日本口腔腫瘍学会誌
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21 巻 , 3 号
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総説
  • 山本 悦秀, 川尻 秀一, 加藤 広禄, 吉澤 邦夫, 野口 夏代, 北原 寛子
    2009 年 21 巻 3 号 p. 131-169
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    頭頸部扁平上皮癌における組織学的浸潤様式分類は1973年にJakobssonらによって初めて提案された。その4型を呈する口腔扁平上皮癌は1983年,我々によって索状胞巣を形成して浸潤する4C型(cord-like type)と細胞単位でび漫性に浸潤する4D型(diffuse, widespread type)に改定・細分類された。以来,今日まで,浸潤様式に関する臨床病理学的,免疫組織化学的ならびに実験的研究が行われてきた。その結果,浸潤様式4C型と比較しての4D型特有の性状は,1)最も不良な治療成績,2)細胞単位の浸潤組織像に相応する細胞接着分子の消失,3)組織学的にスキルス胃癌に似た強い線維形成,4)in vitroでの強い運動能,5)コラーゲンゲルを用いたin vitro浸潤モデルにおいて,線維芽細胞を含まないゲルでも観察される特有のびまん浸潤像,6)実験誘発舌癌では4C型までの浸潤像形成に留まり,4D型は形成されなかったこと,そして,7)正所性移植によるin vivo浸潤モデルで3,4C型における固有の浸潤性と対照的な非浸潤性等,であった。以上の結果より,4D型は他のどの型とも独立していると結論付けられ,従って,この浸潤様式細分類は妥当であることが立証された。最後に,4D型症例における臨床像と治療戦略についても言及した。
  • 柴原 孝彦, 森田 章介, 杉原 一正, 箕輪 和行, 山口 朗, 山田 隆文, 野村 武史
    2009 年 21 巻 3 号 p. 171-181
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    1995年1月から2004年12月の10年間に本学会評議員が所属する61施設で,エナメル上皮腫と診断,治療された947症例に対してアンケートによる疫学的調査を実施した。性別は男性581例,女性366例であり,年代別にみると男性は20歳代で18.6%とピークを示し,女性では10歳代で23.2%とピークを示した。また部位では臼歯部が最も多く55.6%であった。臨床症状では疼痛が46.6%と最も多く,次いで腫脹が13.6%であった。エックス線所見は単房性が50.7%,多房性が40.4%であった。2005年のWHO歯原性腫瘍組織分類ではsolid/multicystic typeが74.5%と最も多く,次いでunicystic typeが17.0%,desmoplastic typeが4.1%,extraosseous/peripheral typeが3.0%であった。治療法では,顎骨保存療法(開窓145例15.9%,摘出開放創187例20.5%,摘出・掻爬289例31.8%を含む)が74.0%,顎骨切除療法が24.1%であった。
第27回日本口腔腫瘍学会学術大会
シンポジウム:「口腔癌放射線治療の現状と展望」
  • 中村 太保, 古川 惣平
    2009 年 21 巻 3 号 p. 183
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
  • 藤田 實
    2009 年 21 巻 3 号 p. 184-189
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    口腔癌の放射線治療への歯科放射線科医の関わりを調査した。29施設中11施設で,計35名の歯科放射線科医が放射線治療に従事していた。外部照射では285症例,小線源治療では158例の治療に関わっていた。いずれも舌癌が最も多かった。443例の治療総数は,わが国における口腔癌患者数の約9%に相当すると推測できた。小線源治療に限ると,頭頸部癌小線源治療総数の約半数に関与していたと考えられた。将来の患者数の増加や放射線治療の利用の増加を考えると,歯科放射線科医が貢献できる余地は十二分に存在すると思われた。
  • 清水谷 公成
    2009 年 21 巻 3 号 p. 190-197
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    放射線治療の最大の目標は癌に対して線量を集中させ,周囲正常組織への線量を低減させること,すなわち線量集中性である。この目標への解答が小線源治療であり,粒子線治療であり,強度変調放射線治療(IMRT)である。
    近年,放射線治療における照射技術はコンピュータを導入した高線量率遠隔照射技術が主流となり,医療従事者の被曝が皆無となった。さらに隔離病室を必要とせず,また治療計画時にはコンピュータの最適化プログラムによって任意断面での最適な線量分布を獲得し,確実な線量を投与することができるようになった。しかし,小線源治療が,より一層その優位性を示すためには,適切な線源配置が必要条件で,それを達成するためには各臓器・各領域に応じた技術的工夫が鍵となる。
    小線源治療は放射性同位元素を直接腫瘍内へ挿入することから,腫瘍への優れた線量集中性を有し,周囲正常組織への線量の低減が可能な照射法として現在もなお放射線治療の中で重要な位置を占めている。現在の小線源治療は画像やコンピュータを駆使してより高精度で,より客観的なものになりつつある。一方,舌癌は手術療法の割合が多いものの,高線量率あるいは低線量率小線源治療の良い適応であることに変わりはない。
    そこで,今回は口腔癌の中で最も発現頻度の高い舌癌に焦点を絞り,舌癌に対する放射線治療(小線源治療)の現状と将来の展望について報告する。
  • 中里 龍彦
    2009 年 21 巻 3 号 p. 198-203
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    近年,多数の施設で頭頸部悪性腫瘍に対して形態・機能温存の見地からシスプラチンによる放射線同時併用超選択的動注化学療法が行われている。当施設においては全身化学療法を併用した局所動注療法を行い,進行症例においても一定の成果が得られている。動注時には原発巣や転移リンパ節の栄養血管の同定の他,神経学的脱落症状を回避するために詳細な解剖の知識と同定に細心に注意が必要である。また,治療体系のなかで動注療法の役割を明らかにすべく多施設共同臨床試験が立案され始めている。
  • 平 栄
    2009 年 21 巻 3 号 p. 204-210
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    Cutting Field IMRT(CFIMRT)は従来から確立している照射方法を組み合わせることによりIMRTの線量分布を実現することを目的に開発された照射技術であり,IMRTのような極小照射野を用いないため,再現性・汎用性が高く,各領域で提案されたテンプレートにより比較的容易に最適な治療計画作成が可能である。また,施設間の機器などの格差を吸収するような柔軟性もあり,MLCのない施設でも施行可能である。特に標的体積と危険臓器が解剖学的に近接し複雑に入り組んでいる頭頸部領域へのより多くの施設での臨床応用が期待される。
症例
  • 嶋村 由美子, 安部 貴大, 小林 明男, 依田 哲也
    2009 年 21 巻 3 号 p. 211-216
    発行日: 2009/09/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    ヒトT細胞白血病ウィルスI型(human T-cell leukemia virus type I;HTLV-1)は成人T細胞白血病・リンパ腫(adult T-cell leukemia;ATL)の原因である。口腔内に生じたATLの症例がこれまでにいくつか報告されている。さらにATL患者では固形癌の合併率が高いことが報告されていることから,HTLV-1キャリア患者に悪性腫瘍を疑う口腔粘膜病変が生じた場合,ATL発症を否定する必要がある。
    44歳のHTLV-1キャリアの女性が2,3週間前より舌の腫瘤を自覚した。初診時,左側舌縁部に30×20mm大の硬結のある腫瘤を認めた。検査所見では抗HTLV-1抗体陽性で,血液塗抹標本上で1%の異常リンパ球を認めた。臨床診断は舌悪性腫瘍とした。舌腫瘤の生検の結果,扁平上皮癌であった。舌腫瘤および末梢血のHTLV-1DNAサザンブロット法の結果,HTLV-1プロウィルスDNAのポリクローナルな組み込みが認められ,ATLの発症は否定された。
    舌癌(T2N2bM0)の術前診断とした。それにより舌亜全摘,左側頸部郭清,再建を施行した。術後放射線照射中に右頸部リンパ節転移が出現した。したがって,右側頸部郭清および追加照射をおこなった。しかし,骨および肺への遠隔転移が確認され初診から12か月後に死亡した。
    以上の所見はHTLV-1感染が細胞性免疫の低下をひきおこし,癌の急速な進行に関与していると考えられた。
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