著者らはケーブルセンサを用いた落石監視システムについて研究を進めてきた. しかし, ケーブルセンサ自体の破断強度は低く, そのまま実環境に敷設するには不十分である. したがって改良型として, ケーブルセンサをスチールワイヤの中心部に巻き込み補強したスチールワイヤ型ケーブルセンサ (SWCS) を提案している. 本研究では, SWCSを実斜面に敷設し実施したフィールド研究の結果, 次の事項が明らかになった. (1) 加速度計をSWCSに取り付け, その外周を手動により打撃する感度試験を行った結果, SWCSの出力電圧と加速度の関係はベキ関数式で示せる. また, この式を用いSWCSの出力電圧波形を加速度波形に変換することができ, センサごとの感度の違いがクリアできることを確認した. (2) 実斜面に格子状に敷設したSWCSは増幅倍率2倍で十分な出力電圧が得られた. また, 各chの出力電圧波形の立ち上がり時刻は落石の下方落下に伴い時間ずれが生じる. この立ち上がり時刻と出力波形により, 落石の落下挙動としての跳躍運動, 衝突, 落下軌跡等を読み取ることが可能である. さらに, トポグラフ表示により, 落石挙動を視覚的に把握できる. (3) SWCSの出力波形の立ち上がり時刻を結ぶ曲線から, 落石特性値 (最大速度残存係数: α, 等価摩擦係数: μ, 脚部における落下速度:
V, 並進運動エネルギー:
E) を算出でき, 防護工の設計に有効である. また, SWCSを現場に用い長期観測することで, 前兆としての大小の落石の累積頻度を計測することが実用上可能となる.
抄録全体を表示