自己免疫性甲状腺疾患患者血中の甲状腺膜抗原抗体系について補体結合反応,二重免疫拡散法,螢光抗体法,
86Rbを使用したcytotoxic test,
51Cr標識にょるAntibody-dependent cell-mediated cytotoxicity (ADCC) assayにより検討した.
補体結合反応による検討ではマイクロゾーム分画,細胞膜分画をもちいたものでは補体結合性は強く両者は正の相関をしていた.
二重免疫拡散法ではTriton X-100による可溶化膜抗原の使用により抗甲状腺抗体の検出は可能であり,橋本病とグレーブス病患者血清の抗マイクロゾーム抗体の沈降線は完全に一致していた.また細胞膜抗原抗体系の沈降線はマイクロゾーム抗マイクロゾーム抗体系の沈降線に完全に一致していた.甲状腺マイクロゾーム免疫ラット血清と可溶化甲状腺マイクロゾーム分画との間には自己免疫性甲状腺疾患患者血清中に認められるマイクロゾーム抗マイクロゾーム抗体系に完全に一致する沈降線が認められた.
螢光抗体法による検討では甲状腺細胞質内および細胞表面はmicrosome hemagglutination (MCHA)高値の橋本病及びグレーブス病患者血清で同様に染色され, FITC標識患者血清を用いた抑制試験で非標識患者血清前処理にて細胞質内及び細胞表面染色は著明に抑制された.しかし甲状腺マイクロゾーム分画免疫ラット血清前処理では細胞表面染色は抑制されたが細胞質内染色は抑制が明らかでなかった.培養遊離甲状腺細胞使用による患者血清より分離した抗細胞膜抗体にても細胞質内が一様に染色され,螢光抗体抑制試験では甲状腺マイクロゾーム分画免疫ラット血清前処理にても細胞質内染色の抑制は明らかでなかった.
86Rb使用によるcytotoxic testではcytotoxicityは橋本病,グレーブス病ともに認められ,その活性はMCHAと正の相関があった. ADCC活性も橋本病,グレーブス病共に認められ,その活性はMCHAと正の相関があった.
以上より抗マイクロゾーム抗体と抗細胞膜抗体は同一であり,橋本病とグレーブス病の抗マイクロゾーム抗体は同一であると考えられた.
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