応用地質
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56 巻, 6 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • 大沼 和弘, 中谷 匡志, 山本 浩之, 西川 篤哉
    2016 年 56 巻 6 号 p. 289-297
    発行日: 2016/02/10
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    TFT探査はトンネル掘削発破を起振源とすることで,掘削施工サイクルに影響を与えずに地質調査が実施できる弾性波探査システムである.本システムにより,直達する弾性波を測定し,切羽付近の地山状況をリアルタイムに評価することが可能となる.さらに,切羽前方より反射する弾性波を測定することで,未掘削区間の断層などの位置を予測することが可能である.
    花渕山2号トンネル工事では,TFT探査を全発破区間で実施し,切羽付近の弾性波速度を算出することにより,地山変化を的確に評価し,トンネル施工に活用した.また,反射法弾性波探査を連続的に行い,切羽前方の30~70m程度区間の岩盤状況変化を予測し,トンネル施工に活用した.本論では,TFT探査をトンネル施工管理に活用する手法とその結果を述べる.
報告
  • 鶴田 忠彦, 笹尾 英嗣
    2016 年 56 巻 6 号 p. 298-307
    発行日: 2016/02/10
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    国立研究開発法人日本原子力研究開発機構は,地層処分技術に関する研究開発のうち深地層の科学的研究(地層科学研究)の一環として,岐阜県瑞浪市において瑞浪超深地層研究所の建設を進めてきた.同研究所における調査研究の一環として,岩盤の地質学的不均質性や,物質の移行経路として重要な地質構造などを把握することを目的として,物理探査,ボーリング調査などの地質学的調査を実施している.本報では,特に地下の研究坑道において実施している壁面地質調査の手法の設定の背景と実施内容,並びに取得情報を活用した地質構造のモデル化などに関する研究事例を報告する.
  • 岡﨑 健治, 伊東 佳彦, 丹羽 廣海, 村山 秀幸, 笹谷 勝輝, 大日向 昭彦, 倉橋 稔幸
    2016 年 56 巻 6 号 p. 308-315
    発行日: 2016/02/10
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    筆者らは,トンネルの供用後に盤ぶくれや壁面変位が増加したトンネル,および一次支保の完成後に盤ぶくれが発生し,縫い返しを行った2つの近接したトンネルにおいて,地質調査時のボーリングコアを試料として劣化の経時変化や含有鉱物を分析した.また,両トンネルの舗装面上で屈折法地震探査を実施し,弾性波速度の分布から舗装面下の地山の健全性を診断した.両トンネルは近接しており,主な地質は熱水変質作用を受けた自破砕部を含むデイサイト,安山岩溶岩および火砕岩からなる.両トンネルの岩石の調査と試験の結果,比較的硬質な岩石であっても経時的に劣化や膨張が進行した.また,岩石の経年観察の結果,比較的早期に再観察することで,中長期的に劣化する範囲を特定できる場合のあることが示唆された.さらに,屈折法地震探査の結果,舗装面から深度10m以浅の弾性波速度は,縦断方向への変化,ならびに変状の発生した区間の一部では,その周辺に比べて表層の弾性波速度が低い傾向を確認した.
  • 石濱 茂崇, 青木 宏一, 片山 政弘, 手塚 仁
    2016 年 56 巻 6 号 p. 316-324
    発行日: 2016/02/10
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    これまで,筆者らはトンネル切羽に現れる不連続面の走向傾斜を3次元スキャナや写真測量により測定する技術の開発を行ってきた.また,この方法を普及させるためには,トンネル施工サイクルに及ぼす影響を最小限とすることが重要と考え,トンネル現場において最も適用性が高い計測方法やシステムを模索してきた.
    今回は,これまで開発してきた計測方法や計測システムの評価について,現場適用事例結果を通じて報告する.この開発の成果は,施工中における迅速なトンネル切羽の安定性評価,ならびに維持管理段階のトンネル地山評価指標のひとつとして有効と考えられる.
  • 山本 拓治, 佐藤 秀史, 齋藤 宏樹, 鹿嶋 辰紀, 伊達 健介, 横田 泰宏, 成田 望
    2016 年 56 巻 6 号 p. 325-335
    発行日: 2016/02/10
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    旭川十勝道路は,旭川市から占冠村を結ぶ延長約120kmの地域高規格道路として計画されている.旭川十勝道路のうち,北の峰トンネル(仮称)は,延長2,928mの山岳トンネルであり,平成21年度から工事に着手している.
    本トンネル周辺は,夕張山地山麓の丘陵地に囲まれており,広大な森林や豊富な地下水など豊かな自然環境が保たれている.そのため,終点側では,地下水環境の保全を目的として止水注入工やウォータータイト構造を用いた施工を進めている.
    一方,この地方は富良野断層帯の一部に属することから,起点側切羽には断層活動の影響を受け,著しく破砕された新第三紀泥岩が広く分布し,トンネル掘削時に過剰な坑内変位が発生する懸念があった.そこで,破砕した泥岩の地山を適切に評価するため,先進ボーリングの工夫(主に多重構造化・コアチューブの短尺化・特殊泥水の採用),強度低下を考慮した針貫入試験,トンネルトモグラフィ探査による切羽前方・周辺の詳細調査,打球探査による迅速切羽評価,リアルタイム切羽押出し変位計測を実施した.これらの施工中の調査の結果に基づく地山評価方法について報告する.
  • 外山 真, 橋本 浩史, 北澤 剛
    2016 年 56 巻 6 号 p. 336-342
    発行日: 2016/02/10
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    俵坂トンネルは,九州新幹線西九州ルートの佐賀・長崎県境を貫く延長約5.7kmの山岳トンネルである.本トンネルの西工区は,杵島層群泥岩を掘削対象としており,地山の塑性化に伴う内空変位の増大と変形収束性の悪い傾向が確認された.このような押出し性地山に対して,掘削に伴う変形を抑制し,トンネルおよび周辺地山の安定を確保することを目的として,剛性の高い支保構造を用いた早期閉合を実施した.また,前方地山の性状を精度良く把握するために,先進コアボーリングを採用した.本稿では,押出し現象を伴う泥岩地山において,先進コアボーリングによる前方探査と適切な支保パターンによる内空変位抑制を行うことで,泥岩地山を掘削した事例を報告する.
  • 西 琢郎, 若林 成樹
    2016 年 56 巻 6 号 p. 343-349
    発行日: 2016/02/10
    公開日: 2016/04/29
    ジャーナル フリー
    トンネル切羽前方の地山状況を事前に把握することは,突発事象への対処を減らし,工事を安全に進めるだけでなく,より急速施工を実現してコスト低減にも寄与するものと考えられる.ここで述べる前方探査手法は,いわゆる反射法弾性波探査を応用したものであり,油圧ブレーカーが切羽面でこそく作業を行う際の打撃振動測定から切羽前方の地質境界や断層等の位置を推定するものである.振動を受振するセンサーは,坑壁ロックボルトの頭部に簡便に脱着できる設置具を介して固定し,坑内での機器設置~撤収までの時間は30分以内で,通常の施工サイクルをほとんど阻害することがない.データ解析は,事務所内のパソコンでフィルタ処理・地山弾性波速度推定・反射波の抽出を行い,複数のセンサーで受振した反射波の等走時楕円体が重なる共通点を見出すことから反射面位置を推定する.この作業を掘削進行に併せて繰り返し行うことにより,同じ地点に反射面が現れることを確認して探査精度を向上させていく.複数のトンネルにおいて現場適用実験を行った結果,本手法の有効性が確認できた.
資料
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