札内川扇状地とそれに隣接する猿別川扇状地は, 北海道十勝平野南部に位置する複合扇状地内の2つの流域をなしている. 従来, 両扇状地間の地下水の交流は無視できる程度とされてきたが, 調査の結果, 猿別川扇状地の地下には古札内川と考えられる埋没谷の存在が明らかになった. また, 地温, 安定同位体比の高度効果, 一般水質などの環境トレーサーと水収支を解析することにより, 札内川からその埋没谷を経由して猿別川へ1m
3/sを越える地下水涵養があり, 猿別川扇状地の地下水流動に重要な役割を果たしていることが考えられた.
近年, 地下水流動系規模での影響評価が必要となるケースが増えつつある. 本研究は環境トレーサーが理学的研究だけでなく, このような応用面でも有効であることを示唆している.
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