応用地質
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49 巻, 2 号
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  • Min MAUNG MAUNG, 渡辺 邦夫, 佐々木 泰, 長田 昌彦
    2008 年 49 巻 2 号 p. 64-77
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    軟岩の不飽和透水特性 (水分特性曲線と透水係数の飽和度依存性の関係) は, トンネルや岩盤表面近傍などの飽和・不飽和地下水解析する場合, 妥当に評価する必要がある. 本研究では, この不飽和特性を, キャンベルモデルと遺伝的アルゴリズム (GA) を用いて推定する実用的な方法を開発した. 本研究の主目的は二つあり, 一つは, キャンベルモデルが軟岩の不飽和特性評価に適用できるかを調べることである. 二つめの目的は, キャンベルモデルに含まれる二つのパラメーター推定に, 遺伝的アルゴリズムがどの程度適用できるかを調べることである. これらのパラメーター推定を, 青森県六ヶ所村から採取したディスク状に加工した第三紀堆積軟岩表面からの蒸発量変化を逆解析することで行った. 本研究では, 環境条件の異なる場で行う二つの蒸発変化実験方法を提案した. これらの実験を用いて, 5個の砂岩, 8個の凝灰岩試料のパラメーターを推定した.
    研究の結果, まず, 蒸発量の非定常変化が, 試料の飽和度が小さい範囲を除いて, キャンベルモデルを用いて解析しうることが明らかとなった. また, 遺伝的アルゴリズムが, 逆推定にうまく用いうることが明らかとなった. さらに, 提案する方法が軟岩の不飽和特性評価上実用性が高いことがわかった.
  • 佐川 厚志, 相山 光太郎, 金折 裕司, 田中 竹延
    2008 年 49 巻 2 号 p. 78-93
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    徳佐-地福断層北東部と迫田-生雲断層中部の性状および活動性を明らかにする目的で, 地形判読, 断層露頭調査, トレンチおよびボーリング調査を実施した. 徳佐-地福断層北東部のトレンチ調査に基づくと, 断層の最新活動時期は10,800~3,400年前となる. 既存のトレンチ調査での14C年代値を再検討した結果, 断層全域 (長さ約35km) が6,300~5,200年前に同時に活動した可能性が出てきた. 一方, 1997年山口県北部の地震 (Mj6.6) の震央から南西約10kmで実施した迫田-生雲断層中部のトレンチ調査により, 断層の最新活動時期は14,500~8,500年前と見積もられた.
    これらの最新活動時期と既存の研究からのデータを組み合わせると, 迫田-生雲断層から徳佐-地福断層を経て, その南西に隣接する大原湖-弥畝山西断層系を構成する木戸山西方断層へと, 断層活動がマイグレーションする傾向が認められた.
  • 土岐花崗岩を例にして
    西本 昌司, 鵜飼 恵美, 天野 健治, 吉田 英一
    2008 年 49 巻 2 号 p. 94-104
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    地下深部花崗岩の変質プロセスを解明することを目的に, 岐阜県土岐市で深度約500mまで掘削したボーリングコアについて花崗岩の変質状態と割目等との相関を調べた. 変質鉱物として, 絹雲母, 緑泥石, 方解石, 水酸化鉄が認められた. 黒雲母の緑泥石化や斜長石の絹雲母化は, 開口割目が発達する部分と勇断を伴うシーリングされた割目が多い部分で顕著であり, 深度との相関は認められない. 方解石は, 勇断を伴うシーリングされた割目近傍において充填鉱物として認められるが, 開口割目の多い部分では見られない. 開口割目と剪断を伴うシーリングされた割目が同時期に形成されたとは考えにくく, 異なる時期の熱水変質があったと考えられる. 水酸化鉄は, 一部の開口割目やその近傍の鉱物粒間において観察され, 黒雲母や緑泥石などから溶出したFeが, 地表から浸透した地下水により酸化されて沈殿したものと考えられる.
    これらのことを総合すると, 土岐花崗岩体の変質プロセスとして, (1) マグマ貫入直後の熱水変質, (2) 開口割目形成後の熱水変質, (3) 天水の浸入に伴う水酸化鉄沈殿の3ステージが考えられる. また, 地下深部花崗岩の変質プロセスにおいては, 割目を介在した地下水と岩石の反応が重要と思われる.
  • 谷川 亘, 坂口 真澄
    2008 年 49 巻 2 号 p. 105-110
    発行日: 2008/06/10
    公開日: 2011/11/04
    ジャーナル フリー
    難透水性の透水係数を測定する方法の一つに, トランジェントパルス法がある. この測定法は間隙圧振動法やフローポンプ法と比較して単純なシステムを用いて行えるという長所があるが, 測定時間が大幅にかかるという問題点がある. そこで本研究では貯留槽の容積を約4.05ccまで小さくすることにより測定時間の短縮を試みた. 三つの異なる岩石について100MPaまで封圧を変化させて透水係数を測定したところ, いずれの岩石も初期封圧時の値に対して約1桁減少した. 稲田花南岩は過去に報告されている透水係数とほぼ同じ値を示し, 他の二つの岩石についても定流量法で測定した結果と同じ値を示した. 一方, これまで報告されている透水係数の間隙差圧の影響は認められず, 水圧上昇に伴う顕著な透水係数の上昇が認められた. また, 窒素ガスで間接的に水を加圧して測定した透水係数が水圧ポンプで圧縮加圧して測定した値と同じ値を示した. よって本測定システムを用いることにより, これまでのシステムと比較して大幅な測定時間の短縮をはかることが可能であることが明らかとなった. 今後, より精度を上げた透水係数を測定するために, 貯留容積を小さくすることで発生する問題点を改善する必要がある.
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