高レベル放射性廃棄物の地層処分技術にかかわる研究開発においては, 大規模な地下研究施設建設に伴う周辺環境への影響を予測評価する手法の開発が課題の一つに挙げられる. 本研究は, 日本原子力研究開発機構が岐阜県瑞浪市で進めている瑞浪超深地層研究所計画において, 地下研究施設建設に付随して起こる経時的な地下水の水質変化の範囲や程度などを定量的に評価するため, 主成分分析に混合とマスバランス計算を組み合わせたM3解析 (Multivariate Mixing and Mass balance modeling analysis) を実施し, 建設による擾乱が起こる前の地下水の水質分布状態およびその水質形成プロセスに関する解析を行ったものである. 解析の結果, 本地域の地下水は, 主に花崗岩浅部地下水, 花崗岩深部地下水, 浅部堆積岩地下水, 地表水といった4種類の端成分地下水の混合, およびイオン交換反応, 鉱物の溶解・沈殿等の水-岩石反応により形成されていることが明らかになった. また, 主に混合により地下水の水質が形成されている領域については, 端成分地下水の混合割合を指標として, 地下水の水質を定量的に表現できることが示された. 今後, 地下研究施設の建設過程で, このような解析を適宜実施すれば, 端成分地下水の混合割合の変化を経時的に追跡することができ, 地下研究施設周辺の地球化学的影響について評価するための有効な手法の一つであることが示された.
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