45歳女性.昭和59年5月中旬より発熱,全身紅斑と全身リンパ節腫大が出現.その際LDHは929IU/
lで各分画明瞭で,免疫混合法にてanomalyを認めなかった.末梢血白血球数は20,900/μ
l,その内好酸球18%.プレドニゾロン(PSL) 30mg/日投与にて軽快退院した.翌年2月再び発熱と全身紅斑出現.末梢血白血球数は31,800/μ
l,その内成熟型好酸球42%.胸骨骨髄像で成熟型好酸球9.2%.便虫卵は認めず. LDHは高度に増加し,アイソザイムは各分画が不明瞭で,免疫混合法にてLDH-IgG, A, M (κ, λ)を認めた(分子量52万).軽度の心陰影拡大と心のう液貯留があり,皮膚生検でAcanthosisと血管周囲の好酸球浸潤があったが,血管炎認めず. hypereosinophilic syndromeとして3月よりPSL 40mg/日投与したところ,徐々に解熱し,全身紅斑,心のう液は消失,末梢血好酸球も消失した.第2回入院時昭和60年3月中旬LDHは1,182IU/
l,アイソザイムは各分画が不明瞭で, 1-5型のanomalyで,免疫混合法にてLDH-IgG, A, M (κ, λ)を認めた. 3月中旬よりPSL投与を開始したところ, LDHは10月頃正常化した. 3月末anomalyパターンは3-5型で, LDH-IgG, A (κ, λ)を認めた. 4月中旬anomalyパターンは3-5型で, LDH-IgG (κ, λ)を認めた. 5月末anomaly消失し,免疫混合法でも認めなかったが,冷蔵2週間後の同血清で3-5型のanomalyが出現し,免疫混合法でLDH-IgG (κ, λ)を検出した.昭和61年5月末LDHは231IU/
lでアイソザイムの各分画は明瞭で,免疫混合法でもanomaly認めず,冷蔵2週間後の同血清でも検出できなかった.本症例はLDH-Igの成立機序を考える上で3つの点で興味がもたれる. 1)第1回入院時LDHが高値であったが, anomalyは認めず,再入院時にLDHが増加した際にanomalyが出現した. 2)加療にてLDH-IgM, IgA, IgGの順に消失した. 3)経過中採血時の血清中にanomalyを認めず,冷蔵2週間後の同血清にanomalyを認めた.
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