日本口腔腫瘍学会誌
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22 巻, 2 号
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原著
  • 鈴木 美保, 道 泰之, 愛甲 勝哉, 黒原 一人, 山根 正之, 鵜澤 成一, 山城 正司, 石井 純一, 岡田 憲彦, 天笠 光雄
    2010 年 22 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
    1965年から2002年の間に,東京医科歯科大学歯学部附属病院顎顔面外科にて腺様嚢胞癌と病理組織学的に診断された一次症例56例について検討を加えた。部位別では口蓋,口底が多かった。治療法は放射線併用外科療法26例,外科療法単独20例,放射線療法単独6例で,残る4例は生検のみであった。全症例の5年・10年生存率はそれぞれ62.6%と33.4%であった。stage I・IIの5年・10年生存率は72.9%と48.6%であり,stage III・IVの5年・10年生存率は51.0%と15.9%であり,両群間に有意差を認めた。Stage分類は予後因子として有用であると考えられた。原発巣再発は51.1%に,遠隔転移は65.9%にみられ,原発巣再発のみられた症例では遠隔転移が有意差をもって多くみられた。頭頸部腺様嚢胞癌の治療においては原発巣制御が重要であろうと考えられた。
  • 小村 健, 原田 浩之, 島本 裕彰
    2010 年 22 巻 2 号 p. 61-68
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
    現在,下顎再建には金属プレート,遊離骨,有茎の骨筋皮弁,血管柄付き骨皮弁が用いられている。こうした中,血管柄付き骨皮弁は成功率が高いこと,骨量に制限がないこと,理想的な形態付与が可能である等,多くの利点を有している。
    1995年3月から2006年4月の間に遊離血管柄付き骨により下顎再建を施行した57例,59再建について検討した。下顎骨切除に至った原疾患は悪性腫瘍44例,良性腫瘍10例,放射線性下顎骨壊死3例で,Boyd分類による下顎骨欠損はL型が74.6%,軟組織欠損はm型が81.4%と多くを占めた。
    59再建中,58再建は即時再建であり,1再建のみが二次再建であった。骨皮弁は欠損部の形状と患者の要望とから選択し,16腓骨皮弁,43肩甲骨皮弁を用いた。下顎骨形態付与のために14骨弁に1部位の骨切り,3骨弁に2部位の骨切りを加えた。16腓骨皮弁再建例では,13骨皮弁は生着したが,2皮弁は部分壊死,1皮弁は全壊死を来した。一方,43肩甲骨皮弁再建例では,41骨皮弁が生着し,2骨皮弁が部分壊死を来した。術後の平均開口量は4.1cm,インプラント・義歯装着率は31.6%,常食摂取率は68.4%,顔貌満足率は85.4%であった。
    以上の結果から,下顎再建には血管柄付き骨が第一選択になるものと判断された。
症例
  • 柴崎 麻衣子, 光藤 健司, 岩井 俊憲, 玉井 直人, 大原 良仁, 光永 幸代, 渡貫 圭, 廣田 誠, 藤内 祝
    2010 年 22 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
    口腔癌の頸部リンパ節転移の制御は予後因子として非常に重要である。筋肉,骨,粘膜,皮膚のような周囲組織への浸潤が認められた場合には,頸部再発を避けるために拡大頸部郭清術が必要とされる。われわれはTS-1による化学療法と温熱放射線療法が著効した舌骨に近接した後発頸部リンパ節転移の1例について報告する。
    40歳代の女性が右側舌の潰瘍を主訴に当科を受診した。患者は右側舌部分切除を受けたが,術後6か月目に舌骨に近接した同側の頸部リンパ節に転移を認めた。咽頭粘膜や舌骨の切除を含めた拡大手術を避けるために,われわれは術前治療としてTS-1による化学療法(100mg/日,計2800mg)と温熱放射線療法(2Gy/日,計40Gy,RF誘電加温:計4回)を施行した。CTによる治療効果判定はCRであった。患者は拡大頸部郭清術を回避し保存的頸部郭清術を受け,転移リンパ節は病理組織学的にCRが得られた。術後1年1か月経過した現在,頸部再発を認めていない。
  • 金塚 文子, 豊島 貴彦, 鈴木 麻衣子, 河本 清司, 新谷 悟
    2010 年 22 巻 2 号 p. 75-80
    発行日: 2010/06/15
    公開日: 2011/10/20
    ジャーナル フリー
    骨形成線維腫はセメント質あるいは骨様の硬組織形成を伴う線維性結合組織の腫瘍性増殖物であり,画像所見においては境界明瞭な透過像の中に大小様々な不透過物が散在する。
    今回,われわれは40歳代女性の左側下顎骨骨体部に発症した骨形成線維腫に対し,顎骨の温存を目的に腫瘍分割による摘出術を施行し,良好な結果を得たので報告する。
    症例は左側下顎骨骨形成線維腫に対して,他病院にて下顎骨区域切除と腸骨移植による即時再建手術を提示され,審美障害の少ない治療方法を希望して当科を紹介来院した。CT撮影データより,三次元模型を作製して手術シミュレーションを行い,その結果から下顎骨の保存が可能であることを判断し,口腔外より腫瘍を分割して摘出を行った。術後,病的骨折や再発もなく,経過良好である。また,低侵襲の治療を行うことで術前から懸念された審美障害や知覚鈍麻を回避することができた。
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