【症例】43歳女性.32才で顔面紅斑,血球減少,免疫異常を呈し,全身性エリテマトーデス(SLE)と診断され,ステロイド治療で軽快した.33~36才時に播種性の円板状皮疹,39才時に免疫性血小板減少を伴うSLE再燃を反復し,治療時は著しいステロイド精神病を伴った.2007年2月(43歳),1 g/日以下の尿蛋白と血清異常を伴うループス腎炎を初発したため,プレドニゾロンを35 mg/日に増量,シクロフォスファミドパルス療法(IVCY ; 1000 mg/m
2)を計6回施行し,腎炎は寛解し尿蛋白は陰性化した.同年10月,NYHA II度の労作時息切れを自覚し,胸部X線上左第2弓の突出,心エコーで右心圧較差ΔP=45~50 mmHgを伴う右室負荷所見,血清BNP 260 pg/mlを認めた.間質性肺炎や肺塞栓症所見はなく,SLEに伴う肺動脈性高血圧症(PAH)と診断した.PAHは,十分な免疫抑制薬使用下に発生したため免疫抑制治療は強化せず,維持ステロイド薬にボセンタンのみ追加したところ,PAHは改善し,46才現在までに右心圧較差消失,BNP正常化を認めている.【考察】SLEに伴うPAHは,免疫抑制治療に反応することが知られているが,免疫抑制治療中に出現したことは異例と思われる.SLEのPAHが不均一な病態であることを示唆する貴重な一例として報告する.
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