当科において病理組織学的に口腔小唾液腺腫瘍と診断された73例について臨床統計学的検討を行った。
良性腫瘍と悪性腫瘍の発生頻度はほぼ同等であり,性別や年齢に有意差は認めなかった。良性腫瘍では多形腺腫が大部分を占め,悪性腫瘍では粘表皮癌と腺様囊胞癌が多くを占めた。発生部位としては口蓋が最も多く,部位別の悪性腫瘍発生頻度は臼後部で最も高かった。
生検標本と手術標本の診断一致率は87.1%であり,不一致例の多くは粘表皮癌に対して扁平上皮癌の初期診断となっていた。口腔悪性腫瘍の診断において,小唾液腺悪性腫瘍の可能性に留意することの必要性が示唆された。
悪性腫瘍の初回治療法としてはStage I,II,IIIの全例で手術単独療法が行われている一方,Stage IVでは75.0%で術前,術後に補助療法が併用されていた。悪性腫瘍の5年,10年累積生存率は共に83.1%で,病期がStage IVの症例で予後が有意に低下していた。予後不良例には,局所再発巣や遠隔転移巣が非制御であった症例があった。今後,これらの口腔小唾液腺悪性腫瘍に対しては粒子線治療や分子標的薬を含めた新規治療法の検討が必要であると考えられた。
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