応用地質
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50 巻, 4 号
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論文
  • 藤山 敦, 金折 裕司
    2009 年50 巻4 号 p. 202-215
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     本論文では詳細な地形・地質学的調査に基づいて, 山口県南東部に位置する伊陸盆地に源流を発する由宇川と四割川に沿う小規模な河成段丘を高位から伊陸I面~VI面の6面に区分した. 由宇川上~中流部の約5km区間に発達する伊陸II面とIII面は分布や段丘面の傾き, 段丘堆積物や基盤の地質の違いなどから, 伊陸II面の形成以前には河川流向が現在と逆であったことを明らかにした. 空中写真判読と現地踏査によって, 伊陸盆地内に変位地形を確認するとともに, 段丘堆積物を切断する断層露頭を発見し, NE-SW走向の活断層(日積断層 : 新称)の存在を明らかにした. 河川流向の変化は, 由宇川の下刻に伴う河床低下により発生した河川争奪によるものであり, 上流域での堰き止めや氷河期の海面変化に加えて, その主因は地盤隆起や活断層運動を生起させた広域テクトニクスに求めることができる.
  • ―比抵抗値と土壌水分変化に基づいて―
    福田 徹也, 横田 修一郎, 岩松 暉, 和田 卓也
    2009 年50 巻4 号 p. 216-227
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     シラス斜面では降雨時に台地面からの浸透水が縁辺急斜面から湧出し, これが崩壊発生に影響している可能性がある. 急斜面で実施した比抵抗連続測定と土壌水分測定, 斜面下部での湧水の水温と電気伝導度測定等の結果を基に, 降雨水の浸透・湧出過程を検討した. その結果, 台地直下と斜面内部の比抵抗値は降雨量に対応して変化し, また斜面表層の土壌水分も急変する. さらに台地上からの浸透水は約2時間のタイムラグで斜面から湧出することを確認した.
     降雨水の浸透による含水程度(比抵抗値)の時間的変化は斜面表層ほど急速かつ大きく, 内部にいくにつれて緩慢かつ小さくなる. 個々の時間的変化は, 連続日雨量データに適当な逓減係数を用いて算出した実効雨量値と高い相関性がある. したがって, 日雨量データが得られれば, 最適逓減係数を用いた実効雨量値を介して任意深度の含水程度を推定できる.
     この最適逓減係数値を斜面崩壊が多発した過去の日雨量データに対して用いれば, 斜面崩壊発生をもたらす降雨量パターンを求めることができ, さらに, 個々の斜面において含水程度に対応した不安定化の程度を示す安全率Fsが得られれば, 日雨量データを基にした斜面崩壊発生の時間的予測も可能となる.
  • 高橋 良, 原 淳子, 駒井 武, 八幡 正弘, 遠藤 祐司
    2009 年50 巻4 号 p. 228-237
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     鉱山から流出する坑内水の水質変化予測を行うためには, 水質悪化の主因である岩石からの重金属類の溶出の実態把握が必要である. 本研究では幌別硫黄鉱山地域において, とくに砒素を溶出させる熱水変質岩の地質学的特徴の考察を行った. 本地域では熱水活動の中心に硫化帯と珪化帯が認められ, その周囲に粘土化帯と弱変質帯が認められる. 硫化帯は黄鉄鉱に富み, その分解生成物であるロンボクレース(rhomboclase)を含む珪化脈が認められる. このような岩石は粘土鉱物を含まず, 砒素の溶出量(~113mg/l)や溶出液の酸性度(pH<1.6)が大きい. また砒素は主に黄鉄鉱に濃集しており, 砒素が熱水や火山ガスによって地下深部から供給され, 黄鉄鉱の沈殿とともに付加されたことが示唆される. そして共存するロンボクレースが黄鉄鉱の分解とそれに伴う砒素の放出, および坑内水の酸性化を促進させていることが考えられる. また粘土鉱物を含む粘土化帯や弱変質帯では砒素の溶出量(~1.4mg/l)や溶出液の酸性度(pH=2.4~8.2)が硫化帯よりも明瞭に小さい. したがって, 本地域では岩石からの重金属類の溶出量を判断するうえで変質鉱物組み合わせが重要な指標になる.
報告
  • 舟木 泰智, 石井 英一, 常盤 哲也
    2009 年50 巻4 号 p. 238-247
    発行日: 2009年
    公開日: 2013/03/31
    ジャーナル フリー
     堆積岩において, 割れ目がどの程度地層中の主要な水みちとして機能しているかを把握することは, 地下水の流れに関するモデル化および数値解析を行ううえで重要な基盤情報となる. 本報告では, 北海道北部の幌延地域に分布する新第三紀の堆積岩(声問層と稚内層)中の割れ目がどの程度主要な水みちとして機能しているかを, ボーリング孔における割れ目と地下水の流出入箇所との対応関係から把握するために, コア観察, 超音波型孔壁画像検層および流体電気伝導度検層を実施した. その結果, 声問層の割れ目は稚内層のそれよりも開口性と連続性・連結性に乏しく, 割れ目がほとんど主要な水みちとして機能していないことが示唆された. 一方, 稚内層の割れ目はある程度の連続性・連結性を有し(少なくとも声問層のそれより連続性・連結性に富み), 割れ目が主要な水みちとして機能していることが示唆された. このことから, 声問層は多孔質媒体として, 稚内層は声問層と比べ亀裂性媒体としての性質が強いと考えられる.
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