初回手術から24年後に多形性腺腫から悪性転化した腺様嚢胞癌のまれな1例を報告した。患者は60歳, 男性, 上顎右側歯肉腫瘍の加療を目的とし当科に紹介された。患者は右側涙腺腫瘍にて過去に2回手術を受けていた。初回手術では, Krnlein法にて腫瘍摘出術が行われ, その手術材料の病理組織診断は多形性腺腫であった。24年後, 右眼球突出を訴えて眼科を受診した際のCT・MRIにて, 腫瘍は右側眼窩上外側部を占拠し, また, 頭蓋内にも進展発育していたことが明らかとなった。この第2回目の手術により摘出された手術標本は腺様嚢胞癌と病理組織学的に診断された。約10か月後には腫瘍は上顎洞, さらには口腔内にも進展した。この著しく進展発育した腫瘍に対して放射線療法, および超選択的動注化学療法が施行され, 一時的には腫瘍は著しい縮小を示したが, 再び徐々に増大, 死の転帰をとった。
多形性腺腫は, 特に不完全なたび重なる摘出術後に悪性化をおこすことがまれにあるとされており, ここにそのまれな症例を報告した。
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