気管支喘息の病態は,いろいろの要素によって影響を受ける.その主要要素の1つは,血清IgE値であり,他の1つは,加齢による変化である.そして,この2つの主要要素が互いに影響しあうことによって,それぞれ異なった喘息の病態が形成される.本研究では,喘息の病態として特徴的なヒスタミンやロイコトリエン遊離,および炎症性細胞反応に対する血清IgE値および加齢の影響について若干の検討を加えた.
対象および方法:対象としては,気管支喘息64例を選んだ.気管支肺胞洗浄液(BALF)中の細胞成分の出現頻度は,塗抹標本上で上皮細胞を除いて細胞を500個観察し,それぞれの細胞の出現頻度を百分率で表した.また,白血球からのヒスタミンおよびロイコトリエンC
4, B
4遊離は, Ca ionophore A 23187(1μg)刺激により観察した.そして,ヒスタミンは自動分析装置により,またロイコトリエンはHPLCにより測定した.
成績:吸入抗原に対するIgE抗体の陽性頻度は, 20~39歳の年齢層では血清IgE値の高低による差はみられなかったが, 40~59歳の年齢層では,血清lgE値の高い(500IU/m
l以上)症例において,低い症例(200IU/m
l以下)に比べ有意に高い傾向を示した. BALF中リンパ球の出現頻度は, 60歳以上で血清IgE値が高い症例において, 20~39歳および40~59歳の年齢層の症例に比べ,有意に高い値を示した.
白血球からのヒスタミン遊離は, 20~39歳および60歳以上の年齢層では,血清IgE値の高い症例において,低い症例に比べ有意に高い値を示した.また,ロイコトリエンC
4遊離も20~39歳の年齢層では,血清IgE値の高い症例において,低い症例に比べ有意に高い傾向を示した.しかし,ロイコトリエンB
4遊離には,血清IgE値や加齢による差はみられなかった.
抄録全体を表示