北部九州の旧産炭地域において1965年から2009年の間に発生した, 石炭採掘が残した地下空洞を起因とする浅所陥没について, 発生時期, 発生位置, 発生規模, 関係炭鉱に関するGISデータベースを構築した. その結果, 陥没の特徴として, 陥没孔の形はほぼ円形で, 陥没孔の直径はほとんどが3m以下であることがわかった. 一雨ごとの降雨量と発生数には高い相関が認められ, 大局的には, 降雨量が異常に多いと発生数も多く, 各炭鉱の開山した時期を陥没発生場所の採掘時期とすれば, 陥没の発生は徐々に減少するが, 開山後100年程度続くことなどが明らかになった. GISを用いた空間解析の結果, 陥没のほとんどは, 炭層が浅く鉱区面積の小さな中小炭鉱が稼行していた区域に集中しており, 空洞天盤深度, 山丈と陥没深さから陥没が発生する限界の空洞天盤深度を推定すると, 一般に約30mと考えられる. 空洞調査にあたっては,採掘跡空洞は人為によるものであり, その採掘された時代の採掘技術, 経済的社会的背景を考えることが重要である. 空洞の対策については, 工法の長所や欠点を熟慮するとともに, 事業の計画段階から古洞の問題を認識し, 採掘や陥没の履歴調査を十分に行い, 最小の対策数量とする合理的な調査, 設計が望まれる.
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