日本臨床免疫学会会誌
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36 巻, 2 号
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訂正記事
特集:自己抗体
総説
  • 大友 耕太郎, 渥美 達也
    2013 年 36 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/28
    ジャーナル フリー
      抗リン脂質抗体症候群(APS)は血栓症,妊娠合併症を引き起こす疾患として知られており,診断には抗リン脂質抗体(APL)の存在が必須とされる.具体的にはループスアンチコアグラント(LA),抗カルジオリピン抗体(aCL),抗β2GPI抗体(aβ2GPI)のいずれかの存在が必要である.APLは多彩な免疫グロブリンであり,多種類のAPLアッセイが存在する.APL測定は主に診断ツールとして用いられるが,最近我々は多彩なAPLプロファイルを点数化する「aPLスコア」を定義し,このスコアが血栓症のリスク評価に使用できる可能性を示した.本稿では個々のAPL測定と,「aPLスコア」を解説し,APL測定の意義についてを考察する.
  • 中嶋 蘭, 三森 経世
    2013 年 36 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/28
    ジャーナル フリー
      抗MDA5抗体は皮膚筋炎特異的抗体であり,同抗体陽性例は筋症状が少なく,高率に急速進行性間質性肺炎を併発し予後不良であること,高フェリチン血症・肝胆道系酵素上昇を伴うなど特徴的な臨床像を呈する.抗MDA5抗体陽性患者と陰性皮膚筋炎患者の治療前血清サイトカインを比較したところ前者では有意にIL-6, IL-18, M-CSF, IL-10が高値を示し,IL-12, IL-22は低値を示した.これらのことから,抗MDA5抗体陽性例においては単球・マクロファージの異常活性化が病態の背景に存在すると考えている.抗MDA5抗体陽性例は一旦酸素投与が必要な呼吸不全状態になると極めて救命率が低いため,診断後可及的速やかに治療介入が必要であると考えられる.ステロイド大量療法・シクロスポリン内服・シクロホスファミド間歇静注療法(IVCY)の3剤を併用した強力免疫抑制レジメンを用いることで,同抗体陽性例の予後が改善した.特に疾患活動性を反映することが報告されている血清フェリチン値は,IVCY投与約2週後に低下する傾向を認め,IVCYが同抗体陽性例の治療においてキードラッグとなることが示唆された.
  • 坪井 洋人, 飯塚 麻菜, 浅島 弘充, 住田 孝之
    2013 年 36 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/28
    ジャーナル フリー
      シェーグレン症候群(SS)は唾液腺炎・涙腺炎を主体とし,様々な自己抗体の出現がみられる自己免疫疾患である.SSでは,種々の自己抗体が検出されるが,SSに特異的な病因抗体はいまだ同定されていない.外分泌腺に発現し,腺分泌に重要な役割を果たすM3ムスカリン作働性アセチルコリン受容体(M3R)に対する自己抗体(抗M3R抗体)は,SSにおいて病因となる自己抗体の有力な候補であると考えられ,近年注目されている.我々のグループの研究で,M3Rのすべての細胞外領域(N末端領域,第1,第2,第3細胞外ループ)に対して,抗M3R抗体の抗体価および陽性率は健常人と比較してSS患者で有意に高値であった.またSS患者において,抗M3R抗体はM3Rの細胞外領域に複数のエピトープを有することが明らかとなった.さらにヒト唾液腺(HSG)上皮細胞株を用いて,塩酸セビメリン刺激後の細胞内Ca濃度上昇に対する抗M3R抗体の影響を解析した.抗M3R抗体の細胞内Ca濃度上昇に対する影響は,抗M3R抗体のエピトープにより異なる可能性が示唆された.興味深いことに,M3R第2細胞外ループに対する抗M3R抗体陽性SS患者のIgGと,我々が作成したM3R第2細胞外ループに対するモノクローナル抗体は,ともにHSG細胞内Ca濃度上昇を抑制した.M3R第2細胞外ループに対する抗M3R抗体は,唾液分泌低下に関与する可能性が示唆された.
      以上の結果より,抗M3R抗体は複数のエピトープを有し,唾液分泌への影響はエピトープにより異なる可能性が示された.抗M3R抗体はSSにおける病因抗体としての可能性のほか,診断マーカーや治療ターゲットとなる可能性も期待される.
  • 鈴木 重明, 関 守信, 鈴木 則宏
    2013 年 36 巻 2 号 p. 86-94
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/28
    ジャーナル フリー
      辺縁系脳炎とは帯状回,海馬,扁桃体などの障害により精神症状,意識障害,けいれんなどの症状を呈し,原因は多岐にわたっている.近年,自己免疫性の辺縁系脳炎に注目が集まっており,新規抗原分子がいくつか同定され,その疾患概念は拡大している.自己抗体介在性辺縁系脳炎には特定の腫瘍が合併することがあり,傍腫瘍性神経症候群としての側面も有している.神経細胞の細胞膜抗原である,N-methyl-D-aspartate(NMDA)受容体に対する新規自己抗体が卵巣奇形腫に随伴する傍腫瘍性脳炎に特異的に存在することが報告された.抗NMDA受容体脳炎は重篤かつ特徴的な臨床経過をとり,適切な免疫療法により回復可能な辺縁系脳炎であり,神経内科領域はもとより,精神科,婦人科領域でも認知されるようになった.抗NMDA受容体脳炎の典型例においては,前駆期,精神病期,無反応期,不随意運動期および緩徐回復期のステージに分けることができる.抗NMDA受容体抗体の測定はHEK293細胞を用いたcell-based assayが基本であり,自己抗体が辺縁系脳炎の病態に深く関与している.治療は早期の腫瘍摘出と免疫療法(ステロイドパルス療法,大量免疫グロブリン,血漿交換療法あるいはリツキシマブ,シクロフォスファミド)が神経学的予後には重要である.
  • 松本 雅則
    2013 年 36 巻 2 号 p. 95-103
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/28
    ジャーナル フリー
      血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は,血小板減少と溶血性貧血を特徴とし,全身に血小板血栓が形成されることで発症する.無治療では90%以上の症例が早期に死亡する致死的疾患であるが,von Willebrand因子(VWF)切断酵素ADAMTS13活性が著減することで発症することが報告された.ADAMTS13が欠損すると,血管内皮細胞から分泌された超高分子量VWFマルチマー(UL-VWFM)が切断されずに切れ残り,高ずり応力下で微小血管に血小板血栓が形成される.後天性TTPはADAMTS13自己抗体により,先天性TTPはADAMTS13遺伝子異常によって,同活性が低下する.抗ADAMTS13自己抗体には,活性中和抗体と血液中から酵素の除去を促進する可能性のある非中和抗体がある.大部分のADAMTS13自己抗体はIgGで,認識部位はスペーサードメインであるが,この部位はADAMTS13がVWFと結合する際に重要である.後天性TTPにおいて血漿交換は,ADAMTS13自己抗体やUL-VWFMの除去,ADAMTS13の補充などの機序によって有効である.ステロイド治療がADAMTS13抗体産生抑制のために通常使用されるが,最近の研究では,リツキシマブが後天性TTPの急性期治療に有効であることが報告された.
原著
  • 林 伸英, 熊谷 俊一, 大沼 健一郎, 生戸 健一, 杉山 大典, 三枝 淳, 河野 誠司
    2013 年 36 巻 2 号 p. 104-114
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/28
    ジャーナル フリー
      本邦に導入されている第2世代および第3世代抗CCP抗体試薬9種類について,関節リウマチ(RA)89例,RA以外の膠原病(非RA)121例,変形性関節症(OA)47例,慢性炎症性疾患142例および健常人168例を対象とし,精度および抗体価の相関や判定一致率を比較検討した.9種類試薬の同時再現性は変動係数(CV)0.7~8.5%,日差再現性はCV 0.6~8.3%であった.第3世代試薬のカットオフ値を50 Unitsに変更すれば,9種類全体で96.8~99.6%と高い一致率になり,RAの感度は75.3~78.7%,非RA,OA,慢性炎症性疾患および健常人での特異度はそれぞれ93.4~97.5%,97.9%,96.5~98.6%,98.8~100%と優れた診断精度が確認できた.抗体価の相関性では第2世代試薬の一部と第3世代試薬を除けばrs=0.95~0.99と比較的保たれていたが,第3世代試薬は異なる抗体価の動態を示していた.本邦に導入されている9種類の抗CCP抗体検査試薬はいずれも日常試薬として使用できる性能を有していたが,2010 RA分類基準の高力価(基準値上限の3倍以上)検体については試薬によって不一致例が存在し,スコアリングに差がでる可能性があり問題である.
症例報告
  • 大谷 一博, 野田 健太郎, 浮地 太郎, 金月 勇, 黒坂 大太郎
    2013 年 36 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/04/28
    ジャーナル フリー
      症例は39歳女性,発熱精査のため入院となった.両眼のブドウ膜炎,両側耳下腺腫脹,および左三叉神経第2枝領域に感覚異常を認めた.胸部X線では両側肺門部リンパ節腫脹を認めた.耳下腺を生検した所,リンパ球浸潤と多核巨細胞を認める非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の病理組織学的所見を得た.以上よりサルコイドーシスの1亜型である不全型Heerfordt症候群と診断した.不全型Heerfordt症候群において顔面神経麻痺を伴わず第V脳神経麻痺のみを呈していた例は我々の調べた範囲では本邦では報告されておらず稀な症例と考えられた.
Case Report
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