地表近傍の石英中に生成・蓄積する宇宙線生成核種
10Beあるいは
26Alを用いて,山地流域からの土砂生産量を決定する手法について,原理と日本での適用の現状を紹介する.この手法は,渓流堆砂を分析対象として採取し,加速器質量分析によって石英中の宇宙線生成核種を定量することで,石英粒子の地表近傍での滞留時間の逆数として,数百年から数千年スケールでの流域の空間平均削速度を求めるものである.本手法を,北アルプス東縁の花崗岩地域に適用したところ,流域の削速度として,2×10
2~7×10
3mm kyr
-1の値が得られた.削速度は流域の平均斜面傾斜と非線型的な関係を示し,傾斜が約40°付近で極大値を示した.これは,削剝の進行による風化物質の除去と強度の大きい未風化岩盤の露出といった,これまでに定量化されたことのない地形過程を捉えている可能性がある.宇宙線生成核種によって得られる削剝速度に流域の地表面積を乗じることで,任意流域からの長期的な土砂生産量を算出することができ,流域ごとの土砂災害ポテンシャルの評価や河川における土砂管理に資する情報として活用できるものと期待される.
抄録全体を表示