日本口腔腫瘍学会誌
Online ISSN : 1884-4995
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23 巻, 2 号
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症例
  • ―嚢胞性疾患との鑑別を要した症例―
    植田 祐子, 中野 旬之, 梅田 浩嗣, 真野 隆充, 片瀬 直樹, 長塚 仁, 上山 吉哉
    2011 年 23 巻 2 号 p. 27-31
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
    要旨:診断に苦慮した下顎骨内に孤立性に発生した神経線維腫の1例を経験したので報告する。患者は,23歳の男性。右側下顎臼歯の疼痛を主訴に受診し,X線検査の結果,右側下顎第二,第三大臼歯の根尖に透過像を認めた。下顎骨嚢胞との臨床診断のもとに,全身麻酔下に摘出術を行った。腫瘍は充実性で,腫瘍摘出後の腔内に下歯槽神経は認めなかった。
    病理組織学的に,病変の大部分は炎症組織であったが,一部に腫瘍組織を認めた。腫瘍組織には不規則な配列を呈する,紡錘形細胞と膠原線維の密集した部位がみられ,免疫組織学的にはS-100蛋白に陽性の散在する神経線維が認められた。以上の結果より,下顎骨に発生した孤立性の神経線維腫と診断した。
  • 釘本 琢磨, 島本 裕彰, 小村 健
    2011 年 23 巻 2 号 p. 33-40
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
    患者は55歳,女性。1994年1月に左側頬部の腫瘤を自覚したが,頬部に切開を加えることを恐れ,放置していた。1995年9月に当科を初診し,CTにて左側頬部に3.5×2.5cm大の腫瘤を認めた。左側副耳下腺腫瘍の診断にて患者の希望もあり口腔内から腫瘍摘出術を施行した。術中,腫瘍の被膜を損傷し,腫瘍は分割して摘出した。病理組織学的診断は多形腺腫であった。自己判断により通院を中断していたが,2008年3月に左側頬部の腫脹を主訴に当科を再受診した。左側頬部に頬骨弓内側に進展する,7.8×5.7cmの腫瘍を認めた。左側副耳下腺多形腺腫再発の診断にて,同年4月に経頬アプローチにより腫瘍切除術を施行した。病理組織学的診断は多形腺腫再発であった。2009年3月に術後の頬部陥凹に対し,血管柄付き遊離前腕筋膜脂肪弁による再建術を施行し,患者の満足が得られた。
  • 桂野 美貴, 石井 純一, 八木原 一博, 出雲 俊之, 柳下 寿郎
    2011 年 23 巻 2 号 p. 41-45
    発行日: 2011/06/15
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
    れわれは口底に発生し,小腫瘤を呈した孤立性線維性腫瘍(SFT)を経験したのでその概要を報告する。SFTは間葉系由来の紡錘細胞腫瘍で,WHOの軟組織腫瘍の分類では良悪性中間型(まれに遠隔転移)の線維性/筋線維性腫瘍に属している。好発部位は胸膜であり体内のいたるところに発生するが,口腔内,とくに口底でのSFTの発生はまれである。
    症例は57歳,女性で,口底に7mm大の無痛性で可動性の不整形腫瘤を認めた。左口底部唾液腺腫瘍または炎症性肉芽の臨床診断で,局所麻酔下で左口底腫瘍摘出術を施行した。摘出された腫瘍は線維性の紡錘細胞と膠原線維からなり,腫瘍細胞は免疫組織化学的にCD34, Bcl-2陽性,SMA,desmin,S-100,CD99,c-kit陰性であった。病理組織診断は孤立性線維性腫瘍であった。術後19か月が経過した現在,再発,転移なく経過良好である。
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