日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
30 巻, 6 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 臼井 崇
    2007 年30 巻6 号 p. 419-427
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/31
    ジャーナル フリー
      抗原特異性を持つCD4+ヘルパーT細胞(Th細胞)は,獲得免疫機構において中心的な役割を担っている.Th細胞は胸腺で教育・選択を受けた後,末梢組織に分布し,抗原提示細胞による刺激を受けると,周囲のサイトカイン環境や副刺激の種類により,IFN-γを主に産生するTh1細胞,IL-4, 5, 13を主に産生するTh2細胞,あるいはIL-17を主に産生するTh17細胞という少なくとも3種類の異なるエフェクター細胞へと分化し,それぞれ細胞性免疫,液性免疫,炎症免疫機構を担っている.Th1分化にはIL-12, STAT4, T-betシグナルが,Th2分化にはIL-4, STAT6, GATA3シグナルが,そしてTh17分化にはIL-1β, TGF-β, IL-6, IL-23, STAT3, RORγtシグナルが重要である.特に最近その概念が確立され,独立したエフェクターCD4+ T細胞であるTh17細胞の解析により,これまでのTh1-Th2パラダイムだけでは説明できなかった多くの炎症病態が説明可能になってきている.今後は,このIL-17制御を目的にとした新たな薬剤開発が活発となるであろう.
  • 岩本 雅弘
    2007 年30 巻6 号 p. 428-431
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/31
    ジャーナル フリー
      成人発症Still病と反応性マクロファージ活性化症候群は症状や検査所見に類似性があるばかりか,成人発症Still病それ自体が反応性マクロファージ活性化症候群を惹起することがあり,その鑑別診断はしばしば困難である.成人発症Still病の治療による免疫不全状態が潜在ウィルスを再活性化させ,反応性マクロファージ活性化症候群を生じさせることもある.また,成人発症Still病の治療薬が反応性マクロファージ活性化症候群を生じることもある.故に,その病態の理解は複雑であり,その治療も原因によって慎重な検討が必要である.
  • 折口 智樹, 一瀬 邦弘, 玉井 慎美, 中村 英樹, 川上 純, 江口 勝美
    2007 年30 巻6 号 p. 432-443
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/31
    ジャーナル フリー
      血管炎症候群においては,ANCAの発見によりその発症機序,病態が明らかにされつつある.感染症などを契機としてTNFαなどの炎症性サイトカインが誘導され,それによって細胞膜表面に露出した細胞質内顆粒構成成分に結合したANCAは血管内皮細胞とも結合し,溶解酵素および活性酸素を放出して傷害することが明らかになっている.ANCAの産生についても細菌菌体成分との分子相同性が関与している可能性が示唆されている.治療については,The European Vasculitis Study Group (EUVAS)が積極的に臨床試験を実施し,ステロイド薬とシクロフォスファミドを中心とした免疫抑制薬の併用療法についての治療について確立している.さらに,生物学的製剤の投与についても有効であるとの報告が増えてきているが,有害事象の報告もみられ,その投与に当たっては注意が必要である.
  • 平形 道人
    2007 年30 巻6 号 p. 444-454
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/31
    ジャーナル フリー
      多発性筋炎/皮膚筋炎(polymyositis/dermatomyositis : PM/DM)は,筋力低下を主徴とする慢性炎症性疾患で,その臨床像は多彩である.本疾患においても他の膠原病と同様,種々の細胞成分に対する自己抗体が高率に検出される.特に,PM/DMに特異的に見出される自己抗体(myositis-specific autoantibodies ; MSAs)は,診断,病型の分類,予後の推定,治療法の決定など臨床的に有用である.さらに,かかる自己抗体が標的とする自己抗原が細胞内の重要な生物学的機能を持つ酵素や調節因子であることが同定され,自己抗体産生機序を考える上で重要な情報をもたらしている.とくに,PMに特異的な抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体や抗SRP抗体などが蛋白合成・翻訳と関連する細胞質蛋白を標的するのに対し,DMに特異的な抗Mi-2抗体や抗体p155抗体などが核内転写調節因子を標的とすることは,自己抗体と病態形成との関連を考える上で注目される.さらに,従来,自己抗体が稀とされてきた,amyopathic DMの抗CADM-140抗体や悪性腫瘍関連筋炎の抗p155抗体は早期診断・治療など臨床的に有用なばかりでなく,これらの疾患の病因追究に大きな手掛かりを与えるものと期待される.本稿ではPM/DMにおける自己抗体とその対応抗原や臨床的意義について,最近の知見を含め概説する.
  • 河南 崇典, 松崎 有未, 澤木 俊興, 坂井 知之, 金 哲雄, 正木 康史, 福島 俊洋, 田中 真生, 梅原 久範
    2007 年30 巻6 号 p. 455-460
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/31
    ジャーナル フリー
      シェーグレン症候群では,唾液腺機能の廃絶がみられる.一度萎縮し,廃絶した唾液腺機能の回復は現在のところ困難であり,唾液腺組織の再生,機能回復を目的とした根治的療法が強く望まれている.我々は唾液腺の再生医療を目的として,ヒト口唇小唾液腺培養細胞中の唾液腺組織幹細胞の同定を行った.表面マーカーに依存しない幹細胞に共通した性質を利用したside population(SP)法を施行し,幹細胞が高い割合で含まれる細胞群の遺伝子発現解析を行ったところ,前立腺の前駆・幹細胞マーカーとして報告されているPSCA,また上皮幹細胞の増殖と分化制御に関わるDNp63の特異的な発現を見いだした.培養に伴う発現変動を観察したところ,ヒト唾液腺培養上皮細胞は培養初期にDNp63を発現し,その後,経時的にその発現を低下させ,その後にPSCAが発現する経時的な発現変化を示した.PSCAは前立腺の発生・再生過程において,その発現動態が変化する分子として報告されている.その発現動態より,ヒト唾液腺培養細胞内の分化過程にある前駆細胞群を示すものと考えられる.また,DNp63は上皮幹細胞の増殖と分化制御に関わることから,今後,唾液腺におけるPSCAとDNp63の解析を行うことで,ヒト唾液腺組織幹細胞の同定と,その発生・再生過程について更なる知見が得られるものと考えている.
症例報告
  • 関口 康宣, 森 茂久, 青木 和利, 樋口 敬和, 西田 淳二
    2007 年30 巻6 号 p. 461-466
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/12/31
    ジャーナル フリー
      患者は69歳の男性.1994年5月に右手関節痛が出現し関節リウマチ(以下RA)と診断され,金チオリンゴ酸ナトリウム(以下GST)が投与され関節痛は軽快した.2003年1月より多発関節痛が増悪したため,同年8月埼玉社会保険病院リウマチ膠原病内科受診となった.GSTを中止し,サラゾスルファピリジン(以下SASP)へ変更し,多発関節痛は軽快した.2005年3月より発熱,汎血球減少,肝機能障害が出現したため同科入院となった.SASPによる薬剤性の造血および肝機能障害を疑い,入院後はSASPを中止しプレドニゾロン(以下PSL)10mgへ変更した.その後も症状が継続するため骨髄検査を施行し,急性リンパ性白血病(以下ALL)(PreB, L2)と診断した.4月8日自治医科大学付属大宮医療センターへ転院となり,JALSG-ALL202-Oのプロトコールによる寛解導入療法を開始したが,嚥下困難,胆道系酵素の上昇を認めたため途中で中止した.その後完全寛解(以下CR)を確認したものの誤嚥性肺炎を度々繰り返し,胃癌の併発,経口摂取不能など全身状態不良のため化学療法の継続は不可能と判断し,対症療法のみ行った.9月28日埼玉社会保険病院リウマチ膠原病内科へ再転院となった.ALLはCRで,無治療にてRAの活動性も認めなかったが,肺炎のため2006年8月1日死亡した.
feedback
Top