日本口腔腫瘍学会誌
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9 巻, 3 号
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  • 組織像, 治療法と予後との関連性について
    西松 成器, 梅田 正博, 川越 弘就, 武 宜昭, 藤岡 学, 奥 尚久, 寺延 治, 中西 孝一, 島田 桂吉
    1997 年 9 巻 3 号 p. 81-92
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1980年より1995年に当科で治療を行った小唾液腺原発腺様嚢胞癌27例について臨床病理学的に検討し, 以下の結果を得た。
    1.原発部位は口蓋, 口底, 頬粘膜などに多かった。
    2.治療法は外科的切除を原則としており, 27例中21例で手術が施行された。摘出物切除断端に組織学的に腫瘍残存を認めた場合は術後照射を追加した。
    3.原発巣非再発率は初回治療後3年で89%, 5年55%であったが, 10年では29%に低下していた。
    4.頚部転移は4例にみられたが, いずれも頚部郭清により制御可能であった。転移巣の組織型は4例ともsolid patternであった。
    5.遠隔転移は初診時3例, 経過中13例にみられたが, 大部分の患者では転移巣の発育は緩慢であった。
    6.生存率は3年74%, 5年60%, 10年20%と, 長期予後は不良であったが, 比較的良好なQOLが得られた。
    7.遠隔転移を有する患者は転移のない患者に比べて生存率は低かったが, 腫瘍の部位, T分類, 組織型, 手術断端の腫瘍残存の有無などの所見と予後との関連性は認められなかった。
    8.腺様嚢胞癌の根治療法は困難であることが示された。現時点では原発巣の完全切除を原則とするが, 拡大切除はQOLを考慮した範囲に止めるべきで, 必要に応じて術後照射を追加する方が妥当と考えられた。
  • ―予後および術後頸部リンパ節転移について―
    中野 靖子, 小林 恒, 虻川 東嗣, 遠藤 有美, 松宮 朋穂, 木村 博人
    1997 年 9 巻 3 号 p. 93-100
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    Stage分類は口腔癌の治療採択において重要な参考因子であるが, 早期癌の患者において結果的に不適当な治療であったために死亡に至る症例がある。そこで, 今回筆者らは, 口腔扁平上皮癌新鮮例50例を対象とし, Annerothの分類 (1987) を用いて組織学的悪性度と臨床経過との関連を検討した。その結果, Stage分類と組織学的悪性度は独立因子として予後に関与していた。また, 組織学的悪性度が高くなるにつれて生存率が低下する傾向が認められた。初診時臨床的にリンパ節転移陰性であたStage I, IIの早期癌においても組織学的悪性度の高いものに予後不良例が多い傾向があった。さらに, Stage I, II早期癌において組織学的悪性度の高いもの, すなわち総合点13点以上のものに高率に術後頚部リンパ節転移が認められ (P<0.05) , 組織学的悪性度は術後リンパ節転移の予測因子として有用であることが示唆された。
  • 針谷 靖史, 関口 隆, 米倉 宣幸, 中野 敏昭, 野口 誠, 平塚 博義, 永井 格, 小浜 源郁
    1997 年 9 巻 3 号 p. 101-107
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1976年4月から1996年3月までの過去20年間に当科にて外科療法を行い, 病理組織学的にエナメル上皮腫と診断された79例について臨床病理学的検討を行った。
    1.組織型は, follicular type (27例, 34.2%) , plexiform type (26例, 32.9%) の2つが多くを占めていた。
    2.対象79例中, 保存療法が56/79例 (70.9%) に, 根治療法が23/79例 (29.1%) に施行された。
    3.再発は9/79例 (11.4%) に認められ, これらのうち4例が初回治療時に比し, 組織型の変化が認められた。
  • 山本 学, 白石 剛, 各務 慎一, 猪田 博文, 瀧上 啓志, 吉武 一貞
    1997 年 9 巻 3 号 p. 108-113
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    鬱病を有する45歳の男性に生じた上唇癌の1例を経験した。まずCPE化学療法 (Cisplatin, Peplomycine, Etoposide) を1コース行った後, 上唇腫瘍の外科的切除を行った。腫瘍切除後に生じる上唇の欠損は口唇幅径の約2/5であったが, 皮弁による再建は患者の同意が得られなかったため, やむなく縫縮し術後に放射線照射 (60Gy) を行った。本例は治療を進めていく途中に, 鬱病の悪化による抑鬱, 焦燥, 不安状態により不眠や排尿困難などの身体症状の訴えが何度も認められ, その対応に大変苦慮した症例であった。術後1年6ヶ月経過した現在, 再発傾向は認められず, また口唇の大きな変形, 摂食・発語・開閉口時の機能障害などの後遺症は認められず経過良好である。
  • 立石 晃, 竹嶋 功人, 吉岡 泉, 福田 仁一
    1997 年 9 巻 3 号 p. 114-117
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    症例は90歳女性で, 舌癌 (TIN0M0) のため, UFT-E顆粒200mg/dayの投与にて腫瘍が縮小したため投与11週後 (計15.4g) にYAGレーザーを用いて安全域5mmの切除を局所麻酔下にて施行した。術後の病理診断にて腫瘍細胞 (一) であった。術後14週間 (計19.6g) UFT-E顆粒を投与したが, 副作用はみられなかった。初診来2年を経過するが再発, 転移もなく現在経過良好である。90歳を越える超高齢者の悪性腫瘍への対処はQOLを念頭におかなければならない。本症例はQOLを向上させ, かつ準根治的処置が施行可能であった。
  • 木村 幸紀, 花澤 智美, 真鍋 真人, 南雲 正男, 岡野 友宏
    1997 年 9 巻 3 号 p. 118-122
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    外側咽頭後リンパ節いわゆるルビエールリンパ節 (R節) への転移は, 上咽頭癌や下咽頭癌で高頻度に生じるが口腔癌の転移は非常に稀である。ここでは, R節転移を生じた口底部前方の癌の1例を報告する。患者は, 66歳の男性で, 口底扁平上皮癌 (TINOMO) の診断のもとに腫瘍切除と右側上頸部郭清術を施行した。術後6か月目のCTで局所再発は見られなかったが, 中咽頭下方部のレベルで患側の咽頭側壁に浸潤した再発腫瘍と左側にリンパ節転移を認めた。両側の頸部郭清術と補助的化学療法を施行したが, 8か月後のCTで右側にR節転移を認めた。R節転移の原因として, 既報告で述べたように頸部郭清術によってリンパ排出に変化を生じたことが挙げられ, また下咽頭部に近接して頸部再発が生じたためとも考えられた。従って, 口腔癌患者でも頸部再発を生じた場合ではR節を画像診断するべきである。
  • 丸岡 靖史, 横尾 恵美子, 安藤 智博, 三宮 慶邦, 扇内 秀樹
    1997 年 9 巻 3 号 p. 123-128
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔癌の頬リンパ節への転移はまれである。われわれは頬リンパ節転移を伴った頬粘膜癌の1例を経験したので報告する。患者は79歳男性で, 左頬部の腫脹を主訴に当科を受診した。頬部に拇指大, 弾性硬の腫瘤がみられ, CT所見では頬筋に接した, high density massを認め, exciosional biopsyを施行したところ転移性扁平上皮癌と病理診断されたため, 入院し頭頚部管腔の内視鏡検査を行ったところ, 左頬粘膜に16×12mmの潰瘍が認められた。生検の結果, 頬粘膜扁平上皮癌 (TINIMO, Stage III) と診断し, 放射線治療 (60Gy) を施行し腫瘍は消失した。しかし外来経過観察中に, 左顎下リンパ節転移を認めたため, 再入院し左全頚部郭清術を施行した。現在外来で経過観察しているが, 再発転移なく良好である。
  • 我那覇 宗教, 砂川 元, 新崎 章, 喜舎場 学, 津波古 判, 平塚 博義, 新垣 敬一, 仲盛 健治
    1997 年 9 巻 3 号 p. 129-135
    発行日: 1997/09/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔腫瘍, 特に悪性腫瘍症例における術後機能障害の程度は, その切除部位, 切除範囲そして再建法に大きく影響される。その中でも軟口蓋と口峡咽頭欠損部の再建では, 口腔機能の回復が他の口腔領域に比較して困難である。
    今回, 口蓋島状弁により軟口蓋と口峡咽頭の再建を施行し, 良好な術後機能結果を得た2症例を経験した。これらの2例より口蓋島状弁は, 軟口蓋および口峡咽頭部の中等度欠損の再建にきわめて有用であり, 術後機能障害を最小限にできる可能性が示唆された。
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