要旨:唾液腺腫瘍は,良性でも悪性でも,外科的切除が治療の第一選択となる。
2001年から2010年の10年間に181例の唾液腺腫瘍を経験した。このうち,63例は耳下腺に,23例は顎下腺に,5例は舌下腺に,また90例は小唾液腺に発生したものであった。
術前診断は外科的切除法を決める上で最も重要な因子で,FNACや生検とともにCT,MRI,US,PETなどの画像診断を行った。
良性腫瘍に対する治療は局所切除であり,耳下腺では顔面神経を温存して葉部分切除を,症例によってはECDを行った。顎下腺では顎下腺摘出を,小唾液腺では腫瘍にわずかな周囲組織をつけた切除を行った。その結果,現在まで腫瘍の再発を認めたものはない。一方,悪性腫瘍の治療は,その組織学的悪性度により選択した。すなわち,低悪性度癌ではわずかな安全域を設けて腫瘍切除を行い,頸部郭清術は行わなかった。中悪性度癌では扁平上皮癌と同等の安全域を設けて腫瘍切除を行い,併せて頸部郭清術を行った。また,高悪性度癌では拡大切除と頸部郭清術を行い,術後に放射線あるいは化学放射線療法を行った。悪性腫瘍66例の5年および10年疾患特異的生存率は92.4%および80.2%で,このうち低悪性度癌28例では100%および100%,中悪性度癌23例では100%および83.3%,高悪性度癌15例では72.9%および50.0%であった。
以上より,唾液腺腫瘍は今後も外科的切除が治療の第一選択になることに変わりはないが,手術法,範囲は腫瘍の組織型により選択すべきことから,術前の画像診断やFNACの診断精度の向上が期待される。また,高悪性度癌に対しては拡大手術とともにより強力な術後の化学療法や化学放射線療法の実施が望まれる。
抄録全体を表示