シラス斜面では降雨時に台地面からの浸透水が縁辺急斜面から湧出し, これが崩壊発生に影響している可能性がある. 急斜面で実施した比抵抗連続測定と土壌水分測定, 斜面下部での湧水の水温と電気伝導度測定等の結果を基に, 降雨水の浸透・湧出過程を検討した. その結果, 台地直下と斜面内部の比抵抗値は降雨量に対応して変化し, また斜面表層の土壌水分も急変する. さらに台地上からの浸透水は約2時間のタイムラグで斜面から湧出することを確認した.
降雨水の浸透による含水程度(比抵抗値)の時間的変化は斜面表層ほど急速かつ大きく, 内部にいくにつれて緩慢かつ小さくなる. 個々の時間的変化は, 連続日雨量データに適当な逓減係数を用いて算出した実効雨量値と高い相関性がある. したがって, 日雨量データが得られれば, 最適逓減係数を用いた実効雨量値を介して任意深度の含水程度を推定できる.
この最適逓減係数値を斜面崩壊が多発した過去の日雨量データに対して用いれば, 斜面崩壊発生をもたらす降雨量パターンを求めることができ, さらに, 個々の斜面において含水程度に対応した不安定化の程度を示す安全率F
sが得られれば, 日雨量データを基にした斜面崩壊発生の時間的予測も可能となる.
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