日本口腔腫瘍学会誌
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5 巻, 3 号
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  • 岩井 正行, 姚 立, 古田 勲, 賀来 亨, 大谷 静治
    1993 年 5 巻 3 号 p. 267-271
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    舌癌周辺粘膜上皮における増殖細胞核抗原 (PCNA) の分布様式について検討する目的でPCNA Labeling Index (LI) と組織学的所見との関連性について検討した。
    検討対象は舌扁平上皮癌18症例の生検組織である。10%ホルマリン固定標本の薄切切片を抗PC.NA抗体PC10を用いて免疫組織化学的に染色した。顕微鏡視下でPCNA陽性細胞数を算定し, PCNA Labeling Index (LI) を求めた。
    結果: 舌粘膜上皮のPCNA LIは症例や部位で異なり, 7症例のPCNA LIはm±SD=11.8±6.9 (%) であった。過形成上皮 (10例) のPCNALIはm±SD=15.1±5.9 (%) と舌粘膜上皮より高値を示した。異形成上皮 (5例) ではm±SD=32.5±9.5 (%) と著しい高値を示した。このことから異形成上皮細胞の増殖活性は高く, 癌化と密接な関係にあることが示唆された。
  • 佐藤 明, 野谷 健一, 福田 博
    1993 年 5 巻 3 号 p. 272-277
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌の皮膚浸潤例に対し, 皮膚切除を含む根治手術を行い, 組織学的に皮膚浸潤が確認された14症例について臨床的検討を行った。皮膚浸潤例の原発部位はさまざまであったが, 皮膚への浸潤・転移部位は全症例が原発・再発巣および頸部転移リンパ節を被覆する皮膚であった。
    14例中7例に再発がみられ, この7例中5例は衛星病巣を伴った再発で, これらは原発巣制御不能により全例死亡した。この衛星病巣はリンパ行性の逆行性転移により生じると考えられた。手術と併用した放射線療法および化学療法の衛星病巣制御に対する有効性は不明であった。3年および5年累積生存率はそれぞれ64.3%, 35.7%であった。今回の検討より, 口腔扁平上皮癌の皮膚浸潤例においては, 衛星病巣が生じる前にできるだけ早期に手術を行うのが最善の方法であると思われた。
  • 1.CR症例における縮小手術の可能性
    和田 健, 原田 昌和, 森田 展雄, 宮田 和幸, 坂本 忠幸
    1993 年 5 巻 3 号 p. 278-283
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    口腔扁平上皮癌に対しCDDPを含む多剤併用ネオアジュバント化学療法による治療を施行し, その結果CRと判定された11症例について, ネオアジュバント療法後の生検材料と切除腫瘍組織の組織学的効果について検索した。生検材料のShimosatoの分類による組織学的効果の評価はGrade II b 4例, Grader IV 7症例であり, 11症例中8症例で切除組織の連続切片での組織学的効果と一致した。CR症例では, たとえGrade II bと判定されても, 腫瘍の残存は原発巣表層部中心直下に限局していた。したがって, CR症例では縮小手術の可能性があると考えられた。
  • 内山 睦美, 亀山 忠光, 原田 博史, 田中 俊一, 楠川 仁悟, 翁 玉香, 横山 俊朗
    1993 年 5 巻 3 号 p. 284-289
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1984年1月から1992年10月までに久留米大学口腟外科で扁平上皮癌と診断された1次症例中細胞診が施行されたStage I, II69例について検討し以下の結果を得た。
    1.Stage Iの正診率は76.1%, Stage IIは95.7%であった。
    2.部位別には舌, 病型別には白斑型の正診率が低かった。
    3.Class IIIと診断された場合, 悪性を強く疑う必要がある。
  • 加藤 幸弘, 安岡 忠, 佐木 宏吉, 森聡 次郎, 市原 秀記, 兵東 巌, 奥田 孝, 奥富 直, 立松 憲親, 岡 伸光
    1993 年 5 巻 3 号 p. 290-296
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    我々は異時性の三重複癌の1例について報告し, また放射線誘発癌についても考察を加える。
    患者は74歳男性で, 長期におよぶ左頬部の皮膚潰瘍を主訴に当科に来科した。皮膚潰瘍は当科初診の3年前から認め, 放射線性皮膚潰瘍の診断をうけていた。当科で施行した生検の病理組織学的診断は高分化型扁平上皮癌であったので治療を行った。患者の既往歴として, 当科初診の約31年前に左側舌縁部の高分化型扁平上皮癌に罹患し, Ra針による組織内照射 (総線量1212mg・hrs) を受けたが, 2回におよび局所再発をきたしたため舌部分切除術を2回と高線量の放射線治療 (X線外部照射で総線量120Gy) を受け根治されていた。さらに当科初診の1年前に原発性肝細胞癌に罹患し, 経皮的超音波ガイド下エタノール局注療法 (Percutaneous Ethanol Injection Therapy: PEIT) を受けていた。
    今回, 発症した左頬部皮膚癌に対してはシスプラチンと5-FUによる経静脈的術前化学療法の後, 腫瘍切除術・頸部郭清術・即時再建術を施行した。術後経過は良好で, 5か月の入院治療後退院した。現在, 患者は定期的に経過観察されているが再発の徴候は認めていない。
    舌癌と頬部皮膚癌との発生間隔は長期間で舌癌は完治していることから, 頬部皮膚癌は舌癌の局所再発や転移とは考え難く, 放射線照射野内に発生していたため放射線誘発癌と考えられた。
  • 坂下 英明, 宮田 勝, 宮本 日出, 車谷 宏
    1993 年 5 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    高分化型扁平上皮癌の1亜型である疣贅状癌は, 1948年にAckermanによって最初に報告された。日本においては, 1990年に浅海らが52例を報告している。
    われわれは, 頬粘膜, 舌, 下顎歯肉の3例の疣贅状癌を報告した。頬粘膜および舌の2例は切除し, 下顎歯肉の1例はレーザー切除と蒸散をおこなった。
    本腫瘍においては, 未分化転換がしばしば起こるため, 化学療法と放射線治療は一般的には行なわれない。われわれの3例では, 外科療法が選択され, 局所制御が得られた。
  • ―画像診断学的所見を中心として―
    三輪 邦弘, 田畑 修, 湯浅 賢治, 神田 重信, 樋口 勝規, 大石 正道
    1993 年 5 巻 3 号 p. 303-309
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    臨床的に嚢胞と診断された頸部皮下腫瘤性病変の一例を種々の画像診断法 (コンピュータ断層撮影法, 超音波診断法および唾液腺造影法) によって検討した。コンピュータ断層撮影法と唾液腺造影法では腫瘤と唾液腺およびその周辺組織の関係を知ることができた。超音波診断法では病変の内部構造を把握することができた。その結果, 病変は唾液腺外に存在する悪性腫瘍と診断した。病理組織診断は扁平上皮癌であった。
  • 原田 博紀, 鹿渡 靖子, 熊谷 茂宏, 中川 清昌, 山本 悦秀
    1993 年 5 巻 3 号 p. 310-314
    発行日: 1993/12/25
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    エナメル上皮腫は通常, 下顎骨の大臼歯部または小臼歯部, あるいは下顎枝部に発現し, 下顎前歯部に生じることは稀である。
    われわれは, 33歳男性の3根尖部に限局してみられたエナメル上皮腫の1例を経験したので報告する。患者は生活歯である3根尖部に原因不明のX線透過性病変があるのを近くの歯科で偶然発見され, 精査を目的に当院に紹介された。X線検査では, 3根尖部に辺縁が不規則で内部は蜂巣状を呈するX線透過性増強像を認めたため, 歯原性腫瘍を疑い摘出術を行った。病理組織学的には, 胞巣中心部の扁平上皮化生を特徴とする棘細胞腫型エナメル上皮腫 (WHO分類) であった。これらの所見から, 本腫瘍はMalassez上皮遺残より発生した初期のエナメル上皮腫であることが示唆された。現在, 術後7か月を経過したが再発等の異常所見は認めていない。
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