応用地質
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47 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 阿島 秀司, 戸高 法文, 岩月 輝希, 古江 良治
    2006 年47 巻3 号 p. 120-130
    発行日: 2006/08/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    高レベル放射性廃棄物の地層処分技術にかかわる研究開発においては, 大規模な地下研究施設建設に伴う周辺環境への影響を予測評価する手法の開発が課題の一つに挙げられる. 本研究は, 日本原子力研究開発機構が岐阜県瑞浪市で進めている瑞浪超深地層研究所計画において, 地下研究施設建設に付随して起こる経時的な地下水の水質変化の範囲や程度などを定量的に評価するため, 主成分分析に混合とマスバランス計算を組み合わせたM3解析 (Multivariate Mixing and Mass balance modeling analysis) を実施し, 建設による擾乱が起こる前の地下水の水質分布状態およびその水質形成プロセスに関する解析を行ったものである. 解析の結果, 本地域の地下水は, 主に花崗岩浅部地下水, 花崗岩深部地下水, 浅部堆積岩地下水, 地表水といった4種類の端成分地下水の混合, およびイオン交換反応, 鉱物の溶解・沈殿等の水-岩石反応により形成されていることが明らかになった. また, 主に混合により地下水の水質が形成されている領域については, 端成分地下水の混合割合を指標として, 地下水の水質を定量的に表現できることが示された. 今後, 地下研究施設の建設過程で, このような解析を適宜実施すれば, 端成分地下水の混合割合の変化を経時的に追跡することができ, 地下研究施設周辺の地球化学的影響について評価するための有効な手法の一つであることが示された.
  • 谷川 亘, 嶋本 利彦
    2006 年47 巻3 号 p. 131-139
    発行日: 2006/08/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    地下深部におけるガスの浸透係数は, 天然ガスの貯留・移動問題を解明するうえで重要な水理パラメータである. また, ガスで求めた固有浸透係数を水の固有浸透係数として代用する場合と, 水-ガスの二相流問題を解析する場合においてガスと水の固有浸透係数の違いおよび各々の特徴を把握する必要がある.
    本研究では, 室温高封圧下の有効圧サイクル試験により, 同一試料におけるガスと水の固有浸透係数の測定および比較を行った. いずれの試料においてもガスの固有浸透係数は水の固有浸透係数に比べて2~10倍ほど高い値を示し, また強い間隙圧依存性を示した. 固有浸透係数はサイクル数および有効圧の増加とともに減少していったが, その減少量はガスと水の固有浸透係数の差に比べて非常に小さかった. ガスの固有浸透係数の間隙圧依存性を表すKlinkenberg効果をもとに水の固有浸透係数を推定すると, 実際に測定した水の固有浸透係数とほぼ同じ値を示した. このことはガスと水の固有浸透係数の違いがKlinkenberg効果によることを示唆する. とくに固有浸透係数が10-18mm2より低い場合かつ間隙差圧が0.3MPaより低い条件下でガスの固有浸透係数を測定した場合には, Klinkenberg効果によるガスと水の固有浸透係数の違いは無視できなくなる.
  • 幡谷 竜太, 柳田 誠, 山本 真哉, 佐藤 賢, 古澤 明
    2006 年47 巻3 号 p. 140-151
    発行日: 2006/08/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    現在, われわれは2004年新潟県中越地震震源地付近の第四紀後期の地殻変動について検討を進めている. 本稿では, 魚沼丘陵北部に分布する河成段丘層序の調査結果を速報し, さらに, 魚沼丘陵東縁の六日町盆地西縁断層の活動性に触れる. 調査地域に分布する河成段丘は, 空中写真判読調査により, 高位より, Hf, Mf, Lf面に区分される. さらに, Hf面はHf 1~3面に, Lf面は, Lf1~4面に細分される. 続いて, 火山灰層序に基づいてこれらの編年を行った. Hf 3面は海洋酸素同位体ステージ (MIS) 6よりも古く, MIS 8に対比される可能性がある. Mf面はMIS 6に対比される可能性が高い. Lf 1面はMIS 5/MIS 4境界~MIS 4/MIS 3境界頃に段丘化したと考えられる. Lf 2面の段丘化はMIS 3/MIS 2境界頃である. Lf 3面の段丘化はMIS 2と推定される. Lf 4面の段丘化は1万年前ごろである. これら河成段丘の比高を指標として予察的に見積もった過去10万年間程度の隆起量に基づけば, 六日町盆地と魚沼丘陵東縁の過去10万年間程度の相対的な隆起・沈降量差は40m程度より大きいと推定される. このことは, 六日町盆地西縁断層の活動度がB級程度かそれ以上であることを示唆する.
  • 和嶋 隆昌, 別所 昌彦, 西山 孝
    2006 年47 巻3 号 p. 152-155
    発行日: 2006/08/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    秋田県澄川地熱発電所では, 地熱水から蒸気分離された後の還元水に排水基準以上のAs (約13mg/l) が含まれているため, 還元井より地下に戻している. 本研究では, 地熱発電所の排ガス中に含まれるH2Sガスを用いて, 地熱発電所で湧出する地熱水からAsを除去する排出物有効利用システムの構築を目指し, 人工的に発生させたH2Sガスを用いた地熱水中のAsの除去に関する基礎的検討を行った. pH 4以下の強酸性にした地熱水中に, H2Sガスを吹き込むことによりS2-を供給し, As濃度を排水基準の0.1mg/l以下にすることができた. また, H2SガスによるAs除去法は, Al塩添加により地熱水中の過飽和シリカを除去した処理水に対しても, 地熱水と同等の効果を示し, 過飽和シリカ除去法との組み合わせが可能であることがわかった.
  • 横田 修一郎
    2006 年47 巻3 号 p. 156-161
    発行日: 2006/08/10
    公開日: 2010/02/23
    ジャーナル フリー
    長い地球史には, 自然の変化の膨大な記録とともに, 人類が将来にわたって自然環境に順応・共存していくための無数のヒントが埋もれていると考えられる. 過去の記録は将来の自然の変化を予測するのに貴重な情報源となるが, それを人間や社会にとっての自然環境の予測に活用するには, いくつかの変換が必要である.
    地質学的な自然現象を人間感覚の時間・空間スケールに読み替えていかねばならないし, 人間社会への影響が多様な自然現象の複合によることを考慮して, 内容, 大きさ, 変化を推定していかねばならない. これには, 人間社会の側から自然をみる応用地質学が重要な役割を果たし得ると考えられる. 急拡大してきた人間活動による自然への負荷とその規制も, こうした視点のもとに地球史を振り返ることで, 議論をより具体的なものにできるであろう.
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