日本口腔腫瘍学会誌
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10 巻, 3 号
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  • 岳 麗華, 岩井 正行, 古田 勲
    1998 年 10 巻 3 号 p. 99-105
    発行日: 1998/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    細胞周期に直接作用する蛋白質p34cdc2の発現を舌扁平上皮癌63例で免疫組織化学的に観察した。p34cdc2の発現は全症例中, 34例 (54.0%) を認めた。平均陽性細胞率は17.7%であった。p34cdc2の組織内局在は癌胞巣では周辺部であり, び漫性浸潤癌では散在して観察された。
    p34cdc2の発現とT因子との関連では, p34cdc2はT1群で4/11例 (36.4%) , T2群で22/37例 (59.5%) , T3群で4/5例 (80.0%) と発現され, T1, T2, T3の順で高値を示したが, T4群では4/10例 (40.0%) と低値となった。N因子との関連では, p34cdc2の発現はN0群では14/32例 (43.8%) であったのに比して, N1群で19/25例 (76.0%) であったが, N2群で1/6例 (16.7%) と低値であった。Stageとの関連でもp34cdc2の発現はStage I, Stage II, Stage IIIの順で高値となり, Stage IVで低値となる結果であった。すなわち, 舌癌の臨床的進行度に相応して細胞増殖能が高くなるが, 逆に著しく進行した癌では細胞増殖能が低下することが示唆された。p34cdc2の発現と病理組織学的所見との関連ではp34cdc2はWHOのGrade IIIで5/5例 (100%) , 浸潤様式4C, 4D型で10/15例 (66.7%) , 細胞異型性「強」で13/17例 (76.5%) と発現され, 有意に高値を示した。すなわち, p34cdc2の発現は舌癌の組織学的な悪性度所見と相応していた結果が得られた。以上の結果より, P34cdc2発現の検索は舌扁平上皮癌の悪性度の本態解明に有用と考えられた。
  • 新谷 悟, 寺門 永顕, 吉濱 泰斗, 小山 貴弘, 西山 明慶, 岸本 晃治, 松村 智弘
    1998 年 10 巻 3 号 p. 106-111
    発行日: 1998/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    本論文は, 口腔癌患者におけるVideofluoro-graphyを用いた嚥下の評価に関する経験について述べた。17例の口腔癌患者を対象に検査を行った。嚥下の様相は, 術前ならびに術後の摂食開始時にVF検査にて評価され, 記録された。VFによる評価により臨床的な観察によって同定されない異常所見を見いだすことができた。患者とともにVF検査結果を基に嚥下訓練について話し合うことで, 患者の協力が得られた。以上のことから, VFによる評価は嚥下様相の理解とともに嚥下機能訓練に有用な方法と考えられた。
  • 向井 洋, 杉原 一正, 石神 哲郎, 國芳 秀晴, 山口 孝二郎, 川島 清美
    1998 年 10 巻 3 号 p. 112-120
    発行日: 1998/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1980年4月から1995年12月までに, 鹿児島大学歯学部第1口腔外科でexcisional biopsyを行ったstage I舌癌26例に関し, 切除標本の病理学的所見と後発転移との関連性を検討し, 以下の結果を得た。
    1.後発転移は26例中7例 (26.9%) に認められ, 転移出現までの期間は5~15か月 (平均8.5か月) , 転移部位はレベルIが2例, IIが2例, I&IIが3例で, 転移リンパ節数は1~5個 (平均2個) であった。
    2.病理学的な腫瘍の大きさ (pT) が増大するに従い深達度が増し, 筋肉層内に達していた症例のpTは13.1±2.8mmで, それ以外の症例とは有意差 (p<0.01) が認められた。
    3.深達度が境界部に及んでいた5例中1例 (20.0%) , 筋肉層内に達していた15例中6例 (40.0%) に後発転移が認められた。しかし, pTと後発転移との間には相関関係は認められなかった。
    4.分化度との関係では, Grade Iは27.8%, IIは16.7%, IIIは50%に後発転移がみられた。
    5.浸潤様式が1および2型では後発転移は出現せず, 3型では20.0%, 4C型では71.4%に認められた。
    6.病理学的なリンパ管侵襲の有無と後発転移との間には, 相関は認められなかった。
    7.後発転移をきたした7例全例に節外浸潤が認められ, 頸部郭清後に2例を除く5例に22~54Gyの照射を行い, うち3例はCDDPを主体とした化学療法を追加した。
    8.今回の26例の5年累積生存率は71.1%であった。
    9.pTが10mm以上で筋肉層内に浸潤し, 浸潤様式が4C (あるいは4D) を呈する舌癌は, stage IであってもレベルIIまでの予防郭清を行うことが望ましいと思われた。
  • 楠川 仁悟, 亀山 忠光
    1998 年 10 巻 3 号 p. 121-127
    発行日: 1998/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    上顎歯肉扁平上皮癌における頸部転移の頻度, 様式や危険因子を明らかにするために, 22例の上顎歯肉扁平上皮癌症例について臨床病理学的に検討した。
    22例のうち, 1次転移4例 (18.2%) および後発転移は7例 (31.8%) に認められ, 上顎歯肉癌の頸部転移率は50.0%であった。また, 反対側への頸部転移が3例に認められた。頸部転移は, T4症例, 後方型, 内向型やびまん性浸潤を示す例で多く, また, レベルIIに最も多かった。頸部郭清により頸部は全例で制御されたが, 原病死の主な原因は肺転移であった。その結果, 根治治療例での5年累積生存率は79.1%であった。
  • 高木 潤吉, 大関 悟, 後藤 圭也, 大石 正道, 小林 家吉, 藤村 義秀, 本田 武司
    1998 年 10 巻 3 号 p. 128-134
    発行日: 1998/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Polymorphous low-grade adenocarcinoma (以下PLGA) は口腔内, 主に口蓋に発生する小唾液腺癌である。本腫瘍は比較的均一な細胞からなるが, 組織像は多彩な浸潤増殖像を呈する。今回著者らは3例のPLGAを経験したので報告する。
    症例1ではPLGAは右側舌下面に発生し, 症例2, 3では口蓋に発生していた。症例1では右側顎下リンパ節への転移が認められたため, 舌部分切除術および肩甲舌骨筋上頸部郭清術を行った。症例2, 3では原発巣の切除のみが行われた。症例1は術後7年, 症例2は術後4年経過するが, 再発, 転移は認めていない。症例3は術後8か月で老衰のため死亡した。これらの症例の病理組織学的所見では, 細胞は小型から中型で, 均一な円形の核を有するものの, 充実性, 管腔状, 篩状, 梁状, 小葉状構造などの多彩な増殖像がみられた。分裂像はほとんど認められなかった。
    免疫組織学的所見では, 症例1ではcytokeratinとS-100蛋白が一部の細胞に陽性を示し, 症例2, 3ではcytokeratin, S-100蛋白, vimentin, actinが陽性を示した。carcinoembryonic antigenとepitherial membrane antigenは3症例とも陰性であった。
  • 辻 司, 園部 昌治, 野口 誠, 小浜 源郁
    1998 年 10 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 1998/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    12歳, 男児の右側顎下部に発生した嚢胞状リンパ管腫に対しOK-432の局所注入療法を行った1例を報告する。初診時の臨床診断を血管腫として圧迫療法を行い縮小効果が得られたが, 同療法施行後10カ月に再発をきたした。その後, 病変から得られた内容液の生化学分析により嚢胞状リンパ管腫と最終診断し, 同病変に対し局注療法を2回 (1回目; 0.05KE, 2回目; 0.025KE, 総投与量; 0.075KE) に分けて行ったところ, 著明な縮小効果が認められた。術後2年経過するが, 再発増大傾向は認められていない。
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