日本臨床免疫学会会誌
Online ISSN : 1349-7413
Print ISSN : 0911-4300
ISSN-L : 0911-4300
6 巻, 3 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 中嶋 憲章, 小林 和夫, 大瀬戸 美樹, 根岸 雅夫, 韓 啓司, 杉崎 徹三
    1983 年6 巻3 号 p. 139-144
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    RFの測定はRAの臨床検査として広く用いられている.しかし,方法論的には感作赤血球凝集反応およびラテックス凝集反応(LFT)はC〓, γ-globulinなどの非特異的因子の影響を受けやすく,特異性に問題があった.そこで我々はLaser Nephelometer法(LN)を用い,ヒト熱変性IgGを抗原としてRF活性の測定を試み,さらに, RF活性の2ME処理による変動を検討した.
    LN法とLFT法によるRF測定値を新鮮血清で比較すると陽性率には差はないが,長期保存血清および高γ-globulin血清ではLNに比してLFTの陽性率が有意に高く,その原因として非特異的反応の関与を推測された.
    RA患者血清および関節液のRF陽性率はLNでは79%, 60%, LFTでは82%, 64%であり,同検体の2ME処理後のRF陽性率はLNでは21%, 24%, LFTでは34%, 33%であった.肝硬変患者のRF陽性の血清では2ME処理後, RFの陽性率はLN 3%, LFT 11%であった.
    以上のごとくLNによるRFの測定は従来の方法に比し,特異性が高く,かつ定量性に優れていると考えた.また, 2ME処理することにより, non IgM-RF(〓IgG-RF)の測定が可能であると考えた.
  • 数田 康仁, 池田 桂三, 橋本 清保, 堀内 篤
    1983 年6 巻3 号 p. 145-152
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    DNAの微量定量法である3, 5-diaminobenzoic acid dihydrochloride (DABA)を用いたfluorophotometryにより, DNA-抗DNA免疫複合体の測定を試みた. DNA-抗DNA免疫複合体は, SLE患者血清より3.5% PEG precipitationにより分離し, DNA量として測定した.
    活動性SLEでは, 31検体中22検体(71%)が,また,非活動性SLEでは, 48検体中9検体(18.8%)が, DNA-抗DNA免疫複合体陽性を示した.その量は,活動性SLE群において最も高値を示し,非活動性SLE群と比較して有意差が認められた(p<0.01).また,抗DNA抗体価とは,正の相関を示し(r=0.367, p<0.01),低補体価群(CH50〓20)の値は,補体価正常群(CH50>20)よりも有意な高値を示した(p<0.05).しかし,蛋白尿との間には,関連性は認められなかった.臨床経過において, DNA-抗DNA免疫複合体は, prednisoloneでの治療によく反応し,すみやかな低下を示した.
  • 上田 章, 草場 公宏, 岩橋 徳二, 林田 功
    1983 年6 巻3 号 p. 153-159
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    SLE患者血清中の抗DNA抗体を免疫電気向流法,補体結合反応およびラジオアッセイの3法で測定し,抗体の性状と疾患活動性との関連について検討した.さらに,抗DNA抗体の免疫グロブリンクラスについて分析したのでその成績を報告する.
    免疫電気向流法あるいは補体結合反応陽性SLE血清はラジオアッセイでも高い抗体価を示すことが多かった.前2法で熱変性DNAとのみ反応し未変性DNAと反応しない血清の中にも,ラジオアッセイで高い抗体価を示すものがみられた. SLE以外の疾患でのラジオアッセイ陽性率は低く,陽性の場合でも抗体価は40u/ml以下であった.臨床的には非活動性でありながら,持続的にラジオアッセイで抗DNA抗体価高値を示すSLE 6例が見出された.これらの血清においては,補体結合反応や免疫電気向流法によって抗DNA抗体は検出されず,また,免疫複合体は1例のみで高値, 3例で軽度上昇を認めた.血清補体価は正常範囲内,抗ENA抗体は1例で陽性であった.
    抗DNA抗体の免疫グロブリンクラスはおもにIgGクラスに属し,活動性SLE患者血清との間に差は認められなかった.
  • 角田 左武郎, 松本 英彦, 吉屋 誠, 木村 義孝, 南雲 正男
    1983 年6 巻3 号 p. 160-166
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    マクロファージの骨吸収能を検討するため,マクロファージのsourceとしてWistar系雄性ラットの腹腔細胞を用いてin vitroの系で骨吸収能を検討した.骨吸収能は45Caで標識したラット頭頂骨片(あらかじめ死滅させてある)に腹腔細胞を吸着させ, 2~4日間培養して培養上清にreleaseされた45Caを測定し評価した.骨吸収能の実験条件は,培養時間が48時間,腹腔細胞数が1×106 cellsが至適であった.したがってこの条件で検討したところ, paraffinあるいはglycogenで誘導した滲出細胞の骨吸収能が腹腔常在細胞のそれより高いこと,およびシャーレ吸着細胞に骨吸収能のあることが認められた.さらに,滲出細胞と常在細胞の骨吸収能の相違の理由を知るため,ライソゾーム酵素活性および貪食能を比較したところ,滲出細胞の方がいずれも高かった.
  • I.総溶血補体価(CH 50)測定について
    行山 康, 吉田 健三, 広瀬 俊一, 宮本 昭正
    1983 年6 巻3 号 p. 167-174
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    マイクロタイターによる総溶血補体価(CH 50)の測定法について検討した.未溶血で残存する感作赤血球の影響,補体量依存性曲線などを検討の結果,本邦で広く行われているMayer法で測定するのと同様にCH 50が測定可能で,再現性も十分あることが判明した.正常人19例のCH 50は226±56(平均値±標準偏差)で,さらに諸疾患血清をMayer法で測定した場合と本法で得られた値の相関係数は0.92であった.
  • 平野 達雄, 中山 博司, 田渕 純宏, 石井 俊世, 下山 孝俊, 三浦 敏夫, 富田 正雄, 辻 芳郎
    1983 年6 巻3 号 p. 175-185
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ヒト多核好中球(RMN)は腫瘍細胞に対して,おもにその酸化的代謝機構により細胞障害作用をもつことが明らかにされてきた.そこで酸化的代謝活性をみるために, 60人の癌患者と24人の良性疾患患者について,ルミノール(3-aminophthalic hydrazide添加によるPMNのchemiluminescence(CL)を測定した.対照群のピークCL値は45.6±11.6相対強度(relative intensity, RI)であった.胃癌,大腸癌,肺癌,乳癌など癌患者や,消化性潰瘍,潰瘍性大腸炎,胆石症などの良性疾患でいずれも対照群との間に有意差は認められなかったが,深達度が固有筋層以上の進行胃癌のピークCLは26.7±12.7RIであり対照群より有意に低下した(p<0.05).これらの成績から進行胃癌のPMNは酸化的代謝の障害があり,これらのPMNでは抗腫瘍作用や抗菌作用が低下していることが示唆された.
  • 平野 達雄, 中山 博司, 田渕 純宏, 石井 俊世, 下山 孝俊, 三浦 敏夫, 富田 正雄, 辻 芳郎
    1983 年6 巻3 号 p. 186-194
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    多核好中球(PMN)が腫瘍に対してcytotoxicityを有することが明らかにされてきたが,担癌患者のPMN機能については報告が少ない.われわれはアガロース法を用いて癌患者を中心にPMN運動能を検討した.対象は癌64例,良性疾患24例で,健康成人10名を対象とした. 28例の胃癌では走化能,随意運動能(RM)ともに低下し,進行胃癌では著明に低下した.しかし早期胃癌では走化因子により有意に亢進した.大腸癌では有意差はなく,乳癌,肺癌ではRMが低下した.閉塞性黄疸では走化能が低下し,潰瘍性大腸炎では走化因子により走化能が有意に高く,重症感染では低下した.
  • II.種々疾患における反応性
    松本 隆任, 上野 範博, 大川 正人, 鹿野 高明, 外岡 立人, 松本 脩三
    1983 年6 巻3 号 p. 195-203
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Luminol-dependent chemiluminescence in whole blood (whole blood CL) was estimated using various kinds of whole blood from the patients with pediatric disease. Three types of information can be obtained from the kinetics of whole blood CL as previously shown1); 1) Total phagocytic function of whole blood which depends on the number of granulocytes in whole blood as the material and their function. 2) Phagocytic and microbicidal activity of granulocytes themselves. 3) Opsonic activity of whole blood for the agent which is phagocytosed. In the present study two types of CL inducer were used. One was nonopsonized zymosan, and the other was aggregated gamma globulin (Agg). The latter inducer can detect the real CL response of granulocytes, because it can induce CL without the opsonization. Results obtained in the present study were as follows; 1) Blood obtained from cord and newborn showed a prolonged time showing the peak CL, suggesting low opsonic activity. CL response of granulocytes themselves were slightly decreased in cord blood, but not in blood of newborn. 2) The patients with chronic granulomatous disease (CGD) showed no CL response, and 2/3 of their mothers showed a moderately decreased response, suggesting that they are carriers of CGD. 3) Two patients with hypocomplementemia, namely SLE and chronic nephritis, showed a remarkably prolonged time showing the peak CL for zymosan as the CL inducer, but showed rather an enhanced response for Agg, suggesting that serum opsonic activity for zymosan, namely C3b, is low, but function of granulocytes themselves is enhanced. 4) Patients with pediatric malignancy tended to show a decreased peak CL of whole blood due to decreased number of granulocytes, but phagocytic function itself seemed to be not impaired. Some patients during chemotherapy showed a prolonged time showing the peak CL. It was suggested that chemotherapy, especially L-asparaginase, suppress the production of complement. 5) Phagocytic function of whole blood in patients with severe neutropenia was estimated after the granulocyte transfusion by the method of filtration leukaphresis, and an increased function was observed in 5 of 7 cases, but the degree was not enough compared with normal value. These results suggest that the method of whole blood CL is a useful one to evaluate the phagocytic function of whole blood and opsonic activity in the clinical laboratory.
  • 岡田 純一, 松岡 宏, 柘植 郁哉, 加藤 剛二, 水野 周久, 片桐 雅博, 宇理須 厚雄, 松岡 道子, 鳥居 新平
    1983 年6 巻3 号 p. 204-211
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    重症複合免疫不全症の男児に組織適合性の一致した姉から骨髄移植を行い,細胞性および液性両免疫能の再構築に成功した.肺炎のため入院した9ヵ月の患児に,低ガンマグロブリン血症, T細胞の減少, T細胞サブセットの異常,リンパ球芽球化反応の異常などが認められ,重症複合免疫不全症と診断し, 1歳2ヵ月時に姉の骨髄細胞を点滴静注により移植した.移植後11日目からリンパ球芽球化反応が出現し,ついで急性GVH反応がみられたが軽症であった.移植2ヵ月後から血清IgGとIgMが急激に増加し, T細胞数およびT細胞サブセットが正常化した.遅延型皮膚過敏反応および血清特異抗体産生もみられるようになり,感染によるすべての臨床症状が急速に治癒した,性染色体の分析によりリンパ球キメリズムの成立が証明された.患児は現在,移植後1年9ヵ月になるが,まったく健康に過ごしている.
  • 松崎 博充, 河野 文夫, 西村 弘道, 長尾 重治, 高月 清
    1983 年6 巻3 号 p. 212-217
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回我々はインスリン依存性糖尿病とGraves' diseaseを合併した一症例を経験し,若干の免疫学的検索を施行した.その結果1) lymphocyte subpopulation 2) mitogen response 3)免疫グロブリン合成能は正常であった.しかし細胞障害試験のうち, cell mediated cytotoxicity (CMC)およびnatural killer (NK)活性が正常であるにもかかわらず, antibody dependent cell mediated cytotoxicity (ADCC)活性は欠損していた. ADCC活性のeffector cellであるK細胞とNK細胞との異同については,いまだ一致した結論が得られておらず,このような症例の存在は, K細胞がNK細胞とは異なることを示唆する.一方,インスリン依存性糖尿病患者においては,高率に抗甲状腺抗体が認められる事が報告されており,両疾患における免疫異常も多く報告されている.しかし必ずしも一致した結果は得られていない.本症例で認められたADCC活性欠損と両疾患の関係については,今後検討が必要である.
  • suppressor T cell機能亢進
    井上 孝利, 牟田 米子, 長野 政則, 平田 泰彦, 大久保 英雄
    1983 年6 巻3 号 p. 218-224
    発行日: 1983/06/30
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    手根管症候群で数年間,少量のsteroid (Rinderon 2~3日に1錠)を服用した67歳女性に,左腎のhypoplasiaと低γ-globulin血症が発見された. Ig定量でIgG 600, A 20, M 20mg/dl, IgE 25u/dlといずれも低下していた.末梢血リンパ球のT, B細胞比はT:B=78:22と正常であり,螢光抗体直接法で測定した表面Ig (SmIg)保持細胞も正常であった.
    in vitroにおけるリンパ球のIg産生を検討した結果,正常B細胞と患者T細胞の組み合わせではIgの産生がみられないが, 2,000radのX線で処理した患者T細胞を使用するとIg産生は正常となる.また,正常T細胞と患者B細胞の組み合わせではIg産生は正常であった.したがって本症例は, IgG, A, Mに共通なsuppressor T細胞の機能亢進に基づく低γ-grobulin血症と診断された.炎症所見が抗生剤投与によっても消失しない事から,免疫不全状態にあると推定される.左腎のhypoplasiaは先天的と思われる.
feedback
Top