はVater乳頭部粘膜内に限局し,リンパ節転移を認めなかった.術後現在まで再発の徴候は認めない.膵胆管分離開口は比較的稀な十二指腸乳頭部開口形式のバリエーションである.通常は無症状で臨床的に問題となることは少ないが,本症例は乳頭部癌により膵炎を併発し発見しえた.
  • 神田 光郎, 三輪 高也, 武内 有城, 福岡 伴樹, 砂川 理三郎
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2617-2620
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    稀な小腸アニサキス症による絞扼性イレウスに対して,緊急手術を行った2症例を経験した.症例1は37歳,女性.心窩部痛と嘔吐を主訴に当院を受診した.症例2は57歳,男性.下腹部痛を主訴に当院を受診した.ともに腹部CTにて絞扼性イレウスが疑われ,緊急手術を行った.症例1の術中所見は,回腸壁に炎症を伴う硬結を認め,これが大網と癒着しバンドを形成し,同部に小腸が嵌入し絞掘されていた.症例2は,虫垂炎手術後の癒着により生じたバンド内に回腸が嵌入し絞扼されており,嵌入回腸壁の一部に硬結を認め,これが先進部となっていた.術後病理にて, 2例とも結節内にアニサキス虫体を認め,小腸アニサキス症による絞扼性イレウスと診断した.
  • 坂東 敬介, 山本 康弘, 紀野 泰久, 浅井 慶子, 河野 透, 葛西 眞一
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2621-2624
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸管子宮内膜症は比較的稀な疾患であるが,今回イレウスで発見された回腸子宮内膜症の1例を経験したので報告する.症例は40歳,女性.腹痛を主訴に近医を受診,イレウスを繰り返し,症状が改善しないため当科紹介となった.減圧後イレウス管造影にて回腸末端近くに狭窄を認め,腹腔鏡にて観察したところ回腸末端に2カ所の狭窄病変を認め,回腸部分切除を施行した.病理組織学的に回腸子宮内膜症と診断された.開腹歴のない成熟期の女性では本疾患も鑑別疾患として考慮する必要があると思われた.
  • 古澤 徳彦, 池野 龍雄, 浦川 雅己, 花崎 和弘, 宮本 英雄, 市川 英幸, 川口 研二
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2625-2629
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年,慢性関節リウマチ(RA)の治療に早期からメトトレキセート(MTX)を投与する症例が増加している.しかし,一部の症例でメトトレキセート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)の発生が認められている.今回, RAに対するMTX治療中に発症した悪性リンパ腫による回腸穿孔の1例を経験したので報告する.症例は63歳,男性. 1976年にRAを発症し, 2000年9月からMTXの投与が開始された. 2005年12月下旬,腹痛を主訴に救急外来を受診し入院.腹部CTで,腹腔内遊離ガス像を認め,消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.回腸に浮腫状の変化と穿孔を認めたため,回盲部切除術を施行した.組織病理学的にはEBER1陽性のdiffuse large B cell typeの悪性リンパ腫と診断された. MTX-LPDの一部はMTXの投与中止により改善が期待でき,本例も術後にMTX投与を中止し6カ月が経過したが,現在,再発徴候を認めない.
  • 安岡 利恵, 米花 正智, 藤木 博, 森田 修司, 満尾 学, 川端 健二, 門谷 洋一
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2630-2634
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性. 20歳時,卵巣癒着症および虫垂切除術の手術歴あり.夕食後より下腹部痛・嘔吐が出現し受診.腹部膨満と下腹部を中心に圧痛を認めた.腹部CT所見で,右下腹部の腹腔内腫瘤が関与した絞扼性イレウスと診断し同日緊急手術を施行した.手術所見は,小腸間膜と腫瘤との癒着を基点に小腸が捻転し絞扼していた.病理組織学的に,この腫瘤はガーゼによる腹腔内異物肉芽腫であった.異物肉芽腫の診断には超音波とCT・MRIが有用だといわれるが,典型的な画像を示すものは少ないため診断に苦慮することもある.また無症状の場合もあれば,稀に敗血症,イレウス,腸穿孔を起こすことがあるため注意を要する.本例は術後59年で絞扼性イレウスとして発症しており,確認しえたところでは術後期間が本邦最長例であるので,文献的考察を加えこれを報告する.
  • 目黒 誠, 奥 雅志, 伊東 竜哉, 高島 健, 佐藤 卓, 平田 公一
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2635-2639
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の女性で, 2005年3月下旬に右下腹部痛で入院した.造影CT検査にて小腸軸捻転を疑う所見と骨盤内に径10cmを超える腫瘍性病変がみられた.この腫瘍は卵巣腫瘍などとの鑑別を要したが上腸間膜動脈 (SMA) からの造影効果を認め,約1カ月間の経過で増大傾向がみられたことから小腸由来の悪性腫瘍の診断で手術となった. SMAを軸に時計回りに540度の小腸捻転を認めた.捻転小腸に癒着や血流障害はなく容易に整復できた.腫瘍は,回腸末端部より約lOOcm口側の腸間膜付着部反対側の腸管壁に由来するものであった.小腸部分切除とともに腫瘍を摘出した.術後病理検査にて小腸GISTと診断された.腫瘍径は14×10cmと大きく,高リスク群に分類されたが,明らかな転移性病変はなく,肉眼的に根治性が得られたため,術後補助化学療法は行っていない.検索した限りでは,絞扼を認めない小腸軸捻転を伴った骨盤内小腸GISTの報告は本症例が初めてである.
  • 田代 健一, 渡辺 正光, 向井 英晴, 市川 知代子, 池上 雅博, 坂口 友次朗
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2640-2645
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,女性.左下腹部痛を主訴に外来受診,腸閉塞の診断にて入院となった.腹部CT検査にて骨盤内に不整形の腫瘤が認められたが,注腸検査ではS状結腸の圧排のみであった. 2005年9月6日,腹腔内腫瘤の診断にて手術施行した.約7cm大の小腸腫瘍が左骨盤腹膜に浸潤しており小腸部分切除を行った.右横隔膜下に腹膜播種も認めた.術後約3週間で胸膜転移,胸水,肝転移,腹膜播種が急激に増悪した.病理学的に小腸小細胞癌と診断されたため, 10月4日よりCDDP (60mg/m2)+CPT-11(60mg/m2) 療法を開始した. 2コース終了後腫瘍の縮小と全身状態の改善が認められた.しかし, 4コース終了後にインフルエンザに感染し化学療法を中止したところ急激な腫瘍の増大が認められ2006年2月27日永眠された.小腸小細胞癌に対しCDDP+CPT-11療法が延命に寄与する可能性が示唆されたため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 松本 匡史, 成原 健太郎, 真田 裕, 山口 真彦
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2646-2649
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.穿孔性腹膜炎術後に腹壁瘢痕ヘルニアを合併し,手術目的にて入院となった.ヘルニア手術の際,腹腔内を検索したところ,若年時の腸閉塞手術により形成された盲腸の盲嚢腔に異物を触知したため,同部より腸結石を7個採取した.赤外線スペクトロフォトメトリーによる結石分析では, 7個の腸石すべてが真性腸石であり,そのうち一つに歯科補綴物を核とする真性腸結石が含まれていた.真性腸石は,自験例を含め本邦では43報告例に過ぎず,比較的稀な疾患であり,さらに外来異物を核とするものは自験例を含め2例だけである.本例は虫垂炎術後に回腸末端部の側々吻合を伴う腸閉塞手術を既往に有し,盲嚢化した盲腸に誤飲した歯科補綴物が迷入し,それを核に真性腸石が形成されたと考えられた.
  • 墨 誠, 高橋 直人, 阿部 光文, 岩渕 秀一, 矢永 勝彦
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2650-2654
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.右鼠径部腫瘤にて当院受診し,鼠径ヘルニアの診断で手術を施行した.手術時腹水を認めたため悪性腫瘍を疑い,術後腹部CTを施行した.下行結腸から盲腸に腸管壁が全周性に肥厚し,その外側近傍に径10cm程の,空気を含んだ腫瘤像を認めたため消化管穿孔を伴う腫瘍が疑われた.開腹時,右傍結腸溝に弾性軟の腫瘍を認め,腫瘍内は便汁で,穿孔部は盲腸であった.盲腸から発生した腫瘍と判断し結腸右半切除術を施行した.病理組織学的には小形異型リンパ球が腸管壁全層にびまん性に浸潤し, CD3陽性, CD20およびCD79αは陰性であるため, T細胞性悪性リンパ腫と診断された.大腸原発T細胞性悪性リンパ腫症例は消化管リンパ腫の中でも稀なため文献的考察を加え報告する.
  • 本田 晴康, 津澤 豊一, 川田 崇雄, 熊谷 嘉隆
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2655-2659
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.感冒罹患時に右下腹部痛出現,感冒治癒後も腹痛続くため受診.同部に圧痛あるが腹膜刺激症状なく,腫瘤触知せず. WBC 15,500/mm3, CRP 24.4mg/dl. 腹部CTで充実性部分を有する嚢胞様腫瘤が認められ,虫垂膿瘍の診断で手術施行.虫垂原発の嚢状腫瘍で回腸,膀胱と強固に癒着,腫瘍の浸潤と判断した.虫垂根部は正常.虫垂切除,回腸部分切除施行,膀胱とは鋭的に剥離した.病理診断は低分化腺癌,深達度ss, 回腸,膀胱との癒着は炎症性であった.追加切除を勧めたが患者が希望せず. 14カ月後のCTで右下腹部に腫瘤が2個認められ,局所再発と診断し再手術施行.上行結腸の外側と腸間膜内に4cm大の腫瘤あり.結腸右半切除を施行し,低分化腺癌であった.再手術後5年2カ月現在,無再発生存中である.虫垂原発の低分化腺癌は稀で予後不良だが,再発巣を含む結腸右半切除で良好に経過した症例を経験したので,診断治療上の反省点もふまえ報告する.
  • 前田 佳彦, 川原 洋一郎, 鈴木 一則, 木村 章彦, 竹内 勤
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2660-2664
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部鈍的外傷による腸管損傷は穿孔,断裂,出血など急性の発症がほとんどであるが,稀に遅発性に腸管狭窄をきたすことがある.今回われわれは,中でも稀とされる遅発性大腸狭窄を経験した.症例は77歳,女性.移動式階段にて作業中に転落.階段が体幹に落下し,胸腹部を強打,当院へ救急搬送された.臓器損傷,消化管穿孔の所見は認めず,保存的加療にて軽快し,受傷後31日目に退院.その後, 51日目に腸閉塞様症状が出現し,再入院となった.諸検査にて横行結腸肝彎曲寄りに高度の狭窄を認め,遅発性大腸狭窄と診断し,受傷後69日目に開腹手術を行った.右上腹部に右側結腸,腸間膜,大網などが一塊となった炎症性の腫瘤を形成し,横行結腸に高度な狭窄を呈していたため,結腸部分切除術を施行した.組織学的には腸管壁全層の肉芽形成,異物巨細胞の出現も認めており,穿通の存在も示唆された.腹部外傷の診療の際は本疾患も念頭に置く必要があると思われた.
  • 宮原 利行, 木山 茂, 松尾 浩, 関野 考史, 山田 卓也, 竹村 博文
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2665-2669
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    α-fetoprotein (以下AFP) は,原発性肝細胞癌,悪性奇形腫の有力な腫瘍マーカーであるが,胃癌・膵癌・十二指腸癌・大腸癌の消化器癌でも高値を示すことがある.その多くは前腸由来臓器の癌であり,後腸由来の大腸癌で高値を示すことは極めて稀である.今回,AFP産生S状結腸癌を経験したので報告する.症例は58歳,男性.主訴は便通異常と血便.平成16年10月に便通異常と血便を自覚したため,近医で注腸検査および大腸内視鏡検査を施行され, S状結腸癌と診断されたため紹介受診した.入院時血液検査で, AFP: 873.8ng/mlと高値であった.腹部CTで下腸間膜静脈幹リンパ節腫脹を認めたが,肝転移などは認めず, S状結腸癌 (cSS, cN2, cP0, cH0, cM0 clinical stage IIIb) の診断でS状結腸切除術を施行した.病理標本は, 2型の中分化腺癌でpSS, ly2, v1, pN2, pathological stage IIIb, AFP染色陽性であり,術後AFPは正常化した.術後合併症なく退院し,現在,術後14カ月間,無再発生存中である.
  • 鈴村 和大, 藤元 治朗
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2670-2674
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.以前より多発性肝嚢胞を指摘されていた.原因不明の発熱を主訴に当院入院.入院後,心窩部痛が出現し発熱は持続,腹部CTにて肝外側区域の嚢胞の増大と内部の鏡面像を認めた.腹部超音波では同部位の嚢胞内にdebris像を認めた.これらより,肝外側区域の感染性肝嚢胞を疑い,抗生物質投与を行ったが軽快せず,超音波ガイド下に肝嚢胞ドレナージ術を施行した.黄褐色の膿汁が約40ml吸引され,ドレナージ後発熱は消失し心窩部痛も軽減した.肝嚢胞再発防止を目的として, 1週間の間隔をおき2回にわたリエタノール注入療法を施行した後,ドレナージチューブを抜去した.その後感染の再発を認めていない.感染性肝嚢胞の報告は極めて稀であるが,経皮経肝ドレナージおよびエタノール注入が有用であった1例を経験したので報告する.
  • 小林 大介, 本田 一郎, 金子 猛, 加藤 剛, 守 正浩
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2675-2678
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,女性.既往歴に, 28歳時胃潰瘍にて幽門側胃切除術を, 76歳時胆石症にて胆嚢摘出術を施行されていた. 2005年7月,上腹部痛を主訴に来院し,総胆管結石,胆管炎の診断で入院となった. Billroth II法再建胃であったがERCPを施行できた.総胆管は術後の影響により屈曲しており,胆汁うっ滞の原因になったものと思われ,また,直径1cm前後の複数の結石を認めた.しかし採石処置は不可能であり,姑息的に内視鏡下にて逆行性に胆管ドレナージチューブを留置した.その後胆管炎は軽快したが, 8月にドレナージチューブが脱落し胆管炎が再燃したため,根治手術を行うこととした.手術は総胆管を切開し採石した後,輸入脚の空腸を切離し遊離させ端側吻合による胆管空腸吻合を行った.総胆管原発結石に対しては胆道ドレナージ術を付加する必要があり,今回はBillroth II法再建後の総胆管結石に対し胆管空腸吻合術を施行した1例を経験したので報告する.
  • 山田 美千代, 関戸 仁, 上田 倫夫, 田中 邦哉, 渡會 伸治, 嶋田 紘
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2679-2682
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢摘出術の術後胆汁漏の原因として副肝管および異所性肝内胆管末梢枝の損傷などが報告されている.今回腹腔鏡下胆嚢摘出術の際に確認された胆汁漏に対する検索でLuschka管を確認できた1例を経験したので報告する.症例は61歳,男性.胆嚢結石に対し腹腔鏡下胆嚢摘出術施行.術後麻酔からの覚醒時にドレーンから胆汁様排液を認めた.再気腹し検索したところ胆嚢管断端や総胆管からの胆汁瘻は認めずLuschka管を認めた.開口部をクリップを用いて閉鎖した.胆嚢摘出の際,手術は胆嚢側に沿って行い,索状組織がある場合にはクリップをかけて切離することが肝要であり,異所性胆管たとえばLuschka管,副肝管,異所性肝内胆管末梢枝などの存在も念頭に置く必要があると考えられた.
  • 平下 禎二郎, 中島 公洋
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2683-2686
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.腹痛を主訴に来院し,血中アミラーゼ上昇を認め,腹部CTにて胆嚢結石,総胆管結石,膵体尾部の軽度腫大を認め,胆石膵炎と診断した.膵炎改善後に胆嚢摘出術,総胆管結石切石術, Cチューブドレナージ術を施行した.術中胆道鏡や胆管造影では異常所見は認めなかった. Cチューブからの排液は約1,000ml/dayと多く,色調は薄い黄色であった. CチューブをクランプするとWinslow孔のドレーンから胆汁のリークを認めたため, Cチューブを再開放した.胆汁中アミラーゼは68,550IU/Lと高値であり, Cチューブ造影にて明らかな膵胆管合流異常は認めないものの膵管が造影され,膵胆管合流異常のない膵液胆道逆流現象の存在が考えられた.術後23日目にCチューブを抜去し,その後は経過良好であった.また,病理組織学的検査にて胆嚢に悪性所見は認めなかった.
  • 有本 裕一, 金宮 義哲, 大谷 博, 岩内 武彦, 大田 浩平, 細野 俊介
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2687-2691
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術後,約1カ月にて発症した総胆管狭窄による閉塞性黄疸に対して, PTCDによる内瘻化が奏効した症例を経験した.患者は42歳の女性で,胆石症に対する腹腔鏡下胆嚢摘出術後約1カ月頃,嘔気,食欲不振を主訴に来院.血液検査にて軽度の黄疸と肝機能障害を認め入院.腹部MRIにて総胆管三管合流部に著明な狭窄を認めたため, PTCDを施行しチューブ内瘻を行った.チューブ内瘻後,約1カ月で狭窄部の軽度改善を認め,約4カ月で狭窄部はほぼ完全に改善した.以後約1年間,再発なく順調に経過している.
    胆管狭窄の原因として,胆管損傷,クリップによる狭窄は考えにくく,確証はないが,胆管壁の血流障害による続発性硬化性胆管炎,または胆管断端神経腫が原因ではないかと推測している.
  • 坂本 和彦, 岡田 敏正, 為佐 卓夫, 岡 正朗, 権藤 俊一
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2692-2696
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,男性.検診時肝腫瘤を指摘され精査加療目的で入院となった.腹部超音波検査で肝外側区域に9cm大の高エコーな腫瘍を認め,その間隙には低エコーな領域が介在していた.腹部造影CT検査で境界明瞭な充実性腫瘤として描出され超音波と同様に腫瘍内部に低吸収域が介在していた.造影早期相で腫瘍実質は淡く造影され晩期相でwash outされた.左肝管内に腫瘍性病変が進展しており胆管内腫瘍栓と考えられた.非典型的肝細胞癌の術前診断で肝左葉切除術を施行した.腫瘍は外側区域下面より肝外に発育し胃体部に浸潤を認め,胃壁を一部合併切除した.術中胆道造影で胆管内腫瘍栓の進展を確認した後胆管を切離し,断端陰性を確認した.病理組織検査で腫瘍は乳頭状に増生した腺癌で,間隙には粘液が存在し,腫瘍の一部は粘液癌の像を呈していた.術後3カ月で肝内再発をきたし,術後1年5カ月で死亡した.
  • 河合 雅彦, 國枝 克行, 太田 博彰, 伊藤 元博, 福井 貴巳, 加藤 浩樹
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2697-2702
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,男性. 2001年より急性膵炎を反復し,近医にて加療中, 2003年ERCPを施行.膵管癒合不全疑いにて当院消化器科へ紹介.絶飲食で症状改善し,経過観察となった. 2004年11月再度腹痛あり,他院にてMRCP・CTにて膵体尾部主膵管の著明な拡張と膵頭部石灰化を認め,当院消化器科へ再紹介. ERPを施行するも主乳頭からの造影で腹側膵管は屈曲途絶していた.副乳頭からの造影は不成功.内視鏡的治療困難と判断され外科紹介. 2005年2月4日十二指腸温存膵頭切除術を施行した.病理組織検査では腹側膵・背側膵ともに線維増生があり,膵管癒合不全に伴う慢性膵炎と診断された.術後一時的な十二指腸通過障害がみられたが,改善して術後第37病日全治退院した.膵管癒合不全の治療法として本例のごとき,腹側・背側慢性膵炎合併例は機能温存を考慮した十二指腸温存膵頭切除術のよい適応と考えられた.
  • 尾山 勝信, 山本 精一, 加治 正英, 前田 基一, 薮下 和久, 小西 孝司
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2703-2706
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.膵癌に対する膵頭十二指腸切除術後で,局所再発は認めるものの外来通院加療中であった.術後約1年目に意識障害が急速に進行し,昏睡状態で救急受診した.血液・一般生化学検査では異常を認めず,頭部CT上も異常所見は認められなかった.さらに検索をすすめると血中アンモニアが高値を示していた.腹部造影CTでは門脈周囲の局所再発に伴い門脈閉塞に陥っており,遠肝性の側副路の形成が認められた.門派-体循環脳症(PSE)と診断し,分枝鎖アミノ酸製剤・ラクツロースの投与を行い,意識障害はすみやかに改善した.膵癌に伴うPSEの報告は稀であり,本症例では膵癌手術時の郭清により求肝性側副路が遮断されていたことも一因と考えられた.膵癌術後患者に意識障害が生じた場合, PSE併発の可能性も念頭に置き診察にあたる必要があると考えられた.
  • 深見 保之, 寺崎 正起, 坂口 憲史, 村田 透, 大久保 雅之, 西前 香寿
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2707-2711
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.検診目的の上部消化管内視鏡検査で胃の粘膜下腫瘍様の所見を認め,当院を紹介受診した.腹部造影CT, 3DCTにて径25mmの脾動脈瘤と診断し, Interlocking detachable coil (IDC®, Boston Scientific) を使用し塞栓術を施行した.マイクロカテーテルを脾動脈瘤内に進め,コイルによる瘤のpackingを行った.塞栓術後コイルの逸脱はなく,脾機能も温存され有効な治療法であった.手術に比べ低侵襲で安全に施行可能であるため症例によっては第一選択の治療法と考えられた.
  • 木村 真樹, 山田 卓也, 木山 茂, 関野 考史, 松尾 浩, 竹村 博文
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2712-2716
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1は40歳台の女性.主訴は検診での血液検査異常. CA19-9高値. CTで膵尾部に辺縁と内部が造影される嚢胞性腫瘍を認めた. MRIでは内部に造影T1強調像で高信号, T2強調像で膵実質性部分と同等の信号の壁在結節を認めた.膵粘液性嚢胞腫瘍と診断し,手術を施行したところ類上皮腫を合併した膵内副脾であった.症例2は50歳台の男性.主訴は検診の超音波検査での膵腫瘤.単純CTで周囲に均一な軟部濃度を有する嚢胞性腫瘍を認め, MRIで3mm大の壁在結節を認めた. Dynamic studyで壁在結節の濃染パターンは脾臓と酷似しSPIO造影で信号低下あり膵内副脾に合併した類上皮腫と考え経過観察中である. SPIO造影剤は網内系細胞に採取され正常脾の信号を低下させ副脾の診断が可能となる. dynamic studyとSPIO MRIで膵内副脾に合併した類上皮腫の術前診断が可能である.
  • 竹林 正孝, 豊田 暢彦, 野坂 仁愛, 若月 俊郎, 鎌迫 陽, 谷田 理
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2717-2722
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは腎癌手術後に胆嚢転移をきたした2症例を経験したので報告する.症例1は76歳,男性. 7年前左腎癌で左腎摘術を受けた.今回胃癌と胆嚢のポリポイド状腫瘍と診断され,胃亜全摘術および胆嚢摘出術を施行された.胆嚢腫瘍は組織学的には明細胞癌で,胆嚢粘膜下に認められ,腎癌の組織と同様のため腎癌の胆嚢転移と診断された.症例2は60歳,女性. 8年前に左腎癌で左腎摘術を施行された.右季肋部痛を主訴として精査の結果肝転移を伴う胆嚢癌と診断され,胆嚢摘出術,肝床切除術,肝腫瘍核出術を施行された.胆嚢腫瘍は表面不整な隆起性の腫瘍で肝床部にも浸潤していた.腫瘍細胞は主として間質内を中心に増殖しており,組織学的には明細胞癌で原発の腎細胞癌と類似していることから腎細胞癌からの転移と診断した.転移性胆嚢癌は極めて稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 岡村 孝, 阿部 史朗, 森 健一郎, 吉村 哲規, 興石 晴也, 桃原 祥人
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2723-2727
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去10年間に当院で経験した妊娠時の癒着性イレウスの開腹術症例5例を臨床的に検討した.年齢は28歳から36歳,妊娠週数は18週から34週で妊娠中期の発症が2例,後期が3例であった.開腹歴では消化器疾患1例,産婦人科疾患3例,両者を併発した症例が1例であった.初診医が診断した症例はなく,次の担当の産婦人科医では1例で,本症を初期に診断するのは困難であった.受診施設・担当医,コンサルテイションおよび診断を経時的に検討した.診断のためには(1)頻回の臨床症状の把握, (2)各科への積極的コンサルテイション, (3)腹部単純X線検査の経時的施行,が有効であると結論づけられた.本症と診断した当日に手術を施行した3例に癒着剥離術が,保存的治療後に手術を行った2例に小腸切除が行われた. 3例に帝王切開術が併施された.腸切除を避けるため本症と診断されたら原則直ちに手術をすべきであると結論づけられた.手術死亡や合併症はなかった.
  • 橋本 孝太郎, 宮澤 正紹, 武藤 淳, 児山 香, 遠藤 久仁, 穴沢 貴行
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2728-2732
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の男性.突然の下腹部痛を主訴に来院した.既往歴は糖尿病,高血圧,慢性心不全,脳梗塞,気管支喘息.来院時は腹部全体に強い自発痛を認めたが筋性防御や反跳痛は認めなかった.腹部CT検査で上腸間膜動脈根部は造影された.肝臓両葉に肝内門脈ガス像を認めた.発症約6時間後に虚血性腸疾患による門脈ガス血症の診断のもと手術施行.上腸間膜動脈根部の拍動は触知出来たがTreitz靱帯より210cm以降の小腸と盲腸から上行結腸にかけての腸管拡張,浮腫および腸間膜の浮腫を認め,これを切除し機能的端々吻合を行った.術後は徐々に軽快し111日目に退院となった.病理診断では腸管粘膜は出血性壊死を認めたが腸間膜動静脈に血栓等特異な所見を認めず, nonoc-clusive mesenteric ischemiaと診断した.本疾患は予後不良と言われているが発症早期に開腹術に踏み切れば一期的手術も可能であると示唆された.
  • 岡田 富朗, 田中 則光, 木下 尚弘
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2733-2737
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    無石性非穿孔性胆嚢炎により生じた漏出性胆汁性腹膜炎の1例を経験したので報告する.症例は75歳,男性.腹痛,嘔吐にて当院を受診した.急性胆嚢炎が疑われたが,翌日筋性防御が出現し胆汁性腹水を認めたため緊急開腹手術を施行した.手術所見では腹腔内に胆汁性腹水の貯留を認めたが,肝,総胆管,十二指腸に異常所見はなかった.胆嚢に結石,穿孔は認めなかったが,胆嚢頸部,体部,底部に壁の菲薄化した部分を限局性に認めた.この部よりの胆汁の流出は肉眼的に明らかでなかったが漏出性胆汁性腹膜炎と判断し,胆嚢摘除術および腹腔ドレナージを施行した.病理組織診では慢性胆嚢炎の急性増悪であり,壁の菲薄した部は潰瘍,びらん,また一部では自己融解に陥っていた.発生機序としては,逆流した膵液によって生じた胆嚢粘膜の傷害が関与しているのではないかと推察された.
  • 渡邉 卓哉, 石榑 清, 藤岡 憲, 堀場 隆雄, 平井 敦, 伊藤 洋一
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2738-2741
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1は68歳,男性. 2005年1月,胃癌に対し胃全摘,胆嚢摘出術を施行され, stage III Aであった. 2006年2月より腫瘍マーカーが上昇し, CTにて右水腎症が出現したため,再発が疑われ尿管ステントが留置された. 2006年4月より臍の硬結を自覚し, CTにて臍部に腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診にて,腺癌と診断された.現在外来にて化学療法中である.症例2は93歳,女性. 2006年1月,幽門狭窄を伴う胃癌にて手術が施行された.腹膜種播を認めたため,胃空腸吻合術となった. 2006年3月より臍の発赤が出現し, CTにて臍部に腫瘤と多発肝転移を認めた. 2006年4月,穿刺吸引細胞診にて腺癌と診断された.支持療法を行うも2006年5月に死亡した.
    胃癌臍転移は稀ではあるが,発見や診断は容易であり,進行胃癌術後ではその存在も念頭においた診療を行うことが重要であると思われた.
  • 春木 茂男, 伊東 浩次, 松本 日洋, 滝口 典聡, 平沼 進, 真田 勝弘
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2742-2746
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性.以前より発作性心房細動にて治療中であった.平成16年3月11日,著明な腹部膨満と全身状態悪化で救急搬送となった.血圧80mmHgとショック状態で,腎機能も低下,単純CTで拡張した小腸と腹水を認めた.来院後4時間で緊急手術を施行した.空腸起始部50cmから横行結腸右側までが連続性に壊死していたため,上腸間膜動脈閉塞症と診断し小腸亜全摘,結腸右半切除術を施行した. 3PODに左下肢急性動脈閉塞を発症,血栓除去術を行い救肢した.この時点からheparin投与も開始した. 2週間後の腹部造影CT検査ではさらに肝,脾,両側腎の多発梗塞像を認め多発動脈塞栓症と診断した. 47PODに在宅IVH療法目的に軽快転院となった.心疾患を有する動脈塞栓症は多発する可能性を常に念頭に置き,早い時期からheparinを用いた積極的な抗凝固療法が必要と考えられた.
  • 岡 和則, 加藤 智栄, 原田 昌和, 坂野 尚, 河野 和明, 濱野 公一
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2747-2750
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    足趾壊死・感染をきたしバイパス困難と思われた重症虚血肢に対し,足関節近位部に末梢側吻合部を置くことにより,良好な下肢血流が得られリム・サルベージされた1症例を経験した.症例は60歳,男性.左第1趾壊死を主訴とし,血管造影で膝下3分枝閉塞がみられたが前脛骨動脈末梢がわずかに描出された.血管エコー検査で径が3mm程度の良好な大伏在静脈と足関節部近傍に石灰化のない前脛骨動脈の存在が確認できた.膝下膝窩-末梢前脛骨動脈バイパスを施行後,第1趾切断・デブリドメントを追加した.局所洗浄により感染をコントロールしつつ,第43病日に退院し,外来通院した. 3カ月後に創の状態が改善したため植皮を行い,生着が得られた.足趾壊死感染を伴っていても重症虚血肢に対する足関節近位部バイパスは吻合可能な動脈部位と良好な静脈グラフトがあれば,患者のQOL向上に有効で積極的に試みるべきであると考えられた.
  • 森脇 義弘, 豊田 洋, 小菅 宇之, 杉山 貢
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2751-2755
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    54歳,男性の胸腹移行部刺創による腹腔内多臓器損傷(右横隔膜,小腸,肝,胆嚢,右腎)症例で,術中に腎周囲・後腹膜血腫の急速な増大を認め, lethal triadに向かいつつある状態と判断し, damage control (DC)に治療戦略を修正し,肝・胆嚢縫合止血,肝・腎周囲ガーゼ圧迫留置,引き続き腎動脈の経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)を行い,一時止血に成功し,第2病日に予定再手術でガーゼ除去,胆嚢摘出術を施行し救命しえた症例を経験した. DCは通常の治療戦略とは概念を異にする一時回避的戦略であるが,大量出血やseptic shockで致命的代謝失調状態にある症例に対しては,救命のための有用な手段である.重症緊急症例では治療戦略に関して事前検討もできず,その場に居合わせた者だけでの即座の判断が要求されるが,本法の適応判断や実践は,緊急事態への対応能力の一つとして重要と思われた.
  • 土屋 勝, 金子 弘真, 大塚 由一郎, 田村 晃, 前田 徹也, 渋谷 和俊
    2006 年 67 巻 11 号 p. 2756-2761
    発行日: 2006/11/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性. 11年前に腎癌で右腎摘出術を受け7年前に両側肺転移を認め切除されている.経過中に腹部エコーで膵体部に低エコー腫瘤を認め,画像診断上, hypervascularな特徴から転移性膵腫瘍の可能性が高いと診断された.手術は膵体尾部・脾合併切除を施行し,病理組織学的所見から淡明細胞型と診断し, 11年前の腎癌と肺転移の組織像に一致し腎癌膵転移と診断した.その後肺転移再発を認めIL-2を投与した.膵切除後25カ月現在,肺転移の増大と再発は認めない.腎癌の既往のある患者にhypervascularな腫瘤を認めた場合には,転移の可能性を考慮すべきである.腎癌術後から膵転移までの期間は比較的長いのが特徴であることを念頭に置き長期にわたる経過観察が重要である.他臓器転移を伴う膵転移例の中にでも長期生存例もあり,積極的な転移巣の切除により,長期予後が期待できると考えられた.
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