応用地質
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63 巻, 1 号
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論文
  • 小嶋 智, 丹羽 良太, 岩本 直也, 金田 平太郎, 服部 克巳, 小村 慶太朗, 山崎 智寛, 安永 一樹
    2022 年 63 巻 1 号 p. 2-12
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/06/06
    ジャーナル フリー

    中部日本,越美山系,冠山地域にみられる二重山稜地形は,山体重力変形(DSGSD)により形成されたものである.二重山稜地形の間の凹地を埋積した堆積物は,上位より,(a)炭質泥層と植物遺体に富む層の互層,(b)明灰色泥層,(c)橙色礫質泥層からなる.(c)層は基盤との不整合直上の基底礫層と解釈した.(a)層に含まれる木片の加速器質量分析計を用いて測定した放射性炭素年代(AMS-14C年代)と,7,300 cal BPの鬼界アカホヤ火山灰(K-Ah)により,凹地埋積堆積物の平均堆積速度は約0.25 mm/yearであり,二重山稜地形は約11,000年以上前に形成されたと推定した.比抵抗トモグラフィー探査の結果から,この凹地は,伸びに直交する方向の断面では東に薄くなる楔形を呈し,凹地の西を限る東に急傾斜した重力性断層に沿った円弧滑りにより形成されたと推定した.約7300年前の地表面を示すK-Ahの層準は,水平で西に傾斜した基盤にアバットしている.このことはDSGSDによる二重山稜地形の形成が約7300年前までには終了し,その後は安定していることを示している.DSGSD活動は,おそらく最終氷期後の寒冷・乾燥気候から温暖・湿潤気候への変化により引き起こされた.氷河の後退とそれに伴う急斜面の形成,支えや重圧の徐荷による同様な斜面の不安定化は,世界中から報告されている.(b)層から(a)層への層相の変化も,この気候変動に伴う植生の変化に起因する可能性がある.

報告
  • 澁谷 奨, 林 為人, 佐渡 耕一郎, 神谷 奈々, 杉本 達洋
    2022 年 63 巻 1 号 p. 13-23
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/06/06
    ジャーナル フリー

    熊本地域にある布田川断層を貫通したボーリング調査孔(FDB孔)の300 m以深には,熊本地域の深層地下水帯水層(第2帯水層)よりも古い地層が分布する.本研究では深度300 m以深の大深度深層地下水の動態を明らかにするため,FDB孔において3年間以上の地下水位観測を行った.地下水位は年間を通して降雨の影響を受けており,時期により変動パターンが大きく異なる季節変動を示した.地下水位変動と降水量の観測結果から,熊本地域の主な地下水涵養域の上流側にある阿蘇外輪山地域からの地下水供給が水位変動と関係することが明らかとなり,300 m以深での降雨応答を有する水位変動の存在が示された.そして,FDB孔と布田川断層沿いにある第2帯水層を対象とした阿蘇外輪山西麓台地の既設地下水位観測井の水位が,類似した水位変動パターンを示すことを明らかにした.本研究の結果は,熊本地域に広く分布する阿蘇1~阿蘇3火砕流堆積物を主とした第2帯水層が300 m以深の堆積岩層や先阿蘇火山岩類まで続いている可能性があることを示した.また,布田川断層の破砕帯が第2帯水層をさらに深部へ拡張させる役割を果たし,熊本地域の活発な地下水流動系に関連している可能性を示唆した.

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