日本口腔腫瘍学会誌
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30 巻, 1 号
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臨床統計
  • 柚鳥 宏和, 梅田 正博, 岩谷 博篤, 松尾 健司, 松本 耕祐, 石田 優, 橘 進彰, 古森 孝英
    2018 年 30 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/22
    ジャーナル フリー
    超高齢社会の到来とともに高齢口腔癌患者の治療を行う機会も増えてきた。今回,当科における80歳以上の高齢者の口腔癌患者の治療法について検討した。2013年7月〜2016年6月に当科を受診した80歳以上の口腔癌患者は24例で,後ろ向きに治療内容,手術および術前,術後のQOLなどを評価した。治療法は根治治療が17例,姑息的治療が1例,BSCが6例であった。根治切除例は,局所切除のみが11例,局所切除と頸部郭清を含めた手術を6例に施行した。そのうち皮弁再建症例は3例であった。手術例17例では術前後のQOLにほとんど変化はなかった。高齢口腔癌患者の手術適応基準を考えるうえで高齢者機能評価であるG8があり,今回の検討では,根治切除症例群の平均点は12.3点で,非根治治療群は6.4点であった。皮弁再建症例は14.3点であった。
症例報告
  • 白水 敬昌, 寺沢 史誉, 後藤 大輝, 服部 晴吉, 足立 潤哉, 嘉悦 淳男
    2018 年 30 巻 1 号 p. 7-13
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/22
    ジャーナル フリー
    外側咽頭後リンパ節(ルビエールリンパ節:RLN)は咽頭癌でしばしば転移がみられるが,口腔癌,特に舌癌では極めて稀とされている。セツキシマブ併用放射線療法(bioradiotherapy:BRT)が有用であった舌癌のRLN転移症例を報告する。
    患者は36歳の女性,頭痛,鼻閉,嚥下困難感があり当病院を受診した。某病院で舌癌のために放射線治療と手術を受けたが,ルビエールリンパ節転移のため化学療法と緩和療法を依頼された。
    TPF療法(CDDP+5-FU+DTX)を行ったが癌は進行した。局所進行頭頸部扁平上皮癌において,BRTは放射線単独療法と比較して生存に寄与することが示された。そのためBRTを行ったところ完全奏効(complete response:CR)となった。治療後4年以上再発を認めていない。
  • 今井 智章, 墨 哲郎, 岩井 聡一, 太田 嘉幸, 飯井 孝年, 中澤 光博
    2018 年 30 巻 1 号 p. 15-22
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/22
    ジャーナル フリー
    壊疽性膿皮症(PG)は原因不明のまれな,急速進行性の潰瘍性皮膚疾患である。PGの初期症状は,術後創部感染と似ているため,診断が困難である。今回われわれは,口腔癌術後に生じたPG症例を経験したので報告する。
    患者は72歳女性で,下顎歯肉癌に対して胸三角筋部皮弁(D-P皮弁)による再建を伴う根治手術を行った。術後6日目に発熱,下痢とD-P皮弁挿入部周囲の顎下部皮膚の発赤,び慢性腫脹,接触痛ならびに皮弁挿入部からの排膿を認めた。この時点で,術後創部感染と診断した。抗菌薬の変更,デブリードメントとドレナージにもかかわらず,術後13日目には病変は患側頸部全般に拡がり,周囲に紅斑と青紫色の穿掘性境界を伴う有痛性の壊死性潰瘍が認められた。皮膚科に対診し,PGが強く疑われた。術後15日目よりプレドニゾロンとミノサイクリンの投与を開始し,数日で顕著な改善が得られた。皮膚生検では,好中球を主体とする著明な炎症性細胞浸潤が認められたが,細菌の存在は明らかではなかった。以上の臨床的および組織学的所見はPGの診断基準を満たすものであった。
    口腔顎顔面外科の手術においても,PGは術後合併症として念頭におくべき疾患である。
  • 伊原木 聰一郎, 吉岡 德枝, 奥井 達雄, 國定 勇希, 志茂 剛, 光藤 健司, 藤内 祝, 佐々木 朗
    2018 年 30 巻 1 号 p. 23-27
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/03/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,舌癌に対して逆行性超選択的動注化学放射線療法を施行中に腫瘍栄養動脈が閉塞したため,腫瘍栄養動脈の吻合枝から急速動注療法を施行した舌癌の1例を経験したので報告する。
    症例:43歳女性。2012年7月に当科を受診し,左側舌癌・両側頸部リンパ節転移(T4aN2cM0,扁平上皮癌)と診断した。原発巣は逆行性超選択的動注化学放射線療法を行い,頸部リンパ節転移に対しては照射後に頸部郭清術を施行する予定とした。2012年8月に患側は浅側頭動脈から舌動脈と顔面動脈の共通幹に,健側は浅側頭動脈から舌動脈に,それぞれカテーテルを留置した。定期的にインジゴカルミン染色でカテーテル脱落の有無を検査していたが,46Gy照射後から,患側の舌動脈と顔面動脈の共通幹の支配領域が染色されなくなった。Seldinger法で患側の外頸動脈にカテーテルを留置し外頸動脈分枝を造影すると,舌動脈と顔面動脈は造影されず,顎動脈分枝の頰動脈および下歯槽動脈から顔面動脈への吻合枝が描出された。下歯槽動脈をコイルで塞栓し頰動脈からシスプラチンを急速動注した。2012年10月に70Gy照射を終了した。2012年11月に両側頸部郭清術を行った。治療終了から現在までに約5年経過しているが再発および転移なく経過良好である。
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