応用地質
Online ISSN : 1884-0973
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64 巻, 4 号
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論文
  • 瀬﨑 章太郎, 若井 明彦, 岡安 祥克, 稲垣 秀輝, 小坂 英輝
    原稿種別: 論文
    2023 年 64 巻 4 号 p. 172-182
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル 認証あり

    近年増加する斜面災害では,誘因となる豪雨や地震の研究は進んでいるが,素因となる斜面内部の変形機構を調べることが難しい.このため,斜面災害に対応するためには,斜面内部の複雑な重力変形機構を評価することが課題である.著者らは,まずバランス断面法が危険な斜面内部の重力変形機構を評価できることを再確認した.そして,バランス断面法を迅速・汎用的に再現できる数値解析手法として,新しい有限要素法(BaFEM)を開発した.バランス断面法では,地層同士のずれや剥離を伴う大変形が発生する.このため,従来の有限要素法ではバランス断面法を表現することは難しい.本研究では,既往の有限要素法を改良し,要素同士が一定の距離から離れることで削除,生成が繰り返される接触要素を導入する手法が考案される.これにより,ずれや剥離が発生する座屈やトップリング等の複雑な斜面重力変形の表現が可能になり,大変形時の斜面内部の応力・ひずみが時々刻々に評価できた.つまり,開発した有限要素法を利用すると,重力変形した実斜面の再現解析においても,変形形態のみならず,今後の変形予測も可能であり,重力変形斜面のリスク評価や防災・減災対応ができる.

報告
  • ―化学的風化指標CWIの風化特性研究への適用
    末岡 徹
    原稿種別: 報告
    2023 年 64 巻 4 号 p. 183-198
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/12/01
    ジャーナル 認証あり

    著者は,世界各地に分布する花崗岩質風化残積土地盤の化学的風化について,化学的風化度と化学的風化の方向性を同時かつ定量的に評価できる指標として,以下の化学的風化指標(CWI-Chemical Weathering Index,略称Sueoka’s Index)を提案している.

    CWI = [Al2O3 + Fe2O3 + TiO2 + H2O(±)(モル%)/全体の化学成分(モル%)]×100(%)

    本報告においては,化学的風化指標CWIが,化学成分の易動度を基本とした化学成分の組み合わせによって構成されていることを明らかにするとともに,CWIの意義や有効性そして今日的課題や意味について考察を行った.その結果,CWIを三つの化学成分グループで構成されている三角座標における位置とCWIの値の両者を表現することにより,花崗岩質風化残積土地盤の化学的風化度や風化の方向性を定量的に明確にできることを示した.さらにCWIを使うことにより風化花崗岩やマサ土,サプロライト,ラテライト性土,ラテライトなどの風化生成物の用語の定義を行うとともに岩盤分類を含んだ土層分類が明確になることを示した.

短報
  • 竹村 貴人, 遠藤 稜尚, 作道 悠
    原稿種別: 短報
    2023 年 64 巻 4 号 p. 199-203
    発行日: 2023/10/10
    公開日: 2023/11/24
    ジャーナル 認証あり

    近年,岩石力学分野の実験では,計測するセンサーが増えジャケットを始めとした実験装置が複雑化している.このような中で,ジャケットはセンサーケーブルを取り出すように加工する必要があり,これを3Dプリンターで作成することができれば,センサーケーブルをジャケットから取り出す不便さが解消される.この数年,光造形の3Dプリンター用の樹脂として,ゴム樹脂が開発されており,その印刷精度は高く,複雑な形状を立体的に印刷することが可能である.本研究では,高弾性ゴムレジンを用いた光造形の3Dプリンターによるジャケットの作成を試み,岩石に対する透水試験や力学試験に利用するにあたりシール性能があるかどうかの評価を行った.リークテストの結果,拘束圧を20MPaまで上げてもジャケットで隔離された間隙水圧は変化せず,ジャケットの止水が完全であることが確認できた.また,印刷された高弾性ゴムの性能を評価した結果,水を拘束圧媒体として使用した場合,透水試験や機械的試験においてジャケットとして十分な性能を有することが明らかにされた.

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