CD44分子は選択的スプライシング機構により, 標準型CD44 (CD44 standard form, CD44s) と変異型CD44 (CD44 variant form, CD44v) を発現し, 癌転移との関連が報告されている。
本研究の目的は, 舌癌におけるCD44sとCD44vの発現と頸部リンパ節転移との関連性を明らかにすることである。舌癌34症例の生検材料のホルマリン固定パラフィン包埋組織標本を用いてCD44s, CD44v4, CD44v5, CD44v6, CD44v7-8, CD44v9に対する抗体による免疫組織学的染色を行い, 陽性細胞の百分率によりCD44sとCD44vの発現の状態を評価した。
34症例におけるCD44s, CD44v4, CD44v5, CD44v6, CD44v7-8, CD44v9の平均発現率はそれぞれ64.7%, 52.9%, 88.2%, 64.7%, 70.6%, 52.9%であった。頸部リンパ節転移陽性症例では非転移症例に比べてCD44v6, CD44v7-8の発現が有意に低下していた (P<0.05) 。
また, ISHを用いてCD44v6 mRNAの発現について検討を行った。その結果, CD44v6 mRNAのシグナルは腫瘍細胞の核内および細胞質に顆粒状に認められ, 特に癌胞巣辺縁部の腫瘍細胞に多く発現していた。頸部リンパ節転移陽性症例では, CD44v6mRNAのシグナル発現が有意に低かった。 (P<0.05) 。変異型CD44の中で, v6, v7-8の検索は, 癌細胞の浸潤能, 転移能を予測するための重要な情報となり得ると考えられた。
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