平成30年7月豪雨災害において同時多発的に発生した土石流について現地調査を行った結果,広島県内の花崗岩,流紋岩の分布域では,それぞれ対照的な挙動で災害を発生させたことが明らかになった.花崗岩分布域のうち山上にトアが形成されている地域では,トアを形成する石柱やコアストンを起源とする大岩塊が表層崩壊を発生源とした土石流に取り込まれることで土石流の破壊力が増大し,谷の出口に位置する家屋が押しつぶされるように激しく破壊した.同じ花崗岩分布域でも,十分な土砂や水量がある地域では,被災地が土石流の発生源から数km離れている場合であっても土砂・洪水流による土砂埋没の被害を受けた.また一部の流紋岩分布域では,亀裂に富み粘土化しやすい岩盤の低い透水性のために,大量の水と細粒分を多く含む流動性に富んだ土石流が発生した.ここでの土石流は特徴的に直線斜面上を流下し,構造物等を浮き上がらせ押し流した.このように土石流の挙動や被害の予測は地質と地形によってある程度可能であり,その情報を今後の災害対策へ活用していくことが重要である.
主断層の周辺には,副次断層が分布する場合がある.これまで,多数の調査・研究が主断層や副次断層で実施されているものの,第四紀に主断層と共に活動し,今後も活動する可能性が高い活動的な副次断層の微細構造解析に焦点を当てたものはない.
2014年長野県北部の地震(Mw 6.2)では,神城断層(主断層)と,3条の副次断層が活動した.我々は,その副次断層のうち1条(最新滑り面)の活動性や,その最新滑り面に沿う断層ガウジの微細構造を明らかにするために,トレンチ調査や微細構造解析を実施した.トレンチ調査では,最新滑り面が完新世に少なくとも2回活動していることを確認した.微細構造解析では,ヘリカルX線CTスキャナーや偏光顕微鏡,X線回折装置,透過型電子顕微鏡を使用し,断層ガウジに層状構造やガウジフラグメントが認められることを示した.