日本口腔腫瘍学会誌
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24 巻, 1 号
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原著
  • 道 泰之, 村嶋 真由子, 鈴木 美保, 川俣 綾, 黒原 一人, 鵜澤 成一, 山城 正司, 天笠 光雄
    2012 年 24 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    対象は1998年1月から2007年12月に東京医科歯科大学歯学部附属病院顎顔面外科を受診し,病理学的に扁平上皮癌と診断した口腔癌479例で,このうち重複癌は60例(12.5%)に認められた。男女比は4:1で男性に高頻度で発生した。発生部位は60例68部位中,30例33部位が消化管系統であった。口腔癌先発重複癌は他臓器先発重複癌に比べ,第2癌発生までの期間が有意に短かった。累積生存率は,重複癌群が非重複癌群に比べ有意に低かった。重複癌が発生する危険因子は,年齢,性別,発生部位および喫煙に関し有意差が認められた。
  • 田口 貴英, 森田 圭一, 島田 泰如, 小村 健
    2012 年 24 巻 1 号 p. 9-19
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    角化嚢胞性歯原性腫瘍は,歯原性上皮に由来する単房性もしくは多房性の顎骨内腫瘍で,錯角化を呈する重層扁平上皮により裏装されている。多発性の本腫瘍は母斑基底細胞癌症候群の徴候の一つとして知られている。本腫瘍の臨床的な特徴としては,周囲組織に対して侵襲的な態度を示すことや,再発傾向があることなどがある。
    今回われわれは,2001年から2010年までの10年間に東京医科歯科大学歯学部附属病院顎口腔外科で加療した角化嚢胞性歯原性腫瘍68例(男性39例,女性29例),90腫瘍について臨床的に検討した。このうち8例(男性3例,女性5例),30腫瘍は母斑基底細胞癌症候群例であった。
    全90腫瘍のうち24腫瘍で再発を認め,再発率は26.7%であった。開窓・摘出術を行った腫瘍の再発率(16.1%)は,開窓療法を行わず摘出術を行った腫瘍の再発率(34.5%)より低かった。腫瘍に接する歯を根治的に処置した腫瘍の再発率(3.4%)は,保存的に処置した腫瘍の再発率(37.7%)より低かった。
    再発は,その多くが保存した歯の歯根付近から生じていた。これは,この部位は腫瘍の摘出が困難なため,不完全になってしまうことによると考えられた。
    腫瘍の摘出から再発までの期間は6か月から5年に分布し,ほとんどが3年以内であった。よって,腫瘍摘出後は最低3年間は定期的に経過観察を行う必要があると考えられた。
  • 田中 香衣, 小村 健, 原田 浩之, 岡田 憲彦
    2012 年 24 巻 1 号 p. 21-27
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    2001年4月から2011年3月までに当科で加療した口腔内小唾液腺癌45例の臨床的検討を行った。
    原発部位は,頬粘膜が13例と最も多く,次いで8例の口底であった。病期は,stage I 16例,stage II 13例,stage III 3例,stage IVA 12例,stage IVB 1例であった。病理組織学的には,粘表皮癌が最も多く22例で,次いで腺様嚢胞癌13例,多型低悪性度腺癌4例の順に多かった。
    初回治療として,放射線療法を施行した1例を除く44例に手術療法を施行した。原発巣再発は粘表皮癌4例,腺様嚢胞癌1例,腺癌NOS 1例に認めた。原発巣再発を認めた粘表皮癌4例のうち,高悪性度は2例(40.0%),中悪性度は1例(20.0%),低悪性度は1例(9.1%)で,追加手術により中悪性度・低悪性度の2例は救済された。頸部郭清術は16例に施行し,頸部再発は高悪性度および中悪性度粘表皮癌に1例ずつ認め,追加手術により中悪性度症例は救済された。原発腫瘍・頸部が制御された上で肺転移を認めた症例は腺様嚢胞癌の3例で,いずれも原病死した。小唾液腺癌45例の5年および10年疾患特異的生存率は90.1%および66.9%であった。
    以上より,原発巣再発の多い高悪性度粘表皮癌では十分な安全域の設定が必要であり,腺様嚢胞癌においては肺転移に対する新規治療法の確立が必要と考えられた。
症例
  • 櫻井 博理, 吉田 孝史, 尾崎 尚, 濱本 宜興, 飯野 光喜, 小林 孝憲, 朔 敬
    2012 年 24 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2012/03/15
    公開日: 2012/03/27
    ジャーナル フリー
    上皮筋上皮癌は,全唾液腺腫瘍の1%を占めるまれな唾液腺悪性腫瘍である。その大部分は耳下腺に好発する。今回われわれは,顎下腺に生じた上皮筋上皮癌と,肺癌の重複癌の1例を経験したので報告する。
    患者は57歳の女性。約10年前からの左顎下部の腫脹を主訴に当科を受診した。左顎下腺部に拇指頭大の弾性硬の腫瘤を触知した。CTにて,左顎下腺体内ならびに左上葉肺野に腫瘍性病変を認めた。左顎下腺腫瘍と左転移性肺癌の診断にて,2008年4月に左顎下腺腫瘍摘出術を施行,その後同年5月に当院呼吸器外科にて左肺上葉切除術が施行された。術後の病理検査では,顎下腺腫瘍は導管上皮成分と淡明筋上皮成分からなる二層構造の特徴的な上皮筋上皮癌と診断された。また左肺腫瘍は細気管支肺胞上皮癌の診断で,相互の関連性はなかった。術後経過に異常なく,術後3年目であるが,経過は良好で腫瘍の再発も認められない。
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