平成15年十勝沖地震 (2003年9月26日発生; Mj8.0) により, 震央から約230km離れた北海道網走支庁常呂郡端野町で, シラスの液状化に起因する土砂流動災害が発生した. 変状は, 火砕流台地上において谷埋め盛土により造成された農地で発生したもので, 地表部に陥没と亀裂を伴う数千m3以上の土砂流動現象が生じ, 近傍の農地と小河川を埋積した. この現象は, 陥没域の低所側末端部に生じた数箇所の噴砂孔から, 多量の火山灰が絞り出されるように流出する間, 陥没域表層部の非液状化層が顕著に側方へ流動した痕跡がなく, 陥没に伴う地表亀裂からは噴砂がほとんど見られないことが特徴である. これは既往の地震時の液状化に起因する斜面変動と異なる形態的特徴と考えられ, 本報告では「絞り出し流動現象」と呼ぶ.
今回変状が発生した谷埋め造成地は, 起伏量が小さく傾斜のゆるい丘陵地内にあり, 空中写真判読や地形図読図の手法で人工改変地形の範囲を特定することは簡単ではない. 本調査で実施した, 航空機レーザ地形計測による細密DEMに基づく地形量の視覚表現は, 微地形の再現性がよく, 大縮尺地形図のない丘陵地などの緩傾斜地において造成農地の形状を把握する手段として期待できる.
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