日本臨床免疫学会会誌
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18 巻, 3 号
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  • 吉野 保江
    1995 年18 巻3 号 p. 265-271
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    好中球とリンパ球はいずれも炎症のメディエーターとして重要な役割を果しているが,両者の相互作用については不明の点が多い.今回われわれは好中球の抗体産生に及ぼす影響について検討した.
    健常人のB細胞を, T細胞の非存在下にStaphylococcus aureus+IL-2で刺激した際誘導されるIgM産生に対しては,好中球は有意の効果を示さなかった.一方,好中球は固相化抗CD3抗体により誘導されるT細胞依存性のIgM産生を有意に増強した.また好中球は固相化抗CD3抗体により誘導されるT細胞によるガンマインターフェロン(IFN-γ)の産生を用量依存性に増強した.パラホルムアルデヒドで固定した好中球も同様に固相化抗CD3抗体刺激により誘導されるIgM産生. IFN-γ産生を増強した.以上より,好中球はT細胞との直接の細胞間相互作用を介してT細胞の活性化を増強することにより, B細胞による抗体産生を調節するものと考えられた.
  • 浄土 智, 渥美 達也, 竹田 剛, 小椋 庸隆, 天崎 吉晴, 市川 健司, 堤 明人, 向井 正也, 大西 勝憲, 藤咲 淳, 小林 清 ...
    1995 年18 巻3 号 p. 272-281
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    リウマトイド因子は,主として慢性関節リウマチに認められる自己抗体で,慢性関節リウマチでは,血中のリウマトイド因子値が疾患活動性や関節外症状と相関するといわれている.今回われわれはリウマトイド因子が陽性の結節性多発動脈炎3例と,組織学的に典型的な壊死性動脈炎の所見は得られなかったが,臨床的に結節性多発動脈炎に類似した血管炎と診断した1例を経験し,この4例においてLaser nephelometryにより血中リウマトイド因子を経時的に測定した.その結果,リウマトイド因子値は疾患の増悪時には上昇するが,治療により低下し,寛解時には正常化した.このことより,血中リウマトイド因子値は,リウマトイド因子陽性血管炎においては活動性および治療効果の判定,さらに他の炎症性疾患との鑑別診断にきわめて有効な指標となりうると考えられた.
  • 森 雅亮, 友野 順章, 横田 俊平
    1995 年18 巻3 号 p. 282-288
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    川崎病は免疫系の異常な活性化と血管内皮細胞障害に始まる全身性血管炎を特徴とする疾患群である.冠動脈障害をはじめとする血管炎の発症にはサイトカイン,接着因子が関与していることが明らかになり,この成因因子を早期に鎮静化することが治療面でもっとも重要な点である.川崎病の治療としてガンマグロブリン大量療法が現在では確立されているが,本例では通常量のガンマグロブリン(400mg/kg)の3日間投与に続いて, 1g/kgの超大量療法を施行したが奏効しないため,血漿交換療法を施行した.第3病日にすでにみられた冠動脈変化が血漿交換療法の施行を境に進行が抑さえられたのみでなく,心機能,関節症状,腹部症状のいずれも改善し,発症1カ月を経過した現在では冠動脈径は正常にもどっている.今後,ガンマグロブリン大量療法にても症状,検査値の改善がみられない川崎病症例には,可能なかぎり早期から血漿交換法を考慮すべきと思われる.
  • Ricardo M. Xavier, 石倉 浩人, 岩田 由守, 津村 弘人, 小林 祥泰, 遠藤 治郎
    1995 年18 巻3 号 p. 289-295
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    近年,免疫応答における個体差を遺伝的に規定しているMHC領域と各種自己免疫疾患との関連性についての報告がなされているが, MHC領域にcodeされるHLA抗原の遺伝的多型性をDNAレベルで解析することは, HLA抗原と疾患発症の分子機構を解明し,疾患感受性遺伝子を同定するための重要な手段である.
    すでに報告されているHLAのDNAタイピングの方法には,各HLA抗原特異的cDNA cloneをprobeとするSouthern法を用いたRFLP法や, HLA抗原遺伝子の多型性に富む領域をPCR法で選択的に増幅させ,アロ抗原特異的な塩基配列をもつsequence-specific-oligonucleotide (SSO)を用いてhybridizationを行うPCR-SSO法,さらにアロ抗原タイプ特異的な制限酵素を用いて切断パターンにより分類するPCR-RFLP法などが確立されており,おのおのの方法により利点,欠点がある.
    今回,われわれは40例の正常健常人および19例のSLE患者末梢血よりリンパ球を分離採取,高分子DNAを抽出後, PCR-RFLP法によりDQA 1, DQB 1, DPB 1およびDRB 1遺伝子のDNAタイピングを行い,同法の有用性を検討した.
    SLEに関しては,すでにDR 2を構成する1つのhaplotypeであるDRB 1*1501-DRB 5*0101-DQA 1*0102-DQB 1*0602との相関が報告されているが,われわれの検討でも同様な結果が得られ,かつ健常人での検討でもPCR-SSO法で報告された日本人の対立遺伝子頻度と類似の結果が得られ,われわれの行ったPCR-RFLP法の信頼性が支持された.さらに興味深いことに,他人種では報告され,日本人では既報のないDPB 1*0501との相関が認められた. SLE臨床像との関連では,腎障害とDQA 1*0102との負の相関が得られたが,いずれも少数例での解析結果であり,今後の症例の蓄積を必要とする.
    PCR-RFLP法は再現性が高く,かつ簡便,迅速に詳細なDNAタイピングを行えるという利点があり,われわれの検討でも実証された.また,施設問のquality controlも容易であり,症例の蓄積のために広く普及されるべき検査法と考える.
  • 本谷 聡, 辻崎 正幸, 伊林 由美子, 戸次 英一, 樟本 賢首, 澤田 康夫, 橋本 伊久雄, 日野田 裕治, 今井 浩三
    1995 年18 巻3 号 p. 296-302
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    巨大肺嚢胞を合併した,肺限局型Wegener肉芽腫症(WG)のまれな症例を経験したので報告する.症例は46歳男性で,右胸部痛および呼吸困難の精査目的に入院.胸部XpおよびCT検査において,右肺上葉に浸潤陰影を併った巨大嚢胞を認めた.右肺上葉切除術を施行し,巨大嚢胞周辺に肉芽形成および肉芽腫性血管炎を呈していたことよりWegener肉芽腫症と診断した.免疫学的解析により, ANCA陰性であったが血中ICAM-1は高位を示した. ICAM-1値は手術後低下し,プレドニソロン・サイクロフォスファマイド薬物療法により正常域を保っていた.以上の結果から, WGの診断・治療の評価の際,特にANCA陰性の場合,血中ICAM-1値が病勢をあらわすパラメーターの1つとして有用であることが示唆された.
  • 竹田 剛, 堤 明人, 小椋 庸隆, 浄土 智, 天崎 吉晴, 中林 透, 藤咲 淳, 小林 清一, 小池 隆夫
    1995 年18 巻3 号 p. 303-307
    発行日: 1995/06/30
    公開日: 2009/02/13
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性. 1992年12月頃より両上肢の脱力感が出現した.次第に手指の腫脹,レイノー現象,顔面の紅斑,多関節痛を認めるようになったため1993年4月某医を受診した.抗核抗体・抗RNP抗体強陽性より混合性結合組織病(MCTD)が疑われたが,胸部X線写真に異常はなかった.同年5月,発熱,下肢の脱力感,呼吸苦が出現したため当科を受診,両側背部にVelcroラ音を聴取し,筋原性酵素の上昇,著明な低酸素血症,胸部画像診断で下肺野優位の粒状網状影を認めた. MCTDの急性増悪に伴う急性間質性肺炎と診断しステロイドパルス療法を施行,低酸素血症および胸部X線所見は改善し,筋原性酵素も正常化した.
    MCTDで間質性肺炎をきたす場合,多くは慢性に進行し,本症例の様に急激に悪化する例は極めてまれである.しかし,このような例では死の転帰をとることもあり速やかにステロイドの大量投与を行うことが重要であると思われた.
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