日本口腔腫瘍学会誌
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18 巻, 4 号
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  • 進行癌の3例および本邦報告例に関する文献的考察
    木村 幸紀, 花澤 智美, 岡野 友宏
    2006 年 18 巻 4 号 p. 93-103
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    われわれの施設では, 2002年から2004年にかけて上顎歯肉扁平上皮癌進行例の3例に外側咽頭後リンパ節 (LRPN) 転移がみられた。断層画像では, 原発腫瘍は大臼歯部歯肉から硬口蓋へ浸潤し, また患側の後咽頭間隙内に各々, 10×10mm, 11×8mm, 9×5mmの大きさの転移性リンパ節が認められた。これら3症例と本邦における論文で報告されている, LRPN転移を生じた他の上顎歯肉癌7例を, 原因となったリンパ路と臨床的特徴に重点を置いて分析した。LRPN転移は, 2例では切歯管・鼻腔底―上咽頭側壁路あるいは5例で硬口蓋―口蓋帆挙筋内側路として輸入リンパ管に由来した可能性がある。他の3例では, 頸部郭清術や多発性頸部転移によって生じた通常はみられない逆行性リンパ流に, このような稀な転移が由来した可能性がある。頸部転移のあった8例中7例でLRPN転移が同側にみられた。これらの7例中4例で, 顎下部または上頸部リンパ節転移が同時にみられた。2例では初診時の断層画像でLRPN転移がみられ, 3例は初回治療終了直後にみられたが, これらの各々が進行癌: (r) T3-4であった。一方, (r) T1-2の4例ではLRPN転移は後発転移であった。よって, 上顎歯肉癌が生じた場合では常に, 外側咽頭後リンパ節は断層画像において関心を寄せるべきである。
  • 山下 佳雄, 重松 正仁, 後藤 昌昭
    2006 年 18 巻 4 号 p. 105-111
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔癌治療に際して, 咀嚼や構音といった機能を温存することは重要な問題となる。現在, 腫瘍切除により生じた欠損部を修復するためにいろいろな皮弁が用いられている。今回, われわれは口腔癌切除後に頸部島状皮弁を使用し再建術を行った20症例を対象に, 皮弁の術後合併症の検討を行った。皮弁の術後合併症としては皮弁壊死が認められたが, 壊死した部位は瘢痕性に治癒し追加の手術を必要とするものはなかった。また術後の機能障害としては, 咀嚼, 会話ともに軽度であり術後約半年でほぼ満足いく結果であった。
  • 岩本 修, 倉富 慶太郎, 姉川 絵美子, 古賀 真, 古賀 千尋, 楠川 仁悟
    2006 年 18 巻 4 号 p. 113-119
    発行日: 2006/12/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    重複癌は増加傾向にあるが, その背景には癌の診断技術や治療法の進歩, あるいは高齢者人口の増加があると思われる。しかし, 5重複癌以上の報告になるときわめてまれである。今回われわれは, 口腔癌を含む4臓器5重複癌の1例を経験したので報告する。患者は47歳女性で, 左側上顎歯肉腫脹を主訴に, 久留米大学病院歯科口腔医療センターを受診した。既往歴には組織型が異なる左右側の乳癌 (非浸潤性乳管癌, 浸潤性乳管癌: 硬癌) , 大腸癌 (腺癌) があった。精査後, 左側上顎歯肉扁平上皮癌 (T4N2aM0) の診断下に, 左側上顎骨部分切除術および左側頸部郭清術を施行した。術後8か月に, 右側頸部リンパ節転移および原発性肺癌 (小細胞癌) が判明したため, 頸部郭清術術後から化学療法 (VP-16, CDDP) を開始した。しかし, 効果判定では腫瘍の増大を認め, さらに重度の白血球減少症も認めたため, 化学療法は中止となった。その後, 脳転移が判明したためγ-ナイフ治療を開始するも, 効果がなく全脳照射に移行した。また, 術後19か月で左側上顎切除部からの再発を認めたため, 姑息的にTS-1を投与したが感受性を示さなかった。次第に右肺下葉にも癌性胸水を認めるようになり, 肺炎による心不全を継発した。その後, 全身状態が悪化して呼吸不全による死亡退院となった。
    今後も, 口腔領域に関連した重複癌は増加することが予想されるので, FDG-PETなどを用いた十分な検査が必要と考える。
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