1980年4月から1995年12月までに, 鹿児島大学歯学部第1口腔外科でexcisional biopsyを行ったstage I舌癌26例に関し, 切除標本の病理学的所見と後発転移との関連性を検討し, 以下の結果を得た。
1.後発転移は26例中7例 (26.9%) に認められ, 転移出現までの期間は5~15か月 (平均8.5か月) , 転移部位はレベルIが2例, IIが2例, I&IIが3例で, 転移リンパ節数は1~5個 (平均2個) であった。
2.病理学的な腫瘍の大きさ (pT) が増大するに従い深達度が増し, 筋肉層内に達していた症例のpTは13.1±2.8mmで, それ以外の症例とは有意差 (p<0.01) が認められた。
3.深達度が境界部に及んでいた5例中1例 (20.0%) , 筋肉層内に達していた15例中6例 (40.0%) に後発転移が認められた。しかし, pTと後発転移との間には相関関係は認められなかった。
4.分化度との関係では, Grade Iは27.8%, IIは16.7%, IIIは50%に後発転移がみられた。
5.浸潤様式が1および2型では後発転移は出現せず, 3型では20.0%, 4C型では71.4%に認められた。
6.病理学的なリンパ管侵襲の有無と後発転移との間には, 相関は認められなかった。
7.後発転移をきたした7例全例に節外浸潤が認められ, 頸部郭清後に2例を除く5例に22~54Gyの照射を行い, うち3例はCDDPを主体とした化学療法を追加した。
8.今回の26例の5年累積生存率は71.1%であった。
9.pTが10mm以上で筋肉層内に浸潤し, 浸潤様式が4C (あるいは4D) を呈する舌癌は, stage IであってもレベルIIまでの予防郭清を行うことが望ましいと思われた。
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