応用地質
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論説
  • 本間 勝
    2024 年 64 巻 6 号 p. 333-342
    発行日: 2024/02/10
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    日本の傾斜地造成の歴史はその地域の産業構造や開発当時の経済動向と密接な関係が窺える.一方で,土地の貨幣的価値(地価)はその災害危険性を考慮しているであろうか.主に古典派経済学や不動産科学が検討してきた地代論研究は農業における土地の肥沃度の差異で地代を論じることもあった.現代に置き換えて考えれば,土地の価値を扱う「不動産鑑定評価基準」における不動産の「効用」について熟考する余地がある.個別の土地の物性評価や地域特性に関係する居住安全性や農地の収穫性といった価値を「効用」として考えた価値への反映や居住地の適地利用が改めて必要である.

    現在のような社会環境において公共の安全を担保するためには,価値への再考と共に法規制による調整が重要である.

論文
  • 平野 昌繁
    2024 年 64 巻 6 号 p. 343-351
    発行日: 2024/02/10
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    人工的地形改変における土砂移動に関して2つのタイプがあり,そのひとつは移動拡散過程,もう一つは集積移動過程である.それらに対し移流(運搬)項を持つ拡散方程式で与えられるモデルの基本解が,人工改変地形における移動拡散あるいは集積移動の速度を評価する尺度となる.その速度を,近似モデルである斜面の平行後退による地形変化を想定した場合の自然過程における地形のプロセスの速度と比較する.人為的な移動拡散の例である神戸地域における地形改変や,集積移動の例である石灰岩採掘など,を対象として検討する.その結果,人工改変地形における移動拡散過程と集積移動過程における物質の移動速度は自然過程における山地の浸食あるいは火山体の形成にくらべて桁はずれに大きく,その大きな速度に関連して人工地盤の圧密現象あるいは地下の応力変化という問題が生じ得ると考えられる.

報告
  • 黒木 貴一, 品川 俊介
    2024 年 64 巻 6 号 p. 352-360
    発行日: 2024/02/10
    公開日: 2024/04/26
    ジャーナル 認証あり

    鬼怒川下流の堤防及び高水敷を対象に,国土地理院から借用したレーザーデータを用いて地形変化を検討した.標高差分から作成した剰余地図では,特異な標高変化域を識別できた.その縞模様の形状,相対的な標高変化,土地利用から,その変化域に,法面の人工改変,洪水による土砂移動,堤防全体の変形,天端の道路や法面の何らかの変形が生じたことを推定できた.さらにその変化域では,法面での坂道の新設,高水敷での微高地や浅い谷の形成,工事に伴う道路の傾きや凹部が生じていることを確認した.また特異な標高変化は,天端の拡幅,法面の膨出や崩壊の過程,除草の影響を示す可能性があることも指摘した.新旧のレーザーデータが異なる精度や密度を持つ場合でも,人工改変地の堤防及び堤外に生じた意味ある標高変化を剰余地図で識別し,様々なスケールの地形変化を判読できる.

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