日本臨床免疫学会会誌
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34 巻, 2 号
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特集:皮膚の臨床免疫
総説
  • 佐藤 貴浩
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 2 号 p. 63-69
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
      好塩基球はその機能や形態においてマスト細胞と類似点が多い.しかし通常末梢組織には存在せず,また末梢血にもわずかしか認められないことからその存在意義はあまり注目されてこなかった.これにはマウスやヒトの組織では好塩基球の存在が通常の染色で確認できなかったことも一因となっている.しかし近年のマウスを用いた研究の進歩により,好塩基球が種々の機能を有していること,そしてマスト細胞とは異なった存在意義を持つことなどが明らかにされてきている.Th2型サイトカイン・ケモカイン産生,抗原呈示細胞としての機能,マダニ排除機構における役割,IgE依存性慢性皮膚アレルギー反応やIgG依存性アナフィラキシーの誘導などがその例である.またヒト皮膚組織においても従来考えられていた以上に多様な皮膚疾患において好塩基球浸潤がみられることがわかってきている.これら皮膚疾患の病態における好塩基球の関与と治療の標的としての評価が待たれる.
  • 川村 龍吉
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 2 号 p. 70-75
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
      世界における新規ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の約8割は異性間の性的接触による.粘膜・皮膚表皮内ランゲルハンス細胞(LC)は,HIV感染初期においてHIVに対する初期免疫応答の誘導に重要な役割を担っている.さらに,LCに発現されるLangerinに捕獲されたHIVは不活化を受けることが最近明らかとなり,LCはHIVの侵入を防ぐバリアーとしても機能する.一方,Langerinによる不活化を免れたHIVは,CD4/CCR5を介してLCに感染し,これを足がかりとして生体内に侵入する(LCのPrimary gate keeper model).このように,LCはHIV感染初期に宿主にとって功罪様々な役割を担う.近年,世界的なHIVの流行を阻止するために,コンドーム以外の方法で性行為HIV感染を予防する外用マイクロビサイドの開発が試みられている.また,HIV以外の性感染症(STD)保有者のHIV感染リスクが数倍~数十倍高くなることから,STD治療も予防戦略の主軸となっている.最近,これらのHIV感染予防戦略がLCを介したHIVの生体内侵入に密接に関与していることが明らかとなりつつある.
  • 久保 亮治
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 2 号 p. 76-84
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
      生命にとって自己と外界を区切るバリア構造を持つことは,生体内部のホメオスターシスを保ち,生命活動を維持するために必須である.我々の身体の表面,すなわち皮膚の最外層では重層扁平上皮のシート(表皮)とその表面を覆う角質層がバリアとして働いている.上皮細胞シートにおいては,細胞自体を物質が通過しようとする場合(transcellular pathway)は細胞膜がバリアとして働き,細胞と細胞の隙間を物質が通過しようとする場合(paracellular pathway)は細胞間を密に接着するタイトジャンクション(TJ)がバリアとして働く.角質層とTJによるバリアの内側には様々な免疫系の細胞が存在し,外来物質の侵入に備えている.表皮内にはランゲルハンス細胞と呼ばれる樹状細胞が存在し,表皮細胞間に網目のように樹状突起を張り巡らせている.ランゲルハンス細胞は通常,TJバリアの内側に留まるが,活性化すると表皮TJバリアの外側に樹状突起を伸ばし,樹状突起の先端部分より抗原取得を行う性質を持つことを,我々は見出した.外敵との闘いの最前線における索敵活動のように見える本現象について詳しく解説する.
  • 阿部 理一郎
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 2 号 p. 85-90
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
      これまでの再生医学領域の研究により,骨髄細胞は種々の組織細胞に分化することが明らかとなった.表皮細胞においても骨髄細胞から分化しうることが報告されている.このコンセプトに基づきすでに多くの各臓器疾患に対して骨髄細胞を用いた治療が試みられている.皮膚疾患においては,表皮水疱症(先天性基底膜構造タンパク欠損症)に対して同種骨髄移植を行い,ドナー骨髄幹細胞を表皮細胞へ分化させ,欠損基底膜タンパクを産生させることにより,本症の根治を目指すことができることが期待される.
      我々は,骨髄幹細胞の表皮細胞への分化について,表皮細胞分化能を持つ細胞の詳細な同定,末梢血液からの皮膚への遊走過程の解明,さらにはより臨床改善効果を来たす骨髄移植方法の検討を行った.これらの基礎研究に基づき,骨髄幹細胞は表皮水疱症を始めとした先天性皮膚疾患の新たな治療手段となり得ると考える.
  • 菅谷 誠
    原稿種別: 総説
    2011 年 34 巻 2 号 p. 91-98
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
      ケモカインとその受容体は,特定の臓器や細胞集団に発現する.皮膚のリンパ腫は腫瘍細胞が皮膚という特定の臓器に限局することから,ケモカインがその病態に関与していることが考えられる.皮膚のリンパ腫の代表的な疾患である菌状息肉症・セザリー症候群において,CCL17,CCL27,CCL11,CCL26などのケモカインが病態に関与していることを,これまで我々は報告してきた.これらは皮膚病変部で発現しているだけでなく,血清中でも正常人と比べて上昇しており,病勢マーカーとして有用である.またCXCL9,CXCL10は表皮向性,CCL21はリンパ節への浸潤,CXCL12は腫瘍細胞のCD26発現低下と関係していることが知られている.さらにCXCL13は皮膚へのB細胞の浸潤,CCR3はCD30陽性リンパ増殖症との関与が考えられている.CCR4を治療のターゲットとした抗体療法が,CCR4陽性T細胞リンパ腫とアレルギー性疾患に対して開発されつつあり,今後もケモカインと受容体に関する研究よってリンパ腫の分類や病態解明,新しい治療の開発が進むことが期待される.
症例報告
  • 上田 洋, 高橋 裕子, 山下 裕之, 金子 礼志, 三森 明夫
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 34 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
      【症例】43歳女性.32才で顔面紅斑,血球減少,免疫異常を呈し,全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され,ステロイド治療で軽快した.33~36才時に播種性の円板状皮疹,39才時に免疫性血小板減少を伴うSLE再燃を反復し,治療時は著しいステロイド精神病を伴った.2007年2月(43歳),1 g/日以下の尿蛋白と血清異常を伴うループス腎炎を初発したため,プレドニゾロンを35 mg/日に増量,シクロフォスファミドパルス療法(IVCY ; 1000 mg/m2)を計6回施行し,腎炎は寛解し尿蛋白は陰性化した.同年10月,NYHA II度の労作時息切れを自覚し,胸部X線上左第2弓の突出,心エコーで右心圧較差ΔP=45~50 mmHgを伴う右室負荷所見,血清BNP 260 pg/mlを認めた.間質性肺炎や肺塞栓症所見はなく,SLEに伴う肺動脈性高血圧症(PAH)と診断した.PAHは,十分な免疫抑制薬使用下に発生したため免疫抑制治療は強化せず,維持ステロイド薬にボセンタンのみ追加したところ,PAHは改善し,46才現在までに右心圧較差消失,BNP正常化を認めている.【考察】SLEに伴うPAHは,免疫抑制治療に反応することが知られているが,免疫抑制治療中に出現したことは異例と思われる.SLEのPAHが不均一な病態であることを示唆する貴重な一例として報告する.
  • 横山 忠史, 清水 正樹, 池野 郁, 橋田 暢子, 藤田 修平, 市村 昇悦, 畑崎 喜芳, 新谷 尚久, 谷内江 昭宏
    原稿種別: 症例報告
    2011 年 34 巻 2 号 p. 105-111
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/31
    ジャーナル フリー
      全身型若年性特発性関節炎(systemic-onset juvenile idiopathic arthritis : s-JIA)の治療中に,突然の高熱を来たし,急速に白血球数や血小板数の減少が進行し凝固異常などを呈する場合,マクロファージ活性化症候群(macrophage activation syndrome : MAS)への移行を考慮する必要がある.一方,敗血症においても同様の臨床像を呈することがあり,治療方針を決定する上で両者の鑑別は非常に重要となる.今回我々はs-JIAの治療中に敗血症を合併しMASとの鑑別を要した1歳5ヶ月女児例を経験した.本症例では,全経過を通してInterleukin (IL)-18が著明な高値を呈し,敗血症合併時にはプロカルシトニンが強陽性となり,IL-6が他のMAS合併症例と比較し著明な高値を呈していた.本症例の経験からサイトカインプロファイルによるモニタリングは,s-JIA症例の病態や経過の把握やMASと敗血症の鑑別に非常に有用であると思われた.
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