日本口腔腫瘍学会誌
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25 巻, 3 号
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第31回日本口腔腫瘍学会・学術大会
シンポジウム2:「早期口腔癌に対する新たな診断法の確立」
  • 草間 幹夫, 片倉 朗
    2013 年 25 巻 3 号 p. 41
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
  • 森 泰昌
    2013 年 25 巻 3 号 p. 42-53
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    頭頸部癌は一般的に罹患率の高い癌の一つに数えられる。治療法の進歩や,HPV関連癌の鑑別は,予後の推定から患者のQOL向上に寄与してきている。しかしながら,アルコールやタバコに起因する典型的な頭頸部癌の予後はこの20年間であまり改善が見られていない。進行癌の制御不能,局所領域での再発,同様に遠隔転移から罹患患者の死亡率はいまだ高い。それゆえ早期での診断と治療は患者の生存予後を改善する鍵となったままである。早期頭頸部癌の分子生物学的なより良い理解は,治療のターゲットを明確にすることや効果的な治療法の開発に必要となる。
    本稿では,特異的な病因により惹起されている頭頸部癌の代表的な例を示し解説する。
  • 石橋 浩晃, 秀島 克巳, 関根 浄治
    2013 年 25 巻 3 号 p. 54-71
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    口腔がんの治療・予後においては,早期発見による早期治療が極めて重要であり,がんの早期発見・早期治療の開始は,口腔外科医・歯科医師が取り組むべき,患者の生命予後に強く影響する極めて重要な課題である。しかし,口腔がんの大半をしめる口腔扁平上皮癌の早期症例を,臨床像が類似する前癌病変・前癌状態などの口腔粘膜疾患と肉眼所見により鑑別することに関しては,熟練した口腔外科医でも判断に迷うことが少なくない。そこで,日常の臨床に一般的に応用されている有効で精密な診断確定法として,組織検査(生検)が広く認知・汎用されている。しかし,すでに組織検査を繰り返している症例や,悪性の可能性が低いと推測される症例,あるいは患者の全身疾患によっては,組織検査の適応・応用の判断が困難になることがある。著者らは,口腔扁平上皮癌,あるいは口腔粘膜疾患の早期の診断確定の一助として,口腔細胞診(擦過細胞診)を積極的に応用している。さらに口腔細胞診は,治療開始前の新鮮症例における早期診断だけでなく,術後に長期の経過観察を継続している症例にも容易に応用できる。口腔細胞診は細胞所見から収集できる情報が多い一方で,細胞採取などに関する侵襲が極めて少ない安全な検査と思われる。
    また,著者らは地域歯科医師会と連携して,歯科医院における口腔細胞診を用いた口腔粘膜疾患・口腔がん検査システムを構築している。今回,本システムによる口腔がんの早期発見症例について紹介するとともに,本システムの運用に関する現状と精度を検証したので報告する。さらに,口腔がん検診の診断精度の向上にも口腔細胞診を応用しており,その概要をあわせて報告する。
  • 岩本 修, 楠川 仁悟
    2013 年 25 巻 3 号 p. 72-88
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    光工学の進歩は,医科領域にも大きな転機をもたらした。とくに特殊光を応用した癌の診断や治療においては多くの有用性が報告されている。今回われわれは,特殊光下の観察が可能な内視鏡システム(オリンパスメディカル社製)により口腔扁平上皮癌stage I,II症例の観察を行いその有用性について検討した。
    (1)狭帯域光観察(Narrow Band Imaging: NBI):NBIでは癌病変の視認性が向上するとともに拡大観察を併用することで微小異常血管像(有馬分類type3,4:食道癌の異常血管)や粘膜変化像(粗造白色像や茶褐色像)を観察できた。さらに舌扁平上皮癌におけるにNBIの病変範囲とヨード生体染色のヨード不染帯領域はほぼ一致していた。
    (2)自家蛍光観察(Auto-Fluorescence Imaging: AFI):AFIでは癌病変は自家蛍光の弱い赤紫色,逆に正常な粘膜では自家蛍光の強い緑色に表示されたが,全体的に画像が粗く点状の散乱光も認めた。また切除物の割断面のAFIでは自家蛍光の強弱差により癌の深部領域を確認することができた。カスタマイズした実体蛍光顕微鏡で同様に割断面を観察すると,より明瞭に病変領域を確認できた。割断面で観察された病変領域を病理組織像と比較すると,その領域性はほぼ一致していた。
    (3)赤外光観察(Infra-Red Imaging: IRI):IRIではインドシアニングリーン(ICG)の投与後,病変部に青色の発色を認めた。
    これら特殊光での観察は,正常領域を背景として口腔扁平上皮癌の異常像が強調されて表示されるため,診断や治療に有用となる可能性が示唆された。
  • 恩田 健志, 林 宰央, 野村 武史, 髙野 伸夫, 柴原 孝彦, 片倉 朗
    2013 年 25 巻 3 号 p. 89-97
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    わが国は,先進国の中で口腔がんが増加しているまれな国であり,早期に口腔がんを発見できる検査法の開発や検診システムの確立が望まれている。当講座では地域の歯科医師会と協力し口腔がんの集団検診を行い,その早期発見に努めてきた。しかしながら,集団検診は実施地域や時期,検診できる人数に制限があり検査対象となるのは極めて少ない集団である。これを解決するためには,歯科診療所における個別検診を普及させる必要があるが,現在,視診,触診に加えて一般歯科診療所でも簡便に行うことができる信頼性の高いスクリーニング方法はない。
    近年の研究成果により,唾液が健康の維持増進のための様々な機能を有すること,血液や尿に劣らぬ多くの生体情報を有していることが続々と報告されてきている。唾液は場所を選ばず,非侵襲性に,無痛的に反復して容易に採取可能であり,血液と異なり赤血球や白血球,血小板などの細胞成分がほとんどなく,凝固することもない。そのため定量を目指す標的発現異常タンパク質に特化してキット化することが可能となり,歯科診療所のチェアサイドで判定することも可能と考えられる。著者らはこのような簡便かつ非侵襲的に反復して採取可能な唾液に注目し,プロテオミクス解析技術を駆使して,全唾液を試料とした簡便に行える口腔がんのスクリーニング法の開発ならびに早期診断分子マーカーの同定を試みてきたので,その概要を解説する。
  • 鵜澤 一弘, 笠松 厚志, 馬場 隆緒, 肥後 盛洋, 坂本 洋右, 小河原 克訓, 椎葉 正史, 丹沢 秀樹
    2013 年 25 巻 3 号 p. 98-107
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    過去数十年の研究成果によって,がん患者の循環血液中にみられる腫瘍由来細胞(circulating tumor-derived cells: CTCs)あるいは末梢循環腫瘍由来核酸(circulating tumor-derived nucleic acids: ctNAs)が微小転移の兆候であり,それゆえ重要な予後因子であることが広く受け入れられてきた。これらは免疫細胞化学的あるいは分子生物学的分析法によって検出でき,さらに実際の患者においてもシステミックでリアルタイムなCTCs/ctNAsのモニタリングが可能となりつつある。本稿では,口腔がんにおける基礎から臨床応用へのCTCs/ctNAs研究の変遷について,われわれの最近の研究成果と併せて解説する。
原著
  • 山本 信治, 逢坂 竜太, 鈴木 大貴, 野口 沙希, 佐藤 一道, 山内 智博, 片倉 朗, 柴原 孝彦, 髙野 伸夫
    2013 年 25 巻 3 号 p. 109-114
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    【目的】がん化学療法の代表的な副作用である悪心・嘔吐に対する制吐療法は,治療継続や完遂,患者のQOL向上の観点から極めて重要である。本研究では,シスプラチン投与口腔癌患者に対する新規ホスアプレピタント(プロイメンド®)の制吐効果を,従来のアプレピタント(イメンド®)と比較検討した。【対象および方法】当センターにおいて2010年4月から2012年12月までにシスプラチン(60mg/m2以上)を含む化学療法を施行した進行口腔扁平上皮癌患者15例を対象とした。治療開始後の消化器症状の評価は,「有害事象共通用語規準v4.0日本語訳JCOG版」ならびに「プロイメンド特定使用成績調査」プロトコールに従い分類し,急性期・遅発期における悪心・嘔吐の有無について2群間の比較検討をした。【結果】急性期の嘔吐なしがホスアプレピタント群100%,アプレピタント群80%で,悪心なしがホスアプレピタント群100%,アプレピタント群40%で,急性期の悪心において有意差(p=0.022)が認められた。遅発期の嘔吐なしが,ホスアプレピタント群90%,アプレピタント群100%で,悪心なしがホスアプレピタント群50%,アプレピタント群0%であった。【結論】アプレピタントでは制御できなかったシスプラチンにより惹起される悪心・嘔吐はホスアプレピタントを用いることでその発現率が低下したことから,ホスアプレピタントの有用性が示唆された。
症例報告
  • 長谷川 温, 里見 貴史, 渡辺 正人, 虻川 東嗣, 河野 通秀, 近津 大地
    2013 年 25 巻 3 号 p. 115-121
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    頸部郭清術後に生じる難治性リンパ漏はまれではあるものの,ひとたび生じると体液組成異常をはじめ電解質異常や栄養障害,免疫障害を引き起こし,患者の入院期間を延長させる重篤な合併症である。今回われわれは,下顎歯肉癌患者の頸部郭清術後に難治性頸部リンパ漏を生じ,胸腔鏡下胸管結紮術にて制御した症例を経験したので,その概要を若干の文献的考察を加え報告する。
    患者は左側下顎歯肉の疼痛を訴えて来院した80歳の女性。左側下顎歯肉癌の診断で,下顎骨区域切除,左側機能的頸部郭清術,チタンプレートと大胸筋皮弁による即時再建術を施行した。術後3日目にドレーン排液量が突如2000mlを超えたため,保存療法および再開創によるリンパ管結紮を行ったが効果なく,術後20日目に胸腔鏡下胸管結紮術を施行した。その後リンパ漏は認めず,軽快退院した。
  • 白石 剛士, 大場 誠悟, 南里 篤太郎, 井 隆司, 朝比奈 泉
    2013 年 25 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    舌弁は口腔組織の優れた再建材料として知られている。舌弁は血行が良好であることや,可動性に富んでいること,移植床となる口唇,口蓋,頰粘膜に距離が近いことからその適応範囲は広い。今回われわれは左側上唇粘膜に発症した頰粘膜癌に対し,舌弁を用いた再建を行ったので報告する。患者は71歳の男性で,左側上唇粘膜面に生じた無痛性腫瘤の精査を主訴に当科を受診した。腫瘍の大きさは硬結の範囲を含めて20×16mmであった。組織生検の結果は扁平上皮癌であった。CT,MRI,頸部エコー検査で,頸部リンパ節への転移の可能性が疑われた。診断を左側頰粘膜癌(T1N1M0,Stage III)とし,根治的頸部郭清術変法,腫瘍切除術,舌弁による再建術を施行した。術後2週間で舌弁の切り離しを行った。現在術後約1年が経過するが整容的,機能的に良好な結果が得られている。
  • ―浅側頭動脈からカテーテル2本同時留置法―
    安井 昭夫, 北島 正一朗, 丸尾 尚伸, 福山 隆一, 角田 定信, 市原 左知子
    2013 年 25 巻 3 号 p. 129-138
    発行日: 2013/09/15
    公開日: 2013/10/17
    ジャーナル フリー
    口腔癌に対する浅側頭動脈経由の動注化学放射線療法では腫瘍周囲に高濃度の抗癌剤を注入できることから,その優れた抗腫瘍効果が注目されている。われわれは進行した上顎歯肉癌に対して浅側頭動脈経由で顎動脈および顔面動脈にカテーテルを2本同時留置し,超選択的動注化学放射線療法を行い良好な治療成績を得た症例を経験したので報告する。症例は60歳男性,左側上顎歯肉癌(T3N0M0)。治療スケジュールはDOC(総投与量75mg/m2,15mg/m2/week),CDDP(総投与量125mg/m2,5mg/m2/day)を5クール,放射線治療は50Gy/5weekを施行した。治療効果がみられ腫瘍は消失したため切除手術は行わず,4年経過したが腫瘍再発は認められていない。上顎歯肉進行癌に対して高い抗腫瘍効果が得られ,有用な治療法であると考えられた。
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