日本口腔腫瘍学会誌
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11 巻, 2 号
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  • 桐田 忠昭, 美島 健二, 杉村 正仁
    1999 年 11 巻 2 号 p. 43-54
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Verrucous carcinomaは臨床的にも形態的にもまた, 細胞レベルにおいても扁平上皮癌の中の特殊なタイプの癌として, 定義されている。この腫瘍は, 臨床的, 病理組織学的に, 他の一般的な高分化型扁平上皮癌とは違った特徴を持つ悪性度の低い癌であり, それらとは区別されている。
    Verrucous carcinomaとして最初に規定されて以来, この疾患に対する治療法やその再発率, anaplastic transformationの頻度などについては文献的にも多くの混乱が見られている。そこで, 今回はこの稀な腫瘍に対する治療法や疫学, 遺伝子変異などについて最近の知見を含め, 文献的考察を行なった。
    特に治療法の選択においては, 病変の広がりや患者の全身状態を考慮に入れなければ, 外科療法が第一選択となることに変わりない。放射線療法は, 本腫瘍が中等度の放射線感受性があるにもかかわらず, anaplastic changeの可能性や局所制御率の低さから, 一般的には選択されない。しかし, 最近の文献では, 放射線治療に対する効果は, 一般的な高分化型扁平上皮癌とほぼ同様で, 生存率の改善が見られたという報告もあり, 外科療法非適応症例には, 治療選択肢の一つとなりうるものと考えられる。
  • ―切除材料における新しい組織学的悪性度評価法の試み―
    内山 公男
    1999 年 11 巻 2 号 p. 55-73
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    歯肉癌新鮮例のうち, 術前化学療法の後に手術を施行した53例について, 治療成績や組織学的悪性度評価を用いて臨床的および病理組織学的に術前化学療法の意義について検討し, 以下の結果が得られた。
    1.術前化学療法の効果については, 臨床的諸事項や組織学的分化度別では概して有意差はみられなかったが, 組織学的悪性度別では臨床的奏効率では有意差はないものの, 病理組織学的奏効率では悪性度の低い群や中等度の群が高い群よりも有意に有効であり, 5生率や再発率, 転移率などでみた治療成績でも概して良好であった。
    2.術前化学療法により生検材料に比し切除材料では組織学的悪性度評価項目の各評点が下がる傾向があった。また, 悪性度が低下した群の方が5生率は高い傾向があり, 転移率は有意に低下していた。
    3.これらのことより, 組織学的にみて悪性度の低い歯肉癌に対しては術前化学療法はよく奏効し治療成績の向上に寄与しているものと考えられる。
    4.従来の組織学的悪性度評価項目に, 切除断端の上皮性異形成の有無を加え組織学的悪性度評価を試行した。その結果, 悪性度評価項目のうち, 浸潤様式と切除断端の評点が高いものの方が予後不良であった。
  • 川越 弘就, 梅田 正博, 西松 成器, 奥 尚久, 寺延 治, 島田 桂吉, 古森 孝英
    1999 年 11 巻 2 号 p. 74-82
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    3種類のヒト口腔扁平上皮癌由来樹立細胞株 (HSC-2, 3, 4) を単離細胞および組織片の形状で, また手術時採取した7種類の臨床腫瘍組織片 (KOS-4, 5, 6, 7, 8, 9, 10) をそれぞれヌードマウス舌に移植した。本実験モデルにおける局所浸潤およびリンパ節転移について組織学的に検索したところ, 以下の結果が得られた。
    1.いずれの移植材料ともヌードマウス舌へ移植可能で, 各移植材料別の生着率は29~100%であった。
    2.舌移植腫瘍は組織学的に浸潤性に増殖していた。単離細胞移植と組織片移植とで組織像に明らかな差はなかった。
    3.KOS-4~10移植舌腫瘍の浸潤様式は, 採取元患者の浸潤様式と類似していた。
    4.HSC-2, HSC-3, HSC-4, KOS-5, KOS-7, KOS-8を移植した個体に頸部リンパ節転移を認めた。それぞれの転移率は13~80%であった。
    5.以上の所見より, 本実験モデルは口腔癌の局所浸潤および頸部リンパ節転移の動物実験モデルとして有用と考えられた。
  • 楠川 仁悟, 末藤 祐一, 亀山 忠光
    1999 年 11 巻 2 号 p. 83-89
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    悪性度や切除断端の評価における術中迅速凍結切片診断の有用性を検討するために, 口腔癌に対しexcisional biopsyを行い得られた71例の凍結標本について検討した。
    上皮内癌5例および浸潤扁平上皮癌66例での, 凍結標本と永久標本との比較において, 2例で偽陰性がみられた。その結果, 術中迅速診断の正診率は97.2%であった。組織学的分化度および癌周囲の上皮性異形成の判定では, それぞれ78.7%と80.0%の正診率が得られた。一方, 浸潤様式の判定では, 凍結標本と永久標本での正診率は62.3%であった。浸潤様式がびまん性の場合は, 凍結標本では永久標本と比較して低グレードに診断される可能性があることを注意すべきである。
    局所再発は, 永久標本での切除断端の状態と関連がみられたが, 凍結標本との関連はみられなかった。しかしながら, 術中迅速診断は陰性断端をえるために有用である。
  • 中野 敏昭, 湯浅 賢治, 三輪 邦弘, 神田 重信, 鹿毛 和夏穂, 大関 悟, 篠原 正徳
    1999 年 11 巻 2 号 p. 90-97
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    転移リンパ節における節外浸潤の超音波画像所見を評価することを目的に本研究を行った。1987年から1997年における口腔扁平上皮癌37例の61転移リンパ節の超音波画像所見と病理組織学所見との比較検討を行った。
    病理組織所見により節外浸潤を認めるSt.IVはリンパ節の被膜は薄く, 一方腫瘍が大半を占めるSt.IIIは被膜は厚い傾向にあった。超音波画像所見ではSt.IVにおいて辺縁不整が多く, St.IIIにおいて底面エコーの増強やhaloを認めるものが多い傾向にあった。これらの結果より, 超音波画像上の底面エコーの増強やhaloは節内型に多く見られるリンパ節周囲の肥厚した被膜を表し, 辺縁不整は節外型の中でも, 周囲組織に大きく浸潤しているものを表している可能性が示唆された。
  • ―「洞底分類」の提唱―
    佐々木 忠昭, 藤林 孝司, 今井 裕, 岩瀬 博建, 朝倉 節子, 福田 瑞恵, 横倉 幸弘, 森田 浩章
    1999 年 11 巻 2 号 p. 98-105
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    上顎歯肉癌や硬口蓋癌のT分類においてUICC分類 (1987年) を単純に適用すると, 下顎歯肉癌において問題になっているのと同様に解剖学的特性から殆どの症例がT4となり, 病期分類の意味をもたなくなる傾向がみられる。そこでとくにT4症例の分類法について1) UICC分類 (1987年) , 2) 頭頸部癌取り扱い規約による分類 (1991年) のほか, 3) 洞底分類とよぶ新しい方法の3種類の方法を用いて, 各基準の妥当性について検討をおこなった。その結果, 洞底分類は症例数の分布, 予後との相関および平易性などの点において他の2つの分類法に比べ, より妥当な分類法と思われた。
  • ―原発・頸部制御例における遠隔転移発現に関与する因子について―
    原田 浩之, 鄭 漢忠, 牧野 修治郎, 北田 秀昭, 榊原 典幸, 野谷 健一, 福田 博, 小野 貢伸, 戸塚 靖則, 村松 宰
    1999 年 11 巻 2 号 p. 106-112
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔癌の遠隔転移発現に関与する因子を明らかにする目的で, 頸部転移様相をはじめとする臨床的・病理組織学的所見を検討した。
    1974年から1995年までに根治的治療を行った口腔扁平上皮癌535例中, 原発・頸部制御例は427例であった。頸部転移の有無で遠隔転移の発現率をみると頸部転移群では25/112 (22.3%) , 非転移群では5/315 (1.6%) で両群間に有意差がみられた (p<.001) 。このことより頸部転移群は遠隔転移のハイリスクグループであることが明らかとなった。今回ハイリスクグループである頸部転移群112例を対象に, さらに関連性の高い因子を検討すべく多重ロジスティック解析を行った。その結果, 転移リンパ節レベルのオッズ比が3.960と最も高く, レベルの進展した症例に対する遠隔転移の対策が必要と考えられた。
  • 井原 功一郎, 後藤 昌昭, 角田 隆規, 香月 武
    1999 年 11 巻 2 号 p. 113-121
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔顎顔面領域の悪性腫瘍症例の治療後にEpitec systemを用いた顎顔面補綴治療を行った。
    Epitec System (LEIBINGER社製, Germany) は, 他の顎顔面用の骨内インプラントとは形状が異なり, 顎骨骨折の治療に用いるチタンプレートから発展したものである。厚さ1mmの格子状チタンプレートを欠損部周囲の骨面に適合させ, 直径2mmのチタン製スクリューで骨に固定する。プレート装着後, 3か月以上経過して, 皮膚または粘膜を貫通するポストを, スクリーピングスクリューを除去した孔にねじ込み, 他端にアバットメントを付けて, 顎顔面補綴物の維持に用いる。
    この方法を用いて顎顔面に欠損を有する3例の患者に顎顔面補綴物を装着した。症例1では, 腫瘍の経過も良好で, 顎顔面補綴物の維持安定も良好であった。しかし, 症例2では, 顔面補綴物装着後, 約半年で腫瘍の再発が認められ, チタンプレートの除去を余儀なくされたが, 最小の外科的侵襲で除去が可能であった。症例3では, 腫瘍切除時にプレートを埋入して早期に機能回復を行った。
    Epitec Systemは, 骨が薄い場合にでも適用が可能であり, 顔面補綴物を理想的な位置で維持することができる, 埋入や除去の外科的侵襲も小さいことなど, 多くの利点を有している。
  • 鈴木 寿和, 鶴迫 伸一, 瀬上 夏樹, 山口 昭彦, 原 義治
    1999 年 11 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1992年, WHOの歯原性腫瘍の組織学的分類が改訂され, Unicystic ameloblastomaの項が追加された。
    われわれは, 下顎小臼歯部の嚢胞様病変をもつ37歳男性と下顎大臼歯部のエナメル上皮腫を疑った67歳男性を経験した。X線所見ではそれぞれ境界明瞭な単胞性, 多胞性のX線透過病変が示された。これらの病変には摘出術を施行した。病理組織学的検査によりこれらの病変はそれぞれII型, I型のUnicystic ameloblastomaであることが明らかとなった。2症例に再発はみられなかった。
    われわれは, 文献的に報告された14例のUnicystic ameloblatomaとこの2症例について臨床病理学的に検討を加えた。
  • 関 克典, 福田 喜安, 大屋 高徳, 横田 光正, 石川 義人, 松田 淳志, 武田 泰典, 工藤 啓吾
    1999 年 11 巻 2 号 p. 128-134
    発行日: 1999/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    顎骨に発生したEwing肉腫の2例を報告した。症例1は7歳の女児, 主訴は右オトガイ部の腫脹と圧痛で, 臨床的に骨原性肉腫と診断されたが, 病理組織学的にはEwing肉腫であった。オトガイ部の腫瘍の大きさは38×30mmであった。術前化学療法 (MTX, AD) +腫瘍切除+放射線療法 (60CO 27Gy) +化学療法 (VAC療法) をおこなったが, 10か月後に脳転移にて死亡した。症例2は2歳の男児で, 主訴は上顎前歯部の腫脹であった。両側上顎切歯部の腫脹の大きさは約27×34mmであった。臨床的に悪性腫瘍が疑われ, 病理組織検査でEwing肉腫と診断された。放射線療法 (60CO 35Gy) に化学療法 (VAC療法) を併用したが, 初診から4年2か月後に肺転移によって死亡した。
    いずれも局所制御がなされたにもかかわらず, 遠隔転移により死の転帰をとった。
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