日本口腔腫瘍学会誌
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35 巻, 1 号
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原著
  • 鳴瀬 智史, 古川 浩平, 大森 景介, 三好 太郎, 大鶴 光信, 梅田 正博
    2023 年 35 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/22
    ジャーナル フリー
    レベルシステムに含まれない口腔癌頸部リンパ節転移では,介在リンパ節である舌リンパ節あるいは外側咽頭後リンパ節が挙げられるが,発症頻度が低く,対応に苦慮することが多い。今回われわれは当科における口腔癌レベル外頸部リンパ節転移の治療法と予後について後ろ向きに検討を行い,今後の治療方針について考察した。
    2008年6月から2021年12月までに当科で治療を行った口腔癌450例のうち,初回もしくは再発でレベル外頸部リンパ節のみられた17例を対象とし,転移リンパ節に対する治療,経過および予後について検討を行った。
    初回治療時では外側咽頭後リンパ節転移が2例認め,副咽頭・咽頭後郭清術および超選択動注化学療法がそれぞれ施行されていた。再発時では後外側舌リンパ節1例,舌骨傍リンパ節7例,外側咽頭後リンパ節7例認めた。外側舌リンパ節転移は顎下リンパ節転移を伴っており,手術療法で救済可能であった。その他の14例はいずれも切除不能例で化学放射線療法,セツキシマブ併用放射線療法,免疫チェックポイント阻害薬あるいはベストサポーティブケアの治療方針となっていた。1年全生存率は舌骨傍リンパ節で25.0%,外側咽頭後リンパ節で33.3%と予後不良であった。
    現在ではセツキシマブや免疫チェックポイント阻害薬が発達しており,生存期間を延長できる新たな治療方法として期待される。
症例報告
  • 鈴木 大貴, 大金 覚, 吉田 成緒, 平賀 智豊, 中島 純子, 橋本 和彦, 髙野 正行, 片倉 朗, 野村 武史
    2023 年 35 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/22
    ジャーナル フリー
    口腔癌の顎顔面領域への高度進展例に対する外科手術は,血管や神経が複雑に走行している部位へのアプローチが必要で,出血により手術操作が困難となる。また,広範囲な上顎腫瘍切除後に対する鼻口腔瘻の閉鎖および顎顔面補綴は,補綴装置の固定源を期待できないため非常に困難で,術後の気道管理や栄養経路の確保を含めた術前の治療計画が重要となる。今回われわれは,術前からの気道管理,胃瘻造設による栄養管理,動脈塞栓を併用した腫瘍切除および顎顔面補綴といった集学的治療により治療し得た,中顔面に高度進展した巨大な多形腺腫由来癌の1例を経験したので報告する。
    症例は56歳男性。他院口腔外科で口蓋腫瘍の診断を受けるも自己中断,腫瘍の進展を認め当院受診となった。生検の結果,多型腺腫由来癌の診断を得たのち,関連各科との協議を行い,根治術に先立って,胃瘻造設術,気管切開術,血管内塞栓術を計画した。術前に腫瘍出血を生じたが,事前の計画により,血管内塞栓術による止血が可能だった。上顎亜全摘については,塞栓術を併用したことで異常出血なく切除ができた。術後の咬合再建については,広範囲の顎欠損であったが,術前の治療計画を共有し,治療計画を進めた。結果,計画通りの経管栄養管理および即時栓塞子による早期の経口摂取再開が可能となった。術後2年が経過し,再発や転移なく,顎補綴装置も安定し使用出来ている。
  • 上野 祥夫, 今井 智章, 仁木 敦子, 網野 かよ子, 森田 展雄, 鵜澤 成一
    2023 年 35 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,口腔転移を生じた食道癌の症例報告と文献的考察を行った。症例は68歳男性,食道癌の診断にて他院で放射線治療を受け寛解,その後舌の違和感を主訴に当科受診された。舌には10mm大の腫瘍を認め,全身検索の結果,転移性舌悪性腫瘍と診断した。舌腫瘍の増大はQOL低下の原因となるため舌部分切除術を施行した。全身状態悪化にて死亡されるまで再発は認めなかった。本邦では,食道癌の口腔への転移は過去に16例の報告がある。本症例を含めた17例では,原発巣再発の発見から口腔転移までの期間は3.1±2.2か月(mean±SD),口腔転移後の生存期間は5.7±4.2か月(顎骨:6.8±4.9か月,口腔軟組織:5.4±3.9か月)であり,食道原発巣の再発群では4.0±2.1か月,非再発群では8.8±5.8か月であった。口腔転移部位は舌,歯肉と顎骨に多く認めた。治療方針としては,舌腫瘍の場合は外科的切除,歯肉や顎骨腫瘍の場合は化学療法や放射線療法が選択される傾向にあった。これらの治療方針は終末期のQOL向上や維持を考えて決定されていた。また,食道原発の制御が良好である非再発症例においても,転移巣制御が不良であれば,再発症例同様の短い生存期間となるため,根治的な治療が可能な症例であれば積極的に行うことが必要であると考えられた。
  • 福澤 智, 山縣 憲司, 寺田 和浩, 内田 文彦, 菅野 直美, 柳川 徹, 武川 寛樹
    2023 年 35 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/03/22
    ジャーナル フリー
    孤立性線維性腫瘍(Solitary fibrous tumor:SFT)は全身のあらゆる臓器に発生する未分化間葉系腫瘍として近年報告数が増加している。顎口腔領域では頰粘膜や舌などに好発するが口底に生じたSFTの報告は少ない。われわれは口底に生じたSFTの1例を経験したのでその概要について報告する。
    患者は40歳男性で2021年4月に口底部の腫脹を認め当科へ紹介受診された。臨床所見として口底部に表面性状は正常で,無痛性の20mm大の腫瘤を認めた。MRI所見ではT1強調像で低信号,T2強調像では高信号と低信号が混在していた。全身麻酔下に舌下腺摘出および腫瘍摘出術を施行した。
    病理組織は,腫瘍では豊富な膠原線維を認め,短紡錘形の腫瘍細胞像や牡鹿の角様の不整血管を多数認め,一部腫瘍と腺組織が混在していた。免疫組織化学的所見でCD34,STAT6が陽性でありSFTと診断した。術後1年4か月が経過したが原発に再発を認めず,全身への転移もなく経過良好である。
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