塩ノ平断層は,2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震(Mw6.7)によって,いわき市田人町旅人滑石から石住綱木北西に至る約14 kmの区間に出現した,北北西から南南東へ延びる地表地震断層である.車断層は,塩ノ平断層の南方5 kmに認められる断層であり,この地震時に地表変位は現れていない.最近活動した断層の近くに,同様の走向を持ちながらも活動しなかった断層があることから,新たな断層活動性評価手法の可能性を探るため,塩ノ平断層で2ヶ所,車断層で1ヶ所を調査地点として選定した.本稿では,それぞれの地域でこれまで実施してきた調査のうち,野外地質調査・ボーリング調査・コア観察・XRD分析・同位体分析・流体包有物分析・透水試験の結果について報告する.断層破砕帯の地質・鉱物・透水性などの特徴として取りまとめられた3地点で得られた成果は,断層の活動性を検討するための基礎的なデータとして活用される.
平成30年7月豪雨による,岐阜県での土砂災害について報告した.斜面崩壊のほとんどは豪雨期間の後半に生じた.飛騨帯の花崗岩,美濃帯の堆積岩類,濃飛流紋岩類,段丘堆積物,崩積土,表土,盛土などで斜面崩壊が発生した.渓床土砂の移動による土石流はより多数発生しているようである.累積降水量が300 ㎜を超えた範囲で災害の発生数が多くなるが,愛媛県宇和島や広島県呉のように高密度のものとはならず散発的であった.
平成30年7月豪雨によってJR高山本線を被災させた斜面崩壊,土石流の調査結果を報告する.1,000 m3オーダーの2箇所の表層崩壊が発生した.崩壊はジュラ紀飛騨花崗岩の強風化部とその上の土壌との境界付近から発生した.崩壊土砂は高速で移動し,とくに移送域下流で渓床,渓岸の堆積物を取り込んで土石流に成長した.最終的に越流破壊された盛土の上流側には9,000 m3の土砂が堆積した.