日本口腔腫瘍学会誌
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12 巻, 2 号
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  • ―造影CTと病理組織像の対比による検討―
    衛藤 洋平, 木村 卓爾, 佐々木 朗, 岸本 晃治, 松村 智弘, 岸 幹二
    2000 年 12 巻 2 号 p. 31-38
    発行日: 2000/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    頸部郭清術を施行した口腔扁平上皮癌88症例の頸部リンパ節について, 病理組織所見と造影CT所見を比較し, 次の結果を得た。
    検索したリンパ節1634個中, 病理組織学的に92個のリンパ節転移が認められた。
    Rim enhanceされたリンパ節中央部のlow density部は壊死または角化した転移巣と考えられ, 転移リンパ節では腫瘍実質よりも残存したリンパ組織が強くenhanceされる傾向にあった。このように, 転移リンパ節に観察されるenhancementは, 腫瘍原発部位にみられるものとは異なる様式であると考えられた。また, リンパ節内転移の状態によっては, 転移リンパ節でもenhancementを欠く場合があった。さらに, 正常なリンパ節形態や反応性腫大, 他病変の存在によって, 転移リンパ節に類似したCT所見を呈した場合があった。
    今回検討した5mm幅のCTのみでの画像診断には限界があり, 診断精度の向上には角化, 壊死といった転移巣の特徴を把握することが必要と思われた。
  • 小野 貢伸, 鄭 漢忠, 高野 昌士, 林 信, 足利 雄一, 戸塚 靖則, 北田 秀昭, 野谷 健一, 福田 博
    2000 年 12 巻 2 号 p. 39-46
    発行日: 2000/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1975年から1997年までの間に北海道大学歯学部附属病院口腔外科で根治的手術を行った下顎歯肉扁平上皮癌は95例あり, 47例に辺縁切除を, 48例に区域切除を行った。95例中原発巣再発を認めた20例 (21.1%) について臨床的に検討した。
    再発は初診時X線所見による下顎骨吸収形態が虫喰い状を呈する症例に多かった。再発部位が顎骨断端と考えられた症例が3例, 軟組織と考えられた症例が14例あり, 皮膚が4例, 口峡咽頭部が3例, 口底が6例, 顎下部が1例であった。他の3例は再発部位が判定不能であった。軟組織での再発部位は, X線所見で虫喰い状骨吸収を呈する症例では皮膚, 口峡咽頭部に多く再発していた。
    再発までの期間は1か月から68か月, 平均14.9か月であったが, 初診時X線所見で平滑状骨吸収を呈する症例では, 長期経過後に再発がみられた。
    二次治療として13例に救済手術を行い7例のみが局所制御可能であった。14例が原病死し, うち11例はX線所見で虫喰い状骨吸収を呈する症例であり, 虫喰い状の吸収形態を呈する症例の転帰は不良であった。
    X線所見で虫喰い状かつ下顎管を超える骨吸収を呈する症例においては, 深部軟組織における安全域をより広く設定する必要があると思われた。
  • 和田 重人, 岳 麗華, 川上 由美, 高橋 勝雄, 竹口 英人, 高桜 武史, 小杉 弘美, 岩井 正行, 古田 勲
    2000 年 12 巻 2 号 p. 47-53
    発行日: 2000/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    1980年4月から1997年3月までの17年間に, 富山医科薬科大学医学部歯科口腔外科において診断された109例の歯原性腫瘍について, 1992年のWHO分類に基づき臨床的検討を行い以下の結果を得た。
    1.組織型別症例数では, 集合性歯牙腫51例 (46.8%) , 次いでエナメル上皮腫35例 (32.1%) , 複雑性歯牙腫17例 (15.6%) であり, 残りの6例 (5.4%) は4例が良性腫瘍, 2例が悪性腫瘍であった。
    2.性別頻度では男女比1: 0.9であった。初診時年齢は6歳から71歳に分布しており, 平均年齢は26.7歳であった。症例全体の約70%が30歳以下であった。
    3.主訴のほとんどが腫脹 (35.8%) あるいは歯の萠出異常 (25.7%) であった。エナメル上皮腫では, 約70%が腫脹であった。
    4.発生部位では, 43例 (39.4%) が上顎, 66例 (60.6%) が下顎であった。エナメル上皮腫の下顎臼歯部, 集合性歯牙腫の上顎前歯部, 複雑性歯牙腫の下顎臼歯部における好発傾向が認められた。
  • 柳本 惣市, 川崎 五郎, 陶山 一隆, 水野 明夫, 藤田 修一, 高橋 弘
    2000 年 12 巻 2 号 p. 54-58
    発行日: 2000/06/15
    公開日: 2010/05/31
    ジャーナル フリー
    ヒトT細胞白血病ウイルスI型 (HTLV-I) に関与するT細胞リンパ腫は成人性T細胞白血病/リンパ腫 (ATL/L) と呼ばれている。このたび成人性T細胞白血病 (ATL) 治療後に下顎骨に腫瘤体病変を形成したATL/Lの一例を経験したので, その概要を報告した。
    患者は69歳男性で, 左側下顎部の腫脹を主訴として当科を受診した。当科初診の22か月前, 成人性T細胞白血病にて化学療法を受けた既往があった。初診時口腔内所見として, 左側下顎小臼歯部に大きさ35×30×15mmの弾性硬の腫瘤を認めた。血液血清検査において, 抗HTLV-I抗体陽性であった。胸腹部CT検査の結果, 他の部位に病変はみられなかった。生検術の結果, 病理組織学的にびまん性多形細胞型T細胞リンパ腫と診断した。放射線療法および化学療法を行ったが, 治療開始から約5か月後に死亡した。
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