日本臨床免疫学会会誌
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32 巻, 3 号
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総説
  • 簗場 広一
    2009 年32 巻3 号 p. 135-141
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      B細胞は抗体産生やT細胞活性化を通じて免疫反応に関与していることは知られていたが,近年になり炎症反応を制御するB細胞が存在することが明らかになった.T細胞の活性化を司るエフェクターB細胞に対して,この免疫を抑制するB細胞はレギュラトリーB細胞と呼ばれている.筆者らは,マウスの脾臓にIL-10産生B細胞が存在することを確認し,これらがCD1dhiCD5+の表現型を有していることを発見した.またアレルギー性接触皮膚炎のモデルである接触過敏反応において,このB細胞がIL-10依存性に炎症を抑制することを明らかにした.さらに多発性硬化症の早期にはレギュラトリーB細胞が優位に働くが,進行するにしたがいエフェクターB細胞が優位に働くことが明らかになった.このようにエフェクターB細胞とレギュラトリーB細胞のバランスが炎症や自己免疫の病態形成に重要であると考えられる.ヒトにおいてもレギュラトリーB細胞の存在が示唆されており,将来さまざまな炎症性疾患や自己免疫疾患などの治療に応用できる可能性がある.
  • 金子 英雄, 鈴木 啓子, 近藤 直実
    2009 年32 巻3 号 p. 142-148
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      IgAはIgA1とIgA2,2つのサブクラスが存在する.各組織でサブクラスの存在比は異なる.IgA2は,細菌のプロテアーゼにより認識されるヒンジ領域のアミノ酸配列を欠いているため,IgA1と比較すると分解されにくく,粘膜面における細菌からの防御に重要である.IgAサブクラスは14番染色体長腕に位置するIgA重鎖遺伝子のα1とα2遺伝子により決定される.クラススイッチに先立ちIα germ-line transcriptsの転写が必要である.IgA欠損症はIgAのみの産生低下を示す免疫不全症であるがIg欠損症の一部はIα germ-line transcriptsの発現が低下しており,クラススイッチ障害がその病態として考えられた.IgA欠損症の血漿中のBAFF, APRILは健常人に比較し有意に高値を示した.サブクラスの発現ではIgA欠損症の多くはα1, α2ともに,発現低下がみられた.α2のみの発現を示したpartial IgA欠損は本邦2例目のα1-pseudoγ-γ2-γ4-ε遺伝子の欠失によるものであった.今後さらに,IgAサブクラスの異常も含めて,その病態が明らかにされることが期待される.
  • 齋藤 和義, 田中 良哉
    2009 年32 巻3 号 p. 149-159
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      関節リウマチ(RA)は滑膜を病態の主座とする全身性自己免疫疾患である.RAの治療の目標は,疾患活動性制御と関節破壊の進展抑制であるが,近年メトトレキサート(MTX)さらには腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor : TNF)に対する阻害療法が登場し,高い疾患制御・骨破壊抑止効果がもたらされた.しかしながら,これらの治療をもってしても寛解導入は約3割であり,効果不十分である症例も少なからず存在する.これらの効果不十分症例に対する新規治療として,ゴリムマブやセルトリズマブなどのTNF阻害剤に加えて,B細胞やT細胞上の表面分子を標的とした生物学的製剤のTNF阻害療法での効果不十分症例に対する有効性が臨床治験にて明らかにされている.さらに,Jak3阻害剤やSyk (Spleen tyrosine kinase)阻害剤など生物学的製剤に匹敵するような臨床効果をもたらす低分子化合物による治療にも期待が高まる.
  • 木村 久仁子, 岩野 正之
    2009 年32 巻3 号 p. 160-167
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      組織線維化は臓器不全に共通の病態である.したがって,線維化の機序を解明することは,臓器不全の進展予防や治療法の開発に重要である.線維芽細胞は線維化において中心的役割を果たす細胞であるが,その起源としてepithelial-mesenchymal transition (EMT),末梢血前駆細胞・骨髄細胞由来,endothelial-mesenchymal transison (EndMT)などが報告されている.細胞を取り巻く微小環境において,低酸素は線維化を誘導する重要な因子である.われわれは,低酸素刺激がhypoxia-inducible factor-1α(HIF-1α)を介して尿細管上皮細胞にEMTを誘導することを報告した.さらに,尿細管上皮細胞で特異的にHIF-1αを欠損あるいは安定発現させた遺伝子改変マウスを用いて,HIF-1αが腎間質線維化を促進させることを証明した.現在,シグナル伝達系を含む多くの線維化関連分子が同定され,これらをターゲットとした治療法の開発が進められている.EMT抑制因子,TGF-βシグナル修飾薬,およびHIF-1α活性阻害薬は線維化の新たな治療薬として期待される.
  • 久松 理一, 日比 紀文
    2009 年32 巻3 号 p. 168-179
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      炎症性腸疾患の病態については遺伝分子生物学・免疫学の進歩による解明が進み,機能分子の同定とそれを標的とする治療法の開発が進んでいる.その最たる成功例がヒトマウスキメラ型抗TNFα抗体であるInfliximabである.Infliximabの登場はクローン病治療体系に革命をもたらし,Top-down therapyとしての早期からの使用や潰瘍性大腸炎への適応の検討も始まっている.また,Infliximabに追随するようにさまざまなTNF阻害剤や新たな分子を標的とした生物製剤が開発され臨床応用されつつある.
原著
  • Hiroki MATSUURA, Akira ISHIGURO, Hiroyuki ABE, Yoko MAMADA, Tetsuomi S ...
    2009 年32 巻3 号 p. 180-185
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      Background: Eosinophils play an important role in allergic responses. Eotaxin is a CC chemokine that promotes the selective recruitment of eosinophils. This study was performed to investigate the significance of eotaxin in pediatric food allergies.
      Methods: The study population included 35 patients with food allergy, 18 patients with atopic dermatitis but without food allergy, and 19 age-matched non-allergic controls. Eotaxin-1 and eotaxin-3 levels in plasma were assayed by enzyme-linked immunosorbent assay. Simultaneously, eosinophil counts in peripheral blood and serum immunoglobulin E (IgE) values were assessed.
      Results: Plasma eotaxin-1 levels were 93.6±33.4 pg/ml in patients with food allergy, 78.0±31.8 pg/ml in patients with atopic dermatitis, and 60.4±15.7 pg/ml in controls. Differences between the food allergy and control groups were significant (P<0.001). Circulating eosinophil counts in patients with food allergy were higher than those in controls (5.84±9.46×109/l vs. 1.20±1.11×109/l, P<0.001). Nevertheless, eotaxin-1 levels in children with food allergy were not correlated with eosinophil counts or serum IgE levels. There were no significant differences in eotaxin-3 levels between the 3 groups.
      Conclusion: Plasma levels of eotaxin-1 were elevated in children with food allergy. The pathophysiological relevance of the increase in eotaxin is discussed.
症例報告
  • Yuki NANKE, Tsuyoshi KOBASHIGAWA, Toru YAGO, Naomi ICHIKAWA, Hisashi Y ...
    2009 年32 巻3 号 p. 186-188
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      Behcet's disease (BD) is a polysymptomatic and recurrent systemic vasculitis with a chronic course and unknown cause. Erosive arthropathy is extremely rare. We report a 52-year-old female patient with BD demonstrating bone erosion of the sternocostal joint.
  • 川尻 真也, 川上 純, 岩本 直樹, 藤川 敬太, 荒牧 俊幸, 一瀬 邦弘, 蒲池 誠, 玉井 慎美, 有馬 和彦, 中村 英樹, 喜多 ...
    2009 年32 巻3 号 p. 189-194
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      症例は63歳女性.2002年,急性腎不全および多発性単神経炎を認め入院.皮膚生検での細動脈の血栓,MPO-ANCA陽性よりANCA関連血管炎と診断.ステロイドパルス療法および血漿交換により寛解導入.MPO-ANCAも陰性化した.以後,病状安定のためステロイド漸減し,2006年8月よりステロイド中止.2007年11月頃より血清Cr上昇,顕微鏡的血尿出現.2008年1月23日,発熱,呼吸困難にて近医受診.血液検査にてCRP上昇,腎不全の急性増悪および胸部X線写真にて両肺に浸潤影を認め,同日近医緊急入院.入院後,血痰および呼吸状態の悪化のため,翌1月24日当院転院.胸部CTにてびまん性浸潤影とスリガラス陰影を認めた.MPO-ANCA陽性化を認め,顕微鏡的多発血管炎の再燃による肺胞出血および急速進行性糸球体腎炎と診断.ICUにて人工呼吸器,持続的血液濾過透析管理.ステロイドパルス療法および血漿交換療法を施行.その後呼吸状態,腎不全の改善あり,人工呼吸器および血液透析離脱し寛解導入できた.維持療法として経口ステロイドにミゾリビンを併用し,短期間の経過観察だが再燃を認めていない.
  • 岩田 直美, 宮前 多佳子, 菊地 雅子, 岸 崇之, 原 良紀, 金子 詩子, 篠木 敏彦, 今川 智之, 稲山 嘉明, 横田 俊平
    2009 年32 巻3 号 p. 195-200
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/06/30
    ジャーナル フリー
      小児期発症シェーグレン症候群の腺性症状に対する治療の有用性について,口唇生検の病理学的検査をもとに検討を行った.一次性シェーグレン症候群6例,全身性エリテマトーデスに伴う二次性シェーグレン症候群2例の計10症例を無治療,短期的治療,長期的治療,積極的治療の4つの治療群に分け,治療前後の口唇生検所見を1) リンパ球浸潤,2) 線維化の程度の2点について検討した.リンパ球浸潤は単位面積に対するフォーカス数,線維化は単位面積に対する線維化の割合について,それぞれ0-3の4段階にスコア化した点数を用いた.その結果,無治療例や短期的治療例では,2回目の口唇生検で依然としてリンパ球浸潤を認め,また線維化の進行が認められた.他方,長期的治療や積極的な治療を行った例で比較すると,リンパ球浸潤の増悪傾向や線維化の進行は軽微であった.本結果より,長期的または積極的免疫抑制療法により,小児シェーグレン症候群の腺組織破壊が抑制できる可能性が示唆された.今後の適応につき,副作用と有用性のバランスを見極めるためにも,症例数を増やした検討が必要である.
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