1975年から1997年までの間に北海道大学歯学部附属病院口腔外科で根治的手術を行った下顎歯肉扁平上皮癌は95例あり, 47例に辺縁切除を, 48例に区域切除を行った。95例中原発巣再発を認めた20例 (21.1%) について臨床的に検討した。
再発は初診時X線所見による下顎骨吸収形態が虫喰い状を呈する症例に多かった。再発部位が顎骨断端と考えられた症例が3例, 軟組織と考えられた症例が14例あり, 皮膚が4例, 口峡咽頭部が3例, 口底が6例, 顎下部が1例であった。他の3例は再発部位が判定不能であった。軟組織での再発部位は, X線所見で虫喰い状骨吸収を呈する症例では皮膚, 口峡咽頭部に多く再発していた。
再発までの期間は1か月から68か月, 平均14.9か月であったが, 初診時X線所見で平滑状骨吸収を呈する症例では, 長期経過後に再発がみられた。
二次治療として13例に救済手術を行い7例のみが局所制御可能であった。14例が原病死し, うち11例はX線所見で虫喰い状骨吸収を呈する症例であり, 虫喰い状の吸収形態を呈する症例の転帰は不良であった。
X線所見で虫喰い状かつ下顎管を超える骨吸収を呈する症例においては, 深部軟組織における安全域をより広く設定する必要があると思われた。
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