先天性エプーリスは,新生児の歯肉にまれに見られる良性の限局性腫瘤で,その多くは単発性である。今回われわれは,上下顎歯肉に病変を認めた極めてまれな女児症例を経験した。
上顎腫瘤は前歯歯槽部に存在し,有茎性で最大径25mmであった。哺乳障害の原因となっており,また,脱落による窒息が懸念されたため,出生当日,局所麻酔下に切除した。下顎腫瘤は10か月の経過観察中に,縮小し自然消失した。
切除した上顎病変は,粘膜上皮下にN/C比の低い,PAS陽性の顆粒状の細胞質を多量に含んだ細胞の充実性増殖を認め,背景には血管の増殖を伴っていた。免疫学的検索では,vimentinは陽性だが,S-100タンパク,CD68,CD163は陰性で,顆粒細胞腫と診断した。
先天性エプーリスは,切除後の再発例の報告はなく,自然消退する症例もあるため,新生児期の全身に対する侵襲を考慮すると,腫瘤の大きさや形態,部位,増大傾向などを合わせて各腫瘤毎に対応を検討すべきであると思われた。
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