高温履歴を受けた花崗岩に認められる物性と内部微小構造の変化およびそれら関連を調べるため, 粒径の異なる2種の花崗岩を, 最高到達温度300℃, 500℃で熱履歴試験に供した. 試験前後で試料内の微小構造を反映すると考えられる試料サイズ, 重量, 有効間隙率, P波伝播速度を計測し, 蛍光観察法を適用して, 試料内部の微小間隙構造を詳細に観察した.
その結果, 試験前後で試料のサイズと重量に大きな変化はあらわれないものの, 有効間隙率の増加とP波伝播速度の顕著な低下が認められ, 試料内の間隙構造の変化が示唆された. 薄片観察の結果, 熱履歴を受けた試料内では, 構成鉱物粒子境界に存在するマイクロクラックに伸展と開口が認められ, この傾向は最高到達温度の高い試料の方が顕著であった. また, 粒子内部のクラックに着目すると, 石英内では, 2種の花崗岩で異なったマイクロクッラク進展パターンが認められた. 一方, 長石や黒雲母の内部では, 両花崗岩とも劈開面や双晶面などの弱面に沿って比較的まっすぐなクラックの進展が認められた. これらの観察結果は, 有効間隙率やP波伝播速度の物性変化と調和的であった.
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