近年,免疫応答における個体差を遺伝的に規定しているMHC領域と各種自己免疫疾患との関連性についての報告がなされているが, MHC領域にcodeされるHLA抗原の遺伝的多型性をDNAレベルで解析することは, HLA抗原と疾患発症の分子機構を解明し,疾患感受性遺伝子を同定するための重要な手段である.
すでに報告されているHLAのDNAタイピングの方法には,各HLA抗原特異的cDNA cloneをprobeとするSouthern法を用いたRFLP法や, HLA抗原遺伝子の多型性に富む領域をPCR法で選択的に増幅させ,アロ抗原特異的な塩基配列をもつsequence-specific-oligonucleotide (SSO)を用いてhybridizationを行うPCR-SSO法,さらにアロ抗原タイプ特異的な制限酵素を用いて切断パターンにより分類するPCR-RFLP法などが確立されており,おのおのの方法により利点,欠点がある.
今回,われわれは40例の正常健常人および19例のSLE患者末梢血よりリンパ球を分離採取,高分子DNAを抽出後, PCR-RFLP法によりDQA 1, DQB 1, DPB 1およびDRB 1遺伝子のDNAタイピングを行い,同法の有用性を検討した.
SLEに関しては,すでにDR 2を構成する1つのhaplotypeであるDRB 1*1501-DRB 5*0101-DQA 1*0102-DQB 1*0602との相関が報告されているが,われわれの検討でも同様な結果が得られ,かつ健常人での検討でもPCR-SSO法で報告された日本人の対立遺伝子頻度と類似の結果が得られ,われわれの行ったPCR-RFLP法の信頼性が支持された.さらに興味深いことに,他人種では報告され,日本人では既報のないDPB 1*0501との相関が認められた. SLE臨床像との関連では,腎障害とDQA 1*0102との負の相関が得られたが,いずれも少数例での解析結果であり,今後の症例の蓄積を必要とする.
PCR-RFLP法は再現性が高く,かつ簡便,迅速に詳細なDNAタイピングを行えるという利点があり,われわれの検討でも実証された.また,施設問のquality controlも容易であり,症例の蓄積のために広く普及されるべき検査法と考える.
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