今回われわれは,頸部郭清術を伴う根治手術後のリンパ浮腫により上気道狭窄を生じた口底癌症例を経験したため,ここに報告する。
患者は71歳男性で,左側口底の疼痛を主訴に当科を受診した。口底癌(cT3N0M0)の診断下に,口底悪性腫瘍切除術,下顎区域切除術,肩甲舌骨筋上頸部郭清術,チタンプレートによる顎骨再建術,前外側大腿皮弁移植術,気管切開術を施行した。術後経過が良好であったため,気管カニューレからの離脱を進めたが,開始当初から呼吸困難感を訴え,1か月以上継続した。CT画像では喉頭披裂部の強い腫脹による気道狭窄を認め,経鼻内視鏡でも喉頭披裂部の強い腫脹と同部での唾液貯留を認めた。これらの腫脹はリンパ浮腫によるものと考えられたため,運動療法を開始した。2週間で呼吸困難感は消失し,喉頭披裂部の腫脹も軽減した。最終的に本患者は経口摂取が可能となり,気管カニューレの抜去も可能となった。
日常の臨床において口腔癌治療後の機能回復に難渋する症例を経験することがある。原因のひとつとしてリンパ浮腫の存在を考慮する必要があると考えられた。
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