日本臨床免疫学会会誌
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29 巻, 1 号
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総説
  • —Revival of interests in Mikulicz's disease—
    山本 元久, 鈴木 知佐子, 苗代 康可, 高橋 裕樹, 篠村 恭久, 今井 浩三
    2006 年 29 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
      ミクリッツ病は,涙腺,唾液腺が対称性に腫脹する原因不明の疾患である.病理組織学的な類似性から,現在はシェーグレン症候群の一亜型と認識されている.しかし臨床的には,ミクリッツ病の腺腫脹は持続性であり,腺分泌障害は軽度で,ステロイド反応性である.血清学的にも抗SS-A/SS-B抗体をはじめ,自己抗体に乏しい特徴を有する.またミクリッツ病では,高IgG4血症を呈し,その腺組織中にシェーグレン症候群では観察されない,著明なIgG4陽性形質細胞浸潤を認めることが明らかになった.このようなIgG4の関与が示唆されている病態には,自己免疫性膵炎,間質性腎炎,自己免疫性下垂体炎などがあり,これらの疾患は同一患者での合併が認められ,共通する病態基盤の存在が示唆されている.ミクリッツ病はシェーグレン症候群とは異なる病態であり,IgG4の関連する全身性疾患(IgG4-related plasmacytic disease)の一表現型である可能性が示唆される.
  • 新田 剛, 高浜 洋介
    2006 年 29 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
      中枢性トレランスは胸腺における幼若T細胞のレパトア選択によって形成され,自己の抗原に反応する免疫応答を防いでいる.幼若T細胞は,そのTCRの抗原特異性によって成熟(正の選択)か死(負の選択)という全く異なる運命を辿るが,それらの過程は別個の細胞内シグナル伝達経路によって制御されている.特に,TCR複合体に会合するZAP-70の機能異常,あるいは負の選択を制御するアポトーシス誘導因子Bimの欠損は,自己トレランスの破綻と自己免疫疾患をもたらす.さらに,レパトア選択の過程から分化するCD25+CD4+制御性T細胞は末梢における自己トレランスの維持に重要であり,その分化には転写因子Foxp3が必要である.一方,中枢性トレランスの確立には,幼若T細胞を取り巻く胸腺微小環境が必要である.胸腺髄質の形成に必要なNF-κB活性化経路,髄質上皮細胞での組織特異的抗原の発現を制御する因子AIRE,幼若T細胞の皮質から髄質への移動に関わるCCR7シグナル等が明らかにされており,これらの分子の機能異常はいずれも自己免疫疾患をもたらす.
  • 長谷 耕二, 大野 博司
    2006 年 29 巻 1 号 p. 16-26
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
      消化管などの粘膜表面は常在菌や食餌由来抗原に絶えず暴露されている.こうした無害な抗原に対して粘膜上皮細胞は免疫応答を示さないが,侵襲性の病原性細菌に対しては,これを感知し速やかに抗菌ペプチドやCXC型ケモカインを産生して,局所における防御機構を惹起する.経口免疫寛容やIgA産生などの粘膜免疫応答が正常に行われるためには,パイエル板などの粘膜関連リンパ組織(mucosal-associated lymphoid tissue, MALT)に外来抗原が効率的に採取される必要がある.その中心的な役割を担っているのが,リンパ濾胞上皮(follicle-associated epithelium, FAE)に存在するM細胞である.M細胞以外にも,上皮細胞はFcRnを介して抗原サンプリングを行っている.また絨毛上皮直下に存在する樹状細胞(DC)も管腔内に樹状突起を伸ばして直接抗原サンプリングを行うが,その際には上皮細胞に発現するFractalkine/CX3CL1が重要な役割を果たしている.上皮細胞はpolymeric Ig receptor (pIgR)を発現し,粘膜固有層で産生された分泌型IgAの管腔内へのトランスサイトーシスを行うのみならず,樹状細胞(DC)の分化を促しTh2反応を促進するなど,より積極的な役割を担うことも分かってきた.本稿では,粘膜上皮細胞に特徴的な生体防御機構と粘膜免疫系の恒常性維持における役割について概説する.
  • 三宅 幸子
    2006 年 29 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
      NKT細胞は,NKマーカーを発現するT細胞の総称だが,その多くはT細胞受容体(TCR)アルファ鎖に可変性のないinvariant鎖(マウスではVα14Jα281,ヒトではVα24JαQ)を発現するiNKT細胞である.iNKT細胞は,多型性のないCD1d分子により提示された糖脂質を抗原として認識し,TCRを介した刺激によりIL-4, IFN-γを短時間で大量に産生することから,その免疫調節機能が注目されている.抗原受容体の半可変性,クローン性の増殖を必要とせず組織に多数存在し,すぐに反応を開始できることなどは自然免疫系と獲得免疫系の中間的存在で,様々な免疫の初期応答や,自己免疫等の調節に重要である.また,α-ガラクトシルセラミドやその誘導体であるOCHなどの合成糖脂質抗原を用いて,NODマウスにおける糖尿病や実験的自己免疫性脳脊髄炎,コラーゲン関節炎などの臓器特異的自己免疫性疾患の抑制や癌抑制,ウイルス性肝炎抑制などを行う試みが報告され,iNKT細胞は様々な疾患治療の標的としても注目されている.
原著
  • 南 留美, 酒井 好古, 宮村 知也, 山本 政弘, 末松 栄一
    2006 年 29 巻 1 号 p. 37-42
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
      制御性T細胞は自己免疫寛容の維持に重要であり,その異常は自己免疫疾患の原因と考えられる.我々は関節リウマチ患者末梢血中のCD4+CD25+制御性T細胞数を測定し,疾患活動性に与える影響について検討した.さらに全身性エリテマトーデス(SLE),強皮症(SSc)においてもCD4+CD25+制御性T細胞を測定し関節リウマチとの比較を行った.対象は関節リウマチ(RA)101名,全身性エリテマトーデス(SLE)38名,強皮症(SSc)17名.末梢血中のCD4+CD25+制御性T細胞数をフローサイトメトリーで測定した.RAではCD4+CD25+制御性T細胞数が低下,特にCD4陽性細胞に占めるCD4+CD25+制御性T細胞の比率は有意に低下していた.また疾患活動性の高い群においてCD4+CD25+制御性T細胞数が有意に低下していた.一方,IL-10は活動性の高い方が高値を示した.以上よりCD4+CD25+制御性T細胞がRAの発症,進行を抑制しておりその作用はIL-10非依存性であると考えられる.SLE, SScに関してはCD4+CD25+制御性T細胞数はコントロールに比して統計学的有意差を認めず,病態への直接的な関与は少ない可能性がある.
      リウマチ性疾患において制御性T細胞は発症,疾患活動性に重要な役割を果たしている可能性があるが,関与の仕方は疾患により異なることが示唆された.
症例報告
  • 村山 淳子, 淺沼 ゆう, 津田 篤太郎, 西田 淳二, 森口 正人
    2006 年 29 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/02/28
    ジャーナル フリー
      症例は48歳女性.心窩部痛にて当院を受診し,高度の貧血(Hb 4.6 g/dl)と左足背に紅斑を認めて入院となった.骨髄所見で赤芽球系の低形成を認め,赤芽球癆(PRCA)と診断した.また,左足背紅斑の病理組織所見で小動脈微小血栓を認め,IgG型β2グリコプロテインI依存性抗カルジオリピン抗体およびループスアンチコアグラントが陽性で深部静脈血栓症の既往があることから,抗リン脂質抗体症候群(APS)と診断.ステロイドパルス療法とワーファリンによる抗凝固療法を開始し,貧血および皮疹は改善した.ステロイド漸減中の5月頃より不安焦燥感,抑鬱気分などの精神症状が出現.抗リボゾームP抗体陽性で,中枢神経系ループスによる精神症状と診断し再度入院.ステロイドパルス療法にて改善せず,シクロフォスファミドパルス療法を追加したところ,精神症状の改善を認めた.PRCAとAPSの合併は非常に稀であるが,本例ではさらに中枢神経ループスを併発した点が特徴的で,いずれも自己抗体を介した免疫学的機序の関与が示唆された.
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