日本口腔腫瘍学会誌
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9 巻, 4 号
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  • 高橋 喜浩, 松島 凛太郎, 清水 正嗣, 中山 巌
    1997 年 9 巻 4 号 p. 251-260
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    活性酸素スカベンジャーと口腔前癌病変および口腔扁平上皮癌の発症との関連を検討した。
    材料および方法: 検体は, コントロールとして健常粘膜を歯肉や口蓋粘膜から採取し, また, 口腔扁平苔癬, 白板症および扁平上皮癌 (SCC) 患者の病変部より採取した。SCCでは, 周辺部の非過形成上皮 (NHE) と過形成上皮 (HE) についても観察した。coPPer-zinc superoxide dismutase (CuZn-SOD) およびglutathione S-transferase-π (GST-π) に対する抗体を用いABC法による免疫組織化学染色を行った。
    結果: 健常上皮では, CuZn-SODは基底細胞層に認められ, GST-πは陰性であった。口腔扁平苔癬では, いずれも陰性。白板症では, 両酵素とも上皮全体に強い陽性所見を示したものがあり, 特にGST-πは, 異形成を伴ったもので57.1%の陽性率を示した。SCCでは, 両酵素とも腫瘍細胞に陽性を示し, GST-πは87.5%と高い陽性率を示した。HEでは, CuZn-SODの陽性所見を上皮全体に認めたものがあったのに対し, NHEでは, 基底層のみ陽性所見を認めた。一方, GST-πは, HEで87.5%, NHEで75%の陽性率を示し, 上皮全体に陽性所見を示していた。CuZn-SODとGST-πの両方の発現は, HEで最も多く, 次いでSCC, 白板症, NHEの順であった。
    まとめ: 今回の結果から両方の酵素の発現, 特にGST-πの発現と口腔粘膜での癌の発生との関連が示唆された。
  • 福田 喜安, 村上 裕子, 泉沢 充, 島田 学, 大内 治, 松田 淳志, 大屋 高徳, 工藤 啓吾
    1997 年 9 巻 4 号 p. 261-268
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1982年1月から1993年12月までの間に当科を受診した口腔扁平上皮癌患者のなかで, 頸部郭清術を施行し, 組織学的にリンパ節転移が陽性で, 原発巣再発の無い42例を対象とし頸部転移様式と患者の予後との関係について検討した。
    結果は以下の通りであった:
    1.転移リンパ節が中内深頸部より上方の1領域に存在した症例, 転移陽性リンパ節が3個以下でなおかつ節外浸潤リンパ節が多くても1個以下の症例および術前に化学療法や放射線治療が行われた場合, リンパ節の組織学的治療効果が大星・下里のGrade II b~IVの症例は他の症例に比較し予後が良好であった。
    2.検討対象とした42例の転帰は, 頸部再発死が11例, 遠隔転移死が7例および無病生存が24例であった。
    3.頸部再発部位では患側の上内深頸部や副咽頭間隙, 対側の頸部が多かった。
    4.遠隔転移例は, 転移陽性リンパ節数が4個以上の症例に多かった。
    以上の結果より, 今後は症例により副咽頭間隙や反対側の郭清も行っていく必要があると思われた。また, 転移リンパ節数が4個以上, あるいは複数の節外浸潤リンパ節を有する症例では, 何らかの補助療法が必要であると思われた。
  • 道脇 幸博, 斉藤 健一, 大野 康亮, 森 紀美江, 山崎 善純, 清水 敏之, 松原 太明, 朝日 浩司, 道 健一, 天笠 光雄, 吉 ...
    1997 年 9 巻 4 号 p. 269-275
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    根治手術と即時再建手術を行った舌癌24症例に対して, 術後の構音機能を評価した。対象症例の内訳をT分類別に見ると, T1症例が4例, T2症例が11例, T3症例が8例, T4症例は1例であった。軟組織の再建方法別では, 遊離前腕皮弁移植症例が19例, 大胸筋皮弁移植症例が3例, 腹直筋皮弁移植症例が2例であった。舌の切除範囲別では, 可動部半側切除症例が10例, 半側切除症例が13例, 亜全摘出症例が1例であった。その結果, 治療方法との関連では原発腫瘍が大きく, 舌の切除範囲が大きくなると術後の構音機能は低下していたが, 再建方法による差異は明らかではなかった。また前腕皮弁移植症例ではT分類, 舌の切除範囲と切除様式, および再建方法が決定されれば術後の構音機能をある程度示せるようになり, 患者に提供する情報としては従来より質の高いものとなった。
  • 今村 英夫, 稲井 哲郎, 豊田 純一朗, 井原 功一郎, 角田 隆規, 後藤 昌昭, 香月 武, 久保田 英朗
    1997 年 9 巻 4 号 p. 276-281
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1992年にWHO歯原性腫瘍の組織学的分類が改訂された。そこで, 1981年10月から1995年12月末までに当科を受診し, この新分類に従って病理組織学的に歯原性腫瘍と診断された56例について臨床統計学的分析を行った。
    1.組織型では, エナメル上皮腫 (23例, 41.1%) が最も多く, 次いで歯牙腫 (22例, 39.3%) , 良性セメント芽細胞腫 (3例, 5.4%) であった。また, 悪性腫瘍は2例 (3.6%) で, 歯原性明細胞癌1例, 原発性骨内癌1例であった。
    2.性別では, 男性29例 (51.8%) , 女性27例 (48.2%) であった。
    エナメル上皮腫の発生は, 男性に優位であった。
    3.受診年齢は, 6歳から83歳 (平均年齢: 32.1歳) であった。エナメル上皮腫は40歳代に最も多く, 歯牙腫は20歳未満に好発していた。
    4.部位別では, 上顎より下顎の発生頻度が高かった。下顎臼歯部に最も多くみられ, 組織型ではエナメル上皮腫が最も多かった。
  • 伊藤 道一郎, 高野 美貴子, 上谷 猛, 宮崎 力, 空閑 祥浩, 水野 明夫
    1997 年 9 巻 4 号 p. 282-287
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    症例は左側下顎臼歯部歯肉癌の80歳の女性である。病理組織学的診断は扁平上皮癌であった。UFTの経口単独投与を行ったところ, 腫瘤は徐々に消失し, 投与開始3週間後には臨床的にも組織学的にも腫瘍の消失がみられた。本症例のメタロチオネイン (MT) およびPCNAの発現について免疫組織化学的に検討をした。MTの発現は癌胞巣の周辺部に認められ, その陽性率は約18%と非常に低い値を示した。また, MTの分布様式はPCNAの分布様式と非常に似た分布を示していた。
  • 柳澤 高道, 高橋 由美子, 川中 正雄, 浦出 雅裕
    1997 年 9 巻 4 号 p. 288-293
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    モルヒネは強力な鎮痛効果を有し, かつ天井効果がない。したがってモルヒネは激痛を伴う進行癌患者に対して癌性疼痛が除去できるまで投与が可能である。われわれは外来にてモルヒネの大量投与を行った進行腺様嚢胞癌患者の癌性疼痛管理の1例を報告する。重大な副作用を引き起こすことなく癌性疼痛を除去するまで徐々にモルヒネを増量したところ, モルヒネの投与量は2760mg/日となり, 投与期間は21か月となった。硫酸モルヒネ徐放錠の大量投与は本患者のQOLの改善に有用であった。
  • 清水 正嗣, 小浜 源郁
    1997 年 9 巻 4 号 p. 294
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
  • 木村 幸紀, 花澤 智美, 岡野 友宏
    1997 年 9 巻 4 号 p. 295-300
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    初診時および経過観察の検査で得られたCT像を用いて上顎歯肉癌および硬口蓋癌症例の22例について頸部リンパ節転移の回顧的検討を行った。頸部リンパ節転移は22例中10例に生じ, 3例は初診時から, 7例は初回治療後にみられた。対側リンパ節への転移は, 8例に生じた。1例は初診時から, 3例は経過観察中に両側にみられ, 他の3例は患側の頸部郭清術後に対側転移した。残りの1例は経過観察中に対側のみへ転移した。これらの対側転移は, 上顎歯肉部から硬口蓋領域のリンパは対側にも向かうため生じると考えられた。外側咽頭後リンパ節転移は, 3例にみられた。2例は頸部リンパ節転移が以前または同時にみられ, 他の1例は頸部郭清後の上顎歯肉癌再発例であった。これら3例はいずれも本転移を生じる以前に頸部の外科的処置を受けていた。外側咽頭後リンパ節転移は, 上顎前歯部から切歯管を経由して, あるいは上顎歯肉硬口蓋面部から軟口蓋を経て外側咽頭後リンパ節へ向かうリンパ流によるか, 上頸部領域に残存した腫瘍もしくは頸部郭清術にて輸出リンパ管内に逆行性リンパ流を生じたことが考えられた。
  • ―上顎洞癌との比較―
    岡部 貞夫, 渡部 隆夫, 松木 清弘, 松木 繁男, 出雲 俊之
    1997 年 9 巻 4 号 p. 301-306
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1975年11月から1995年12月までの約20年間に, 埼玉県立がんセンター口腔外科で治療した顎口腔領域扁平上皮癌一次症例413例のうちの上顎歯肉癌22例, 硬口蓋癌8例の計30例について上顎洞癌30例と比較して臨床像および病理組織像について検討し報告した。
    上顎歯肉・硬口蓋癌の特徴として, その頻度は顎口腔領域扁平上皮癌症例の7.9%であった。中でも硬口蓋癌は特に少なかった。性別では, 相対的に女性の占める割合が多かった。年齢では, 平均が約70歳と高齢であった。T分類では半数以上が1, 2症例であったが, Stage分類ではI, II症例はわずかに36.7%であった。病理組織像のWHO分類では, IIIは認めず, I, IIが同数であり, また角化傾向を認めない症例はなかった。山本・小浜の浸潤様式では, 1型および4D型は認めず, 2型, 3型, 4C型がほぼ同数であった。治療法は, いわゆる上顎癌の三者併用療法変法に加えて, 放射線外照射+レーザーによる腫瘍減量療法を行い, 治療成績は累積生存率で3年, 5年ともに78.3%であった。
  • 野口 誠, 久保田 裕美, 木戸 幸恵, 関口 隆, 田中 信幸, 小浜 源郁
    1997 年 9 巻 4 号 p. 307-313
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1976年から1996年に当科で外科療法によって加療した上顎歯肉癌は27例であった。内訳はstage I: 3例, II: 14例, II: 7例, IV: 3例で, 組織学的悪性度ではgrade1: 9例, 2: 9例, 3: 8例, 4: 1例であった。20例に対して術前にブレオマイシン単独またはシスプラチン, メソトレキセートによる複合化学療法を施行した。平均腫瘍縮小率は52%で, 奏効率は75%であった。大星・下里分類によると, 15例がgrade IIb以上の効果良好例であった。原発巣の切除法は歯槽部のみの切除が10例で, 上顎部分切除が17例であった。原発巣切除と同時に頸部郭清を行った症例は6例で, このうち4例は組織学的にリンパ節転移が認められた。全症例の5年累積生存率は88%で, stage別ではI, II: 100%, III IV: 74%であった。
  • 山田 隆文, 和田森 匡, 小椋 一朗, 宮倉 毅, 石川 均, 山城 正司, 岩城 博, 吉増 秀實, 天笠 光雄, 岡田 憲彦
    1997 年 9 巻 4 号 p. 314-319
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    東京医科歯科大学歯学部附属病院第一口腔外科を受診した1980年から1994年までの上顎歯肉・硬口蓋原発扁平上皮癌45例について臨床病理学的に検討を加えた。
    T分類ではT1: 7例 (15.6%) , T2: 15例 (33.3%) , T: 9例 (20.0%) , T4: 14例 (31.1%) であった。このうち24例 (53.2%) で三者併用療法が施行された。
    上顎歯肉・硬口蓋扁平上皮癌の5年累積生存率は58.9% (T1: 80.0%, T2: 83.6%, T3: 40.0%, T4: 42.8%) で, 三者併用療法では60.7%であった。
    腫瘍の発育との検討では, 内向性発育を示す腫瘍が, 外向性発育を示すものに比べて治療成績が悪く, 病理組織学的に, 生検時のY-K分類では, 浸潤傾向の少ない3型以下の66.6%に比べて, より浸潤傾向の強い4C, 4D型では33.3%と, 明らかに浸潤傾向が強いほど治療成績が悪かった。骨吸収のない症例では全例が生存し, 歯槽骨に骨吸収を示す症例では57.1% (P<0.05) , 骨吸収が上顎洞に達する症例では44.4% (<0.01) と, 腫瘍が上方へ発育するにつれて治療成績は悪化した。
    以上の結果から, 腫瘍の浸潤様式と骨吸収の程度が, 上顎歯肉・硬口蓋扁平上皮癌の予後を左右する大きな因子である可能性が示唆された。
  • 桐田 忠昭, 杉村 正仁
    1997 年 9 巻 4 号 p. 320-327
    発行日: 1997/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    当科で治療した上顎歯肉・硬口蓋粘膜扁平上皮癌において, 主にその病態と予後について病理組織学的に検討し以下の結果を得た。
    1.上顎歯肉癌の口蓋型や硬口蓋癌および後方型のものに原発巣再発や制御不良例が多い傾向を示し, 頸部リンパ節転移頻度も高く, 転移様式も多様となる傾向であった。
    2.病理組織学的悪性度の高いものほど原発巣再発頻度が高く, 予後も不良となる傾向を示した。
    3.5年累積生存率は全症例で71.1%, 上顎歯肉癌は79.6%, 硬口蓋癌は55.6%であった。
    4.予後不良因子は, 側方的分類では, 上顎歯肉癌の口蓋型, 硬口蓋癌, 前後的分類では後方型, および病期の進展したものや組織学的高悪性度症例などであった。
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