中心性巨細胞肉芽腫は, 顎骨に生じ, 強い局所浸潤性により骨破壊を呈する病変である。今回われわれは, 下顎骨に生じた中心性巨細胞肉芽腫の1例を経験したので報告する。
症例は40歳代の男性。2006年5月頃より下顎前歯部の無痛性腫脹を自覚し放置していたが, 腫脹が徐々に増大したため, 当科を受診した。初診時, 口腔粘膜表面は正常であったが, 左下顎臼歯部に圧痛を伴う膨隆を認め, 羊皮紙様感を呈していた。頸部リンパ節に異常所見はなく, また下唇の知覚麻痺も認めなかった。X線CT写真では左下顎骨に境界明瞭な多房性病変を認め, 病変周囲は強い膨隆により菲薄化を示し, 内部には骨破壊像を認めた。
臨床的には, 歯原性粘液腫もしくはエナメル上皮腫を疑い, 組織生検を行った。生検結果では結合組織を主体とする検体で, 歯原性上皮は確認されず, サンプリングエラーを考慮して, 臨床所見からエナメル上皮腫を疑い, 全身麻酔下に腫瘍摘出術を行った。摘出標本では, 腫瘍実質は弾性軟割面は暗赤色充実性の肉芽組織様病変であった。
病理組織学的には出血巣を伴う結合組織塊であり, 多数個の核を有する多核巨細胞により構成されていた。細胞異型や核分裂は認めず, 中心性巨細胞肉芽腫の所見を得た。
術後約11か月が経過しているが, 局所再発は認めていない。
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