日本口腔腫瘍学会誌
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1 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • ―温熱療法の効果についての検討―
    津村 政則, 桜井 和裕, 吉賀 浩二, 高田 和彰
    1989 年 1 巻 2 号 p. 229-234
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    今回, 我々は高度に進展した口唇癌に対して温熱療法を施行し, 温熱療法の効果について検討したので報告する。
    温熱療法は2450MHzのマイクロ波温熱加温装置を用い, 原則的に週2回の加温間隔で施行し, 目的温度は43℃, 加温時間は40分以上とした。アプリケータは表在性腫瘍に適切と考えられる空間放射型 (HTA-2450-7) を使用した。
    治療は手術を前提とした温熱療法, 化学療法, 放射線療法の併用療法を行った。
    なお, 腫瘍は進展例であり, 温熱療法を施行するにあたり加温部位と非加温部位を設定した。
    治療効果を肉眼的, 病理組織学的に検討した結果, 加温部位において抗腫瘍効果の増強が認められた。
    患者は手術後2年5ヶ月経過した現在も, 再発, 転移等なく経過良好である。
  • 小野 敬一郎, 清水 正嗣, 柳沢 繁孝, 水城 春美, 河村 哲夫, 松島 りん太郎, 岡本 暁子, 大津 孝彦
    1989 年 1 巻 2 号 p. 235-244
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    医用高出力レーザーは, 各科領域の疾患, 特に腫瘍を中心として使用されてきた。使用方法は切除からレーザーサーミアと様々であるが, 外科治療や集学的治療への適応が一層広がる過程にある。
    口腔外科領域においても, 基礎的研究と共に各種疾患, 治療に用いられている。
    我々のレーザー使用は1984年4月のコヒレント社製CO2レーザーに始まり, 翌年日本赤外線工業社製YAG-CO2レーザー, 1987年にはSLTジャパン社製Nd: YAGレーザーの使用を開始した。1984年4月から1988年12月までの4年8カ月間に当科において実施したレーザー外科は38例で, 男性22例, 女性16例であった。うち, 悪性腫瘍症例への使用は25例で, 今回の主な研究対象とした。
    組織型別では扁平上皮癌が20例 (80%) を占めていた。レーザー外科の使用方法は腫瘍切除18件, 蒸散12件, 切除+蒸散5件, 頸部郭清2件であった。麻酔方法では局所麻酔21件, 全身麻酔16件であった。レーザー外科処置後非縫合とした症例が大半を占めるが, Nd: YAGレーザーにて切除後縫合を施した6症例においては創治癒は良好であった。
    すべての症例が他療法との併用でレーザー外科を施行しており, 悪1生腫瘍の集学的治療の一環としてレーザー外科を位置づけている。
  • 冲津 光久, 平沼 康彦, 島崎 貴弘, 加藤 義浩, 嶋田 淳, 山本 美朗, 内海 順夫
    1989 年 1 巻 2 号 p. 245-250
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    多形性腺腫は, 最も一般的な唾液腺腫瘍のひとつである。その発現部位としては, 耳下腺で多く発症するとされている。
    今回, われわれは左側舌下腺に発症した多形性腺腫の1症例を経験した。患者は37歳女性で, 口底部の無痛性腫脹を主訴に当科を受診した。生検での病理組織学的検討で, 多形性腺腫の組織所見が得られた。このため, 全身麻酔下に腫瘍切除術を行った。術後, 6年経過するが再発は認めていない。
  • 金子 裕之, 三宮 慶邦, 安藤 智博, 丹 千昭, 桑澤 隆補, 阿部 廣幸, 扇内 秀樹, 下野 正基
    1989 年 1 巻 2 号 p. 251-259
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Verrucous carcinomaは扁平上皮癌の一亜型として, 1948年Ackermanにより最初に報告された。
    今回われわれは口腔領域のverrucous carcinomaの2例を報告した。1例にはlaser surgeryを, 他の1例にはペプロマイシンによる化学療法とlaser surgeryを施行し浪好な結果を得た。
    また今回verrucous carcinoma30例の報告は本邦における文献を渉猟した。治療法に関しては外科療法, 凍結外科, 化学療法, 放射線療法あるいはこれらの組合せによるものなど様々である。われわれは腫瘍の広範囲な切除が第一選択と考える。放射線療法はanaplastic transformationを起こしやすいとされており, あまり使われていない。
  • 岡沢 恵子, 星名 秀行, 大橋 靖, 鈴木 誠, 福島 祥紘, 石木 哲夫
    1989 年 1 巻 2 号 p. 260-269
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Necrotizing sialometaplasiaは, 唾液腺の良性, 炎症性の疾患で, 腺組織の広範な壊死と扁平上皮化生を特徴とする。臨床的, 病理組織学的に扁平上皮癌や粘表皮癌に類似した所見を呈するため, 時に悪性腫瘍と誤診されることもある。しかし, 本症は数ケ月以内に自然治癒するとされており, 誤診による過剰な治療を防ぐために, 慎重な診断が必要である。
    症例: 21歳, 女性。主訴: 口蓋左側の腫脹と疼痛。口腔内診査にて口蓋左側に中央に潰瘍を伴った15×9mmの腫脹を認め, 臨床的に口蓋腺の炎症性疾患もしくは腫瘍と診断した。細胞診では, 異型細胞が認められ, 生検を行った。病理組織学的にNecrotizing sialometaplasiaの所見であり, 以後, 特に治療を行わずに治癒が確認された。
  • 新木 恒猪, 宗永 泰一, 虎谷 茂昭, 宮内 忍, 津村 政則, 阪本 知二, 吉賀 浩二, 高田 和彰
    1989 年 1 巻 2 号 p. 270-276
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    傍骨性骨肉腫は一般にまれな疾患である。本腫瘍は一般に通常の骨肉腫とは異なった臨床病態をとることにより骨肉腫とは区別して考えられている。
    現在までに顎骨領域では14例の報告例があるのみである。最近我々は52歳女性の下顎骨に発生した傍骨性骨肉腫を経験したので文献的考察を加えて報告する。
  • 結城 勝彦, 柳田 隆, 岩淵 皐, 深沢 肇, 関山 三郎
    1989 年 1 巻 2 号 p. 277-283
    発行日: 1989/12/31
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔癌に対し, 機能保存を目的とした化学療法および放射線療法の併用による治療後, 残存した腫瘍に対し通常初診時の占拠範囲に周囲の正常組織を含めて切除している。
    今回, 進展した歯肉癌症例に対しBMP療法および放射線の併用療法を施行し, 著しい効果を認めたが臨床的に腫瘍の残存が疑われたため, 初診時の腫瘍占拠部のみの切除にとどめ良好な結果をえた症例を経験した。摘出物の病理組織所見では, 原発巣部は瘢痕化し腫瘍組織の残存は認められなかったため併用療法が有効であったことになる。しかし高齢者や全身状態の不良な症例・進展例で, 臨床的に一部小範囲に腫瘍の残存が疑われる場合の手術に際しては, 口腔領域では容易に直視直達が可能であることからも, 臨床所見に基ずき切除範囲を狭める縮小手術の可能性を本例は示唆しているものと考えられ今後も十分な経過観察を行って行く予定である。
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